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Faster than light  作者: オロチ丸
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艦隊出現

pixivにも同タイトルで投稿しています。内容は変わりありません。

https://www.pixiv.net/novel/series/9872020

1.

エラン「お父さん! もっと地球のこと教えて!」

父「えー、もっとかー? そうだなぁ...エラン。地球の海は、青いって知っていたか?」

エラン「えっ!? だってマーシャルの海は緑だよ!? すごい! 見てみたい! お父さん、連れて行ってよ!」

父「えっ、地球に? それは無理だなぁ......」

エラン「なんでなんで!?」

父「地球は、マーシャルからじゃ遠すぎるんだ。」


人類がシリウス星系に移住してから3世代が経とうとしていた。地球から8光年の距離にあるこの星系で、人類は独自の超光速航法技術、ワープを開発した。しかし、地球との再接続は未だ成し遂げられていなかった。


2.  

航路調査日誌 2228.05.26.07.17 観測員554865記入

現在地:シャンブロ星系外縁部 ポイント569-513

星系間天体:なし、異常星間物質:なし、異常放射線:なし、異常重力:なし

空間航路評価:良


エラン「せ〜んろは続く〜よ〜、ど〜こまでも〜、っと。」


宇宙航路局航路開発部に所属する22歳の青年、エラン・ジャラスはコクピットで鼻歌を奏でていた。大学を出たエランはそのまま宇宙航路局に就職した。在学中に小型宇宙船免許を取得していた彼は、入局と同時に航路開発部に配属された。この部署は一人乗りの宇宙探査機を用いた調査任務に従事していた。そのため、エランはすぐにこの部署で即戦力になった。


ワープ技術の開発は、人類の活動域をシリウス星系外へと広げる一歩となった。ワープが開発された後、シリウス星系の人類達は従来の亜光速速度では難しかった地球との恒常的な往来を模索した。しかしワープには大きな問題を抱えていた。それは進路上に障害物があってはならないということだ。そのため彼らは宇宙航路局を設立し、地球への安全な航路の発見を目指した。


しかし年月が経つにつれて、連邦政府の政策は変化してしまった。彼らは領域拡大のためにワープ技術を使い、新たに3つの星系に7つの植民地を築いたことで着実に国力を上げていった。自然と宇宙航路局に与えられる任務も、地球への航路開拓ではなく近隣星系への航路拡大が主なものになっていた。エランが今従事している任務も地球への航路開拓ではなく、最も新しい植民星系であるシャンブロ星系から隣接する未探査の星系への航路を調査することだった。


エラン「俺、こんな仕事に就くために頑張ったわけじゃないんだけどなぁ。」


エランは一人乗り小型宇宙船「ボイジャー」の中でぼそっとつぶやいた。ボイジャーは特定の宇宙船の名前ではなくメーカーが名付けた製品名だが、宇宙航路局でもこの名前で呼んでいた。ボイジャーは強力な二基の亜光速エンジンとワープドライブを備え、長距離の航海に対応していた。そのほかにもモジュール化によってさまざまな科学装備や探査機器を搭載可能だった点や、堅牢な設計による生存性の高さが単独での宇宙探査に適しているとして、連邦による宇宙探索に用いられている。


エラン「そろそろ定時連絡の時間か......こちら観測員554865号、シャンブロコントロール、聞こえるか」

管制官「こちらシャンブロコントロール、ボイジャー、よく聞こえている。」

エラン「航路調査任務の定時連絡だ。今からそちらに観測日誌を送信する。」

管制官「了解した......よし、今受信した。データの破損もなさそうだ。観測員、ほかに報告はあるか?」

エラン「何もない、なさすぎて退屈しているくらいd」


ザーザーザー

突如として管制官との交信が途切れた。


エラン「なんだ、一体何が起きた......?」


3. 遭遇

連邦首都惑星・マーシャルの統合幕僚本部。


マクガイア大将「一体なにが起こっているのだ......報告は!?」

レノックス大佐「はっ、現在ウォルフ星系、シャンブロ星系、プロキオン星系との一切の通信が途絶えております。」

マクガイア「イオン嵐の影響ではないのか?」

レノックス「通信途絶直前の空間監視衛星のデータによりますと、イオン嵐などの宇宙現象の兆候は認められません。またシリウス星系でもイオン嵐は起きていませんし、3星系で同時にそのような自然現象が起こるとは考えにくいかと。」

マクガイア「ううむ......」


幕僚本部は混乱に包まれていた。連邦が支配する3つの星系の軍司令部から、定時通信が来なくなったのだ。こちらからの呼びかけにも応答がない。

テロや反乱、もしくは外部勢力からの攻撃の可能性に備えて幕僚本部には非常態勢が敷かれたが、彼らは手をこまねいていた。何せ一切の情報がないのだ。


シリウス連邦には2つの軍隊がある。地上軍と宇宙軍だ。この二つはまとめて連邦軍と呼ばれている。地上軍は各惑星の治安維持と反乱抑止を担当する組織だ。しかし平時の指揮権は各惑星政府にあるので、連邦中央政府の影響力はさほど受けていない。一方で宇宙軍は大統領直属の組織であり、普段は宇宙海賊などの犯罪行為に対処している。だが直近の50年で宇宙海賊は減少傾向にあり、艦隊の規模も縮小の規模を辿っていた。その結果、今の状況に対して、3星系にそれぞれ十分な戦力を送ることは難しくなってしまった。


マクガイア「せめて何が起きているのかが分かれば......」

通信手「将軍!シャンブロ星系外縁部に、公用宇宙船のトランスポンダー反応があります!」

マクガイア「なんだと!? 今すぐその宇宙船と繋げ!」

通信手「こちらは連邦軍幕僚本部! シャンブロ星系外縁部に停泊中の公用船、聞こえますか!?」


エラン「こ、こちらは宇宙航路局所属、観測員のエラン・ジャラスです。い、一体なんの御用ですか?」

通信手「現在、こちらとシャンブロ星系司令部の連絡が途絶しています。そちらでイオン嵐など、通信の障害になる現象は観測されていますか?」

エラン「いえ、こちらではそういったものは観測していません。でもついさっき、シャンブロ管制との通信が突然途切れました。」

マクガイア「替われ! ......観測員、私は幕僚本部のマクガイア大将だ。命令だ、今すぐシャンブロ星系の植民惑星ディアナに向かい、現地の状況を報告しろ。」


エラン「えっ!? 自分がですか!? でも自分はただの航路局局員でして......」

マクガイア「すでに大統領から国家非常事態が発令されている。非常事態には軍が公務員を動員できることは知っているな?」

エラン「そ、そんなこと言われても」

マクガイア「観測員、もう一度命令する。惑星ディアナに向かい状況を報告しろ。命令は以上だ。」

エラン「了解、しました......」

マクガイア「よろしい。通信手、この観測員との通信は常に繋いでおけ。」

通信手「はっ。」


4.  

エラン「くそっ! なんだって俺がこんな目に!」


エランは文句を言いながらも、シャンブロ星系首都惑星・惑星ディアナに針路を向ける。嫌だといいながらも、宇宙航路局員は公務員である以上、先ほどの軍からの指示には従うしかない。おまけにエランは好奇心旺盛なタチであるから、惑星ディアナで何があったか少しずつ興味も湧いていた。

シリウス連邦は現在までに3つの星系に植民を成功させているが、それぞれの星系はそれぞれ高度な自治権を有している。そのうえで一つの国家としてまとまっているため、連邦制を採用している。規定通りであればシャンブロ地方政府管轄の防衛部隊が問題に対処しているはず、そんなことを考えながら、エランは超光速の世界に飛び込んだ。


キャノピーの周りに瞬いていた星々が後方に引き伸ばされてゆき、点から線になっていく。ワープ航法を使用するとき、宇宙船はその大小にかかわらずワープシールドという卵型の膜を纏う。このワープシールドの効果によって宇宙船は従来の物理学的制約から解き放たれる。またこのシールドは宇宙空間に存在する微細な粒子などから超光速移動中の船体を保護する役割を果たしている。

機器を注視しながら惑星ディアナに接近していたところ、急にレーダーが多数の物体を検出した。


エラン「なんだ、これ?」


エランがつぶやくのと同時に、ボイジャーは通常速度に戻った。そこにいたのは、今までに見たことがないほど巨大な宇宙船群だった。数は優に500を超えている。


エラン「な、なんだ!? エイリアンの侵略か!?」

マクガイア「観測員、報告しろ!」

エラン「えっと、戦艦です! 巨大な戦艦が、惑星ディアナを囲んでいます!」

マクガイア「戦艦だと!? 一体どうなっている...観測員! 敵の情報を収集し、それをマーシャルに持ち帰れ!」


エラン「ど、どういうことですか!? 何をしろって!?」

マクガイア「聞こえなかったのか!? 敵を偵察し、情報を持ち帰れというのだ!」

エラン「そんな無茶な!」

エランが叫ぶと同時に、マクガイアからの応答はなくなってしまった。

エラン「くそっ、やるしかないのかっ」


そういいながら、エランはボイジャーのスロットルを全開にした。そしておそらく敵であろう戦艦群に突っ込んでいく。同時にエランは搭載している科学機器をすべて起動して情報を集めていく。後に最も多くの情報を軍に提供したのは、宇宙航路局が独自に搭載した天体観測用カメラだった。


不思議なことに、巨大戦艦はエランの乗るボイジャーに何もしてこない。まるで気づいていないかのような気すらする。戦艦群は隊列を維持したまま、惑星ディアナの地表にビームの雨を降らせた。衛星軌道から見えるほど、地表は煌々と燃えていた。


エラン「ディアナの地表が...! なんなんだよ! こいつら!」


頭に血が上ったエランは、不注意から戦艦に近づきすぎてしまった。その結果、バチッ!という音と共にエランの乗るボイジャーの電気系統がショートしてしまった。エイリアン戦艦のシールドに接触してしまった影響だ。


エラン「おいおいおい冗談だろ!? 頼む頼む頼むって!」


エランはどうにかして迂回回路を設定して機能を復旧させる。しかしここで問題が発生した。


エラン「ワープドライブのメインシステムから応答なし......今のでイカれちまったのか。」


すでに十分な情報は集まった。しかしこれでは自力でマーシャルに戻ることはできない。どうしようか考えていたところに、一本の通信が入る。


カリナ「こちらは輸送船ネビュラ・ランナーの船長です。本船は現在ポイントN544-818に停泊中です。収容を希望する者は現時刻から標準時間1800までに合流してください。繰り返します。こちらは...」


エラン「輸送船か......よし、こいつに乗ってマーシャルまで帰ろう!」


そういうとエランは針路を通信にあった座標に合わせた。しかし今のエランは、ワープドライブの故障により光速の25%までしか出すことができない。これでは合流にぎりぎり間に合うかどうかの上、合流ポイントは小惑星帯であることもエランはわかっていた。


エラン「間に合ってくれよ!」


その一心でエランはエンジンを最大出力にした。

エランは亜光速でシャンブロプライムを離れた。しかし敵艦からの追撃はなかった。エランは不思議に思いながらも、今はただ逃げることに専念した。


筆者は一介のSF好きでございますので、様々な名作から影響を受けてこの小説を執筆いたしました。

スタートレック、スターウォーズ、銀河英雄伝説などが好みでして、宇宙戦略ゲーム・Stellarisをよくプレイしております。

もし皆様からのご評価を頂ければ、大変嬉しく思います。

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