短編 「真の番と偽りの番~番から急に「よくも私の番を偽りましたわねっ!」と言われたが意味が分からない~」
満月の夜。それは、番から発する気(フェロモン(設定)発情とは違う。簡単にいうと相手が番だと強くわかるもの)が強くなる世。
国そのものを象徴する煌びやかな王城。今宵、そこには紳士淑女が集まり、益者三楽している中、片や正に、王族に相応しい恰好をしている者。片や、煌びやかなドレスや宝石を纏う者。この二人が、会場でもっとも目立つ、一段高い場所に立ち。王族に相応しい恰好をする者。その者、第二皇女エミリーローズ・フォン・ウィントラストが一人の軍服の正装に身を包んでいる者を冷たく見下ろしている。周りが訝しんで様子を窺っていると、エミリーローズが発した。
「よくも私の番を偽りましたわねっ!ミラっ!」
その発言に会場全体が騒然とする。
ここウィントラスト帝国の王族には番がいる。王族の番は、必ず魔法の基本属性(火、水、風、土)とは違う稀有な属性を持っており。その魔法で国が豊かになっている。そのおかげで、王族の番は、国民皆に愛されている。その番を偽ろうとする者は極刑と法で定められるほど、国では手厚く保護される。そんな番を偽っていると、皇女が発言したため、会場は困惑状態だ。
「私が貴女様の番を偽っているとはどういうことでございましょうか?」
会場が騒然としている中、皇女本人に番を偽ってると言われた者。ミラーファンス・ラー・シュレスト公爵令嬢。ミラーファンスは、特級((設定)どこの階級にも属していない皇帝直属の軍人にのみ与えられる階級。総帥などが理由があり指揮が取れないときなど代わりに指揮する。普段は軍人の鍛錬をしている。))軍人であり、空の希少魔法を持っている正真正銘のエミリーローズの番だ。
「ふんっこの期に及んで言い逃れをするつもりですかっ!」
「ミラさんっ罪を認めてくださいっ。エミが今認めれば減刑も考えてくれるって言ってくれているんですっ」
「…気安く私の名を呼ぶな。ストンロ男爵令嬢。」
「ううぅひどいですっエミィィ」
「大丈夫ですか?リンっ」
そういいリンシャールを抱き寄せる第二皇女。その様子をミラーファンスは無表情で見ており、会場の全員は絶句している。
「よくもリンを泣かせてくれましたわねっ。知っていますのよっリンにひどい仕打ちをし、リンから気を奪っていたことはっその証拠にリンからも気を感じますっ。」
その言葉に会場の一部の者はミラーファンスに敵意を向けている。
「…そうですか。」
ミラーファンスは一瞬微笑んだ。この場にいる優秀な者は気づいているだろう。
その証拠に一部目を見開いている者達がいる。
「近衛兵っそこにいる偽りの番を捕まえなさいっ」
第二皇女が近衛兵に命じ、ミラーファンスは抵抗せず、会場の外へと連れていかれた。
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ミラーファンスはその後、貴人牢ではなく一般牢に入れられていた。
「ははっ。偽りの番か…。」
普段無表情のミラーファンスが酷く傷ついた笑顔をしている。
足音が段々近づいてきているのがわかるといつもの無表情に戻り立つ。
牢の前に騎士が立ち
「お呼びだ出てこい。」
と言い、ミラーファンスの手に手錠をかけ、連れて行く。
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ミラーファンスがつれてこられたのは帝の御前。皇帝の謁見間だった。周りには皇帝本人や皇帝妃、第一皇太女とその皇太配とエミリーローズとリンシャール、ミラーファンスの父親にして宰相とミラーファンスの母親にして、筆頭公爵家公爵夫人と次期宰相の兄。王の側近の近衛騎士や重要人物、騎士数名だけだった。
間の中央へと跪くミラーファンス。
「ミラーファンス。面を上げよ」
「はっ。」
「お主が番を偽っていたとは本当のことか?」
実の子のように慈悲深い目でミラーファンスを見る皇帝。
「…第二皇女殿下がそうおっしゃたのなら、私は偽りの番だったのでしょう。」
「っ。ミラーファンス特級軍人殿よ。正直に答えよ。」
先程の慈悲深い目ではなく。皇帝に相応しい目つき威厳のある声で命令する。
「はっ。私が偽りの番という事実はありません。」
「何をいっているんですかっミラさんっ嘘を言わないでくださいっ」
この間の全員はリンシャールを蔑視している。
「そうか…おいストンロ男爵夫妻をここへ連れてこい。」
「はっ」
騎士の数名が退室し、騒ぐストンロ男爵達を連れてくる。
「は、離せっ私は男爵だぞっ」
「なによ私は男爵夫人よっ」
スロント男爵夫妻は私より少し前に放り出された。
「こ、これはっ皇帝陛下っ」
「久しいなストンロ男爵、男爵夫人。」
「お、お久しゅうございますっ」
「お、久しぶりでございますっ」
「ああ。今日お前らを呼んだのは、貴様らの罪状を上げるためだ。」
「「「え」」」
「へ、陛下御冗談をっ」
「冗談などではない。」
「ひゅっ」
「まず、貴様らは我が国の絶対に犯してはならん。王族の番を偽った罪とそれに加担した罪だ。これで、もう極刑間違いなしだな。」
「わ、私は本当の番ですっミラさんが偽物ですっエ、エミ助けてくださいっ。」
「離れなさいっ」
エミリーローズは抱き着いてきたリンシャールを護身術で突き放す。そして、ちょうどストンロ男爵夫妻の真ん中に座り込む。
「そ、そんなっ酷いですっ」
「酷いのはあなたのほうでしょうっ!私と私のミラにこんなことさせてっただで済むとは思わないことねっ!ああ、私のミラごめんなさい。こんな物を手にかけさせて、すぐに外してあげるわっ」
そういってミラーファンスにかけられた手錠を外す。
手錠を騎士に渡した瞬間エミリーローズはミラーファンスに抱き着く。
「んーやっと私のミラに触れられたわっ」
「エミ殿下、御身が汚れますのでお離れになってください」
「絶対にいやっ一週間はこのままなんだからっ」
「うむ。すまなかったなエミ、ミラこのような辛い役目をさせてしまって。」
「いえ、これが私の役目ですから。」
「んーそんなことをいうミラもカッコいいですけど、酷いですわっ。お父様もう二度こんなことはおやめになってくださいねっ」
「わかった。さて、ストンロ男爵夫妻とその令嬢よ。ただで済むと思うなよ。」
その後、どんどん罪状が出てきて、途中で男爵夫人は倒れたけど、気にせず、罪状を上げていった。
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結局ストンロ男爵家はおとり潰しのあと、極刑。なんと、ミラーファンスが直々に首をはねたという。
そして、貴族の間で笑い話として有名になった。皇帝は前々からストンロ男爵家以外に茶番会をやるとお触れを出していた。この国では何代か前に似たようなことが起こったとかなんとかで事前に皇帝が皆に知らせたことによって定められた。一代に一度起こるらしくて、貴族や国民の見世物として楽しまれている。
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「ミラっ」
「なんでしょうか?」
「愛してるわっ」
「…私も愛しているよエミ。」
「っ!もうっそういうところですわよっ!」
その後、エミリーローズとミラーファンスは国一番といえるほどのおしどり夫婦として有名になった。
終わり。