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秋の交流会(2)



「フィエラシーラ姫」

「は!? へ!? は!? コキア!?」

「できましたよ」

「あ、ありがとう。早かったですね」

「いえ、もう一時間過ぎております」

「え?」

 

 懐中時計を見せられると、あれぇ……? 本当だ、一時間経ってる……?

 

『もうええか?』

「あ」

『はあーーー、疲れた~~~』

「あーーー……」

 

 フラーシュ様ァ……! 行かないでください~! もっともふもふさせてください~!

 くうう、一時間が一瞬過ぎる!

 

「それは?」

「え? あっ……!?」

 

 ニグム様がコキアの持ってきたペンダントを覗き込む。

 あれ? 待ってください? 私、フラーシュ様をもふもふしている間……隣にずっとニグム様がいたということ、だよね?

 あの痴態をずっと真横で見られていた、ということ……ですよね!?

 

「ニグム様、あの、さっきの私……」

「ああ、可愛かった」

「見なかったことにしてくださいませ~~~~!」

「いや、幸せそうで可愛かった。いつか俺でもあんな幸せそうな顔をしてもらおうと、気合が入った」

「そっっっ……!?」

 

 そういうのはズルいと思います。

 ぐうううう、いつもと髪型が違うだけなのに、かっこよくてしんどい!

 

「それで、そのペンダントは?」

「あ、は、はい。新しく作った祝石(ルーナ)です。体に薄い膜のような結界を張って、花粉を寄せつけないようにできないかと……」

『どれどれ~?』

 

 フラーシュ様がニグム様の肩から顔を覗かせて、ペンダントに加工した祝石(ルーナ)を覗き込む。

 ふむふむ、と見つめると顔を私の方に向ける。

 つぶらな瞳可愛い。

 

「いかがですか?」

『おう、ちゃんと付与効果成功しているぜ! ただ、ランク3だと今日一日しかもたなさそうだな』

「一日だけですか!?」

 

 いくら消耗品とはいえ、たった一日しかもたないなんて……。

 じゃあ、噴水に同じ効果付与した水の幻魔石を沈めまくるしかない、のね。

 幻魔石の大きさはランクによって違うけれど、同じランク3でも微妙に大きさが違う。

 コキアペンダント加工も毎朝してもらうのも申し訳ないし、毎日沈めていた祝石(ルーナ)を使うっていうのは現実的ではないわね。

 

『もしも毎日使いたいんなら、ランク5かランク6ぐらいの幻魔石が必要やな』

「そんな高ランクの幻魔石が……!? ううう、どういたしましょう……。さすがにそのランクの幻魔石を手に入れる伝手がないです。どうしましょう……」

「こちらでも探してみよう」

「ありがとうございます、ニグム様」

 

 手の甲に手を重ねられる。

 顔が熱くなる。

 実際にランク4の幻魔石をいただいたので、ちょっと期待してしまう。

 いや、もちろん自分の方でも探すけれど。

 

「お二人とも、そろそろ会場の方に向かわれてはいかがでしょうか?」

「ああ、そうだな。では行こうか。その――婚約の件は、いいな?」

「は、はい。もちろんです」

 

 

 

 会場はサービール王国王立学園の中庭。

 昼間はお茶会形式。

 ニグム様にエスコートを受けながら、会場に入る。

 私とニグム様が入ると、会場の空気が少しだけ緊張した。

 

「フィエラシーラ!」

「ユーフィア」

 

 誰よりも先に話しかけてきたのはユーフィア。

 ニグム様の腕に手を回していたけれど、それを外して両手を握り合う。

 

「婚約が正式に決まったのですわね。おめでとうございます!」

「ありがとうございます、ユーフィア」

 

 切り込み隊長かな?

 ユーフィアがそう言って祝福してくれたので、周囲にも知られてしまった。

 正式に婚約したので聞かれたら答えるつもりだったけれど。

 

「フィエラ」

「は、はい?」

 

 手を引かれる。

 なんだろうと思っていると、中庭の真ん中に連れていかれた。

 交流会のお茶会に集まった人々からの視線が痛いのだけれど!?

 

「あの、ニグム様!?」

花真(かしん)王国の第一王女、フィエラシーラ・花真(かしん)姫。どうか卒業後もフラーシュ王国に来て我が妻として、王妃の椅子に座ってほしい」

 

 きゃーーー!!

 女性陣の甲高い悲鳴。

 こ、こ、こ、公開プロポーズ……!?

 目の前に跪き、両手を握られて見上げられ、そんなことを言われる。

 あわわわ、と突然のプロポーズに混乱していたけれど、ぎゅっと目を瞑ってから、はあ、と息を吐く。

 

「――はい。よろしくお願いいたします」

 

 私が意を決して答えるとさらに大きな声が中庭にあがった。

 立ち上がったニグム様の嬉しそうな笑顔が可愛いと思ってしまう。

 そのまま腰に腕を回し、空いている席にエスコートしてもらった。

 私の後ろからユーフィアがついてきて、同じ席に座る。

 

「あ、あの、聞いていませんが」

「わかりやすいだろう? それよりも、中央部の言語は間違いなかったか?」

「あ……」

 

 ニグム様が言っていた言葉を思い返すと、ニグム様が公開プロポーズで話していた言語は中央部の言語だった。

 

「はい、完璧でした」

「これからもっと君の国の言葉で伝えていく」

「は、はわ……」


 はい、と顔が熱いまま俯いて答える。

 ジトっと私たちを見つめるユーフィアの冷たい眼差し。


「冬季休みもフラーシュ王国に行くのですか?」

「いや、今国内はかなり荒れている。フィエラが来るのは少し危ないと思う」

『せやな』

「そうなのですね。では、冬季休みはサービール王国の自宅で研究しております」

「ああ。……俺は国に戻って色々始末をしてくる」

「あ、ま、まあ、あの……ほどほどに……」



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