ウワサは常々コーラス
[ねぇ、知ってる?あの人○○らしいよ]
[あいつってそんなやつなんだな]
[あの家の○○って人昔○○だったんだって]
[えっ…やばいじゃんそれ近づかないようにしなきゃ]
_______
この世は〔ウワサ〕で溢れている。
それは自分のことかもしれないし、自分のことじゃないのかもしれない
…少なくとも私には全てが自分のことにしか聞こえない
私の名前は 星乃夏南
高校二年生だ
世間では私のような人のことを〔統合失調症〕というらしい
医者が言うには幻聴が聞こえてるということらしいのだが、私はそうとは思えない。
外へ出ればすれ違う人が私の容姿を批判し嘲笑う
学校へ行けば多くの人が私の悪口を言いながら笑いあっている
SNSで何かを投稿すれば批判され…いや違う、そもそも私のSNSなど誰も見てはくれないのだ
私には居場所がない。
外でも、学校でも、SNSさえも私は批判されている。
批判されるたびに私という人格が崩れ去っていく気がした。
それでも学校へ行かなければならないので私は今日も学校へと足を進める
[夏南~おっはよ~]
そんな私にも親友と呼べる存在ができた
それがこの子 草部冬華
この子だけは周りの人とどこか違う気がしていた。
........いや、そう思いたかっただけなのかもしれない。
自分が自分であるために、誰かに必要とされたかったのかもしれない
それでも私はこの子のことが大好きだし、ずっと友達でいたいとそうおもっていた
だからこそこんな現場見たくなかった
こんな…親友がいじめられている現場なんて…
私は怖くなりその場から動けないでいた。
それがよくなかったのだろう親友と、冬華と目が合ってしまった
彼女は何も言わずただひたすらにこちらを見ているだけだった
ただその眼差しはどこか深く、冷たいものだった
私は怖かった。ただでさえ常日頃から批判されていた私が何かできるのだろうか…いや、そもそも私は何ができる?私には何もできない。常日頃からそういわれていたではないか
そうだ、大人を呼んでこよう。そのほうがいいだろう。そう思った…はずだった
なぜか私の体はその現場へと向かっていて、気づいた時には冬華をいじめていた相手は宙を舞っていた。その時私のこぶしには確かな痛みと今までに経験したことのないような奇妙な感触があった
[いっっっっったぁ⁉]
[はっ?あんた何してんの⁉]
相手のその反応は現状を確かめるには十分すぎるほどだった。
その時近くに先生が通りがかった。
[こら!お前たち!何をしてるんだ!]
先生は状況を理解しようと私たちに問いかけた
すると相手の一人がニヤリと笑った
[せ、先生!聞いてください!私たち仲よく遊んでただけなのに急に夏南ちゃんが殴り掛かってきたんです!]
その言葉に私も、冬華も、先生も驚いていた
[夏南!お前!何をしているんだ!]
[先生!違うんです!夏南は!]
[お前が夏南と仲がいいのはわかるが嘘はよくないぞ冬華!]
冬華は直ぐにかばってくれた。しかし先生は私たちの味方にはなってはくれなかった
当たり前だ。彼女はクラス委員だし信頼もある。何よりも彼女のほほには確かに私が殴ったときについたであろう痕がくっきりと残っている。
[いいよ、冬華。ありがとね]
私はそういうと先生のほうに向かうと口を開いた
[先生、すいません。少し言い合いになってしまいました]
[そうか、とりあえず話聞くから職員室来てくれるか]
[わかりました]
_______
そして私は退学となった。
周りの人にうわさは直ぐに広まり、どこにいてもうわさの対象となった。
親にも怒られ、呆れられた。
ウワサは常に聞こえてくる、様々な声、様々な内容で。
共通しているのは対象は私だということだ。
しかし、後悔はしていない。大切な親友をこの手で守れたのだから。
私自身の意思で。
そしてこの日から”幻聴”は聞こえなくなった
私の後ろでは今日もウワサが流れてる