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4章-8 三年後

勇者として訓練を受け、知識を身につけ初めて、早3年。

あっという間の時間だった。

アリアトの森に毎日通い、半年経った頃にはアリアトの森で野宿もした。

最初の1カ月はザックが本当に心配してよく顔を覗かせていたけれど、1カ月を過ぎたころから、週に1度会うか会わないかという頻度になった。

その年の秋に大規模な魔物災害が発生し、私達勇者は初めての遠征に行った。

テオとリックは即戦力となったが、私は何とか自分が怪我をしないことと自分の周囲にいる人が傷を負わないようにすることに精一杯で戦場で戦うことの難しさを知った。その魔物災害の遠征で私が考えたことはと言えば、「敵が魔物で良かった」ということだ。これがもし人間同士の戦争で、その国を守る勇者として前線に立ったら、私は人を殺めることが出来るだろうか。いや、殺めることが出来たとして、人の気持ちを保つことが出来るだろうか。魔物の息の根を止めながら、私はこれが人だったら……そんな妄想をしては吐き気を覚えた。

それからは、月に1度の割合で王都より少し離れた別の森にも遠征に出かけた。

この3年で4つの森に出かけて行った。


私達の変化と言えば背が伸びたこと。この世界にも第二次成長があるようで、胸が出てきて月のものが始まったこと。そして髪が伸びたことだ。

髪は邪魔になるし、切ろうと何度か思ったのだけど、みんなに止められて伸ばし続けてる。


「ねぇ、リリー、私髪を切ろうと思うんだけど」とそこまで言ってリリーを見上げて続きの「切ってくれない」と声に出そうとして断念した。リリーの目が見開かれ、こんな大きな涙の粒見たことないと思うほどの涙が瞳の下に今にも零れ落ちそうに光っていた。

えッ?

「リリーどうしたの?」

私が不思議そうに聞くとリリーは今にも零れ落ちそうな涙をそこに留めたまま、「いえ、フィラ様の御髪が……」と私の髪をジッと見ていた。

「リリーは髪切らない方がいいと思う?」

私の質問に思いッきり頭をブンブンと縦にふる。

いつもなら「フィラ様が望まれる方が正解です」と言ってくれるリリーなのに、その必死さに髪を切るのはやめようかなと思いとどまった。

ただ、夏は暑いし遠征に行くとなると自分で髪の手入れをしなければならない。

面倒くさがりの部分が発動し、勇者仲間の前でも「髪切りたいな」と呟いたことがあった。

その時のリックの顔が可愛くてかおるを思い出す。

「えッ?フィラ髪切るの?それは勿体ないよ。こんなに綺麗な髪なのに」

加賀美かすみ時代は美容院に行けるお金がなくて伸ばしぱなしだった。小学六年生の時に一度だけショートカットにしたら、かおるに好評ですごく気にいっていた。時々思い出したように「姉ちゃん、もう髪切らないの?小学校の時のショートカットすごく似合ってた」と言っていた。その時の顔とダブって見えた。

テオも残念がってくれたけど、以外だったのがマッケンローだ。

「髪切りたいのか、勿体ない」

そっけない言い方だったけど、本当に残念そうで、自分の髪が予想以上に皆に気に入られていると知って切るに切れなくなってしまった。

この分だとザックもハリーも止めるだろうな。

結局、三年伸ばし続けてる。


一番変わったのはリックだろうか。

一年前から男らしくなって、声変りし、背もグンと伸び、テオにもう少しで追いつきそうだった。

その頃からリックの一人称が「僕」から「俺」に変わったし、勇者塔に部屋が変わってからは無口になった気がする。テオとはとても仲が良くて私は一人仲間外れな気分を味わったりしてる。


「みんな聞いてくれ」

マッケンローが勇者塔の広場に私達を集めた。

いつもの椅子と机。

椅子も机も今では小さく感じられるほど大きくなった私達。

マッケンローは私達三人を順に見ていく。

「ついに出立の許可が下りた!」

「やった!!」

三人の声が揃う。

そう、やっと魔王討伐のための勇者パーティーとして王都を出ることが決まったのだ。

ここまで三年。

ここからが本当のはじまりだ。

マッケンローが一緒に来てくれる。

「最初の三年は俺が同行する。三年経ったら一度王都に戻り、報告をしてその後を考える。そういうことだ」

勇者としての旅が始まる。

まだ誰も見たことのない魔王を探す旅が。


一旦ここで完結とさせて頂きます!

読んで下さってありがとうございました。

星を頂けると今後の執筆の励みになりますので、よろしくお願いします(^人^)

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