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4章-6 アリアトの森2日目ー森の入り口までー

私の思い出話を聞いてもらった次の日もアリアトの森へ訓練のために向かった。

ザックは今日も一緒に来ている。

昨日のアリアトの森の異変があり、それでも訓練を続けて行うと言った勇者側に対して、国からの返答は安全対策にザックの同行を条件に許可するというものだった。

昨日と同じように朝日が昇る頃、5人は王都の門を潜り抜け森を目指す。

今日は昨日とは少し違う。

マッケンローでさえ少し緊張しているようだった。

誰も何も話さないまま、森の入り口を目指す。何が起こるのか分からない、今日もアリアトの森の魔物たちは私達の周りに集まるのだろうか?誰しもが昨日の魔物の動きを脳裏に蘇らせているようだった。

アリアトの森の入り口に到着する頃には私達の空気は張り詰めたものになっていた。


アリアトの森は平原に突然森が出来ているようなものだった。

王都からの道を外れ、道なき道を歩く。

とは言え、多くの冒険者がその道を通るため、獣道の様にそこだけ草が少なくその道を通れば森に着くと示してくれていた。そして、その森への道なき道を進んだ先にデンと大きな木々が森を形成してるのだ。

アリアトの森は外から中の様子を窺うことが出来ない。

それはウィルス王国建国時から続くアリアトの森の不思議な現象の一つである。

昨日、アリアトの森での実践訓練初日には感じなかった緊張感。それは年長者二人から発せられるものでもある。


バンッ!!

大きな音が右隣りから響く。

見上げるとマッケンローが前のめりに踏ん張って顔を顰めていた。

テオの手がマッケンローの背中に置かれている。

「いってーな。何するんだ!!」

マッケンローがテオの胸倉をつかんで睨み付ける。

テオがのんびりとした声を出す。

「緊張してるなぁって思って。昨日のお返し」

「はぁ、昨日ちょっと小突いただけだろ。お前、おもいッきり背中叩きやがって。魔法使いの細腕とはいえ、いってーよ!」

マッケンローがテオに遠慮なくガンガン怒鳴り散らした。

昨日、テオが前世の記憶の話をしてから、なんとなくマッケンローがテオに対して容赦なくなってきているように思う。

「はぁーーーー」

マッケンローが盛大にため息をついた。そして、頭を上げて姿勢を正し、両手で自分の顔をバチンと叩く。

ザックとリックが顔を見合わせて声をあげて笑った。

私もつられて笑う。

「テオ、すまん。ありがと」

マッケンローがテオに小さく囁いた声が私の耳にも届いた。

マッケンローもテオも笑顔だ。

勇者パーティーの緊張が一瞬で緩む。

あぁ、良い仲間だな。

私はつくづく感じた。

「あ、先にお願いがあるの。今日はどうにかして私達3人も戦闘に参加したい」

私が緩んだ雰囲気の中に今日の最終確認をねじ込んだ。

もし森に入って昨日と同じ状況になったら、戦闘が終わるまでまた二人に守られるだけの存在になってしまう。けど、今日こそは戦闘に参加したい!!だからこそ、森の入る前にきちんとこのことを伝えておかなければと思ったのだ。

ザックとマッケンローが顔を見合わせて頷く。

「もし昨日と同じなら、とりあえず最初の戦闘は俺たちで行う。それで、今日は帰らない。もう少し奥に進みながら1体1体相手が出来る状況で3人には戦闘に入ってもらう。まぁ、順番はフィラからでいい。一番やりたそうだからな。で、3人が魔物との戦闘経験をつんで、今日は岐路につく予定だ。それでいいか」

私は大きく頷いた。

私の目がギラギラとしていたのか、ザックが私の頭を小突く。

「本当にフィラ、無茶はしてくれるなよ」

「大丈夫だよ。だってみんながいるから。ザックもいるし、何かあれば助けてくれるでしょ?」

私がそう言うと、「あぁ、勿論だ」と答えが返ってくる。

私はリックもテオもマッケンローも見る。

「みんなも頼りにしてるし、私もできることは何でもするよ」

私がそういうとリックは真っ赤になって「うん、僕も出来ることは何でもする」と小さな声で呟いて、テオとマッケンローがニヤニヤと笑う。

「フィラはやっぱり本物のお姫様だよ。守ってあげたくなっちゃうな」

テオが私の頭を撫でようと手を伸ばす。

が、ザックがその手を払いのけた。

「テオはフィラに触り過ぎだ!」

私はザックのその行為に世の父親の姿をみて、過保護だなって思った。

アリアトの森の入り口で一頻りワイワイと緊張をほぐしたところで、マッケンローの一声がかかる。

「じゃ、いくか」

私達5人は森の入り口を通り抜けた。


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