04 事の発端3
れんとー、これで区切り
そこには来栖風音。学校一の美少女が立っていた。
「え?...嘘だろ...?」
「あ、あの...その...よろしくお願いします...!」
来栖さんは頬を赤らめながら僕に挨拶をしてきた。
「あ、こ、こちらこそ、よろしくお願いします。」
会話といっていいものか、何かちぐはぐしたこの言葉が、二人の許婚としての初めての会話となった。
その後来栖さんと来栖さんの祖父を家に上げ、瞬く間に話が進んでいった。どうも爺ちゃんと来栖家の祖父は同級生で友達だったらしい。そして、許婚として二人で暮らすこと、来栖家の家族構成、あくまでも許婚であり今後は二人の意思を尊重することなどが説明されていった。
来栖家は両親ともに健在で、大学教授をしているらしい。許婚に関しては許しが出ているらしい。なぜだ...。
そして流してはいけない。二人で住むのだ。一応は僕の今借りている部屋に来栖さんが来ることになるらしい。正直意味が分からないが、意味が分からな過ぎてそのまま成すすべなく話を聞くことしかできなかった。
ちなみに二人で住むということが説明された際、わずかにだが来栖さんが反応したのにはこちらも恥ずかしくなった。
それから一週間後、ついに今日、来栖さんが家に来る。昨日は緊張で全く眠れなかった。というか緊張するなというほうが難しいだろう。
予定ではもうすぐ来るはずなんだが...
(ピンポーン)
インターホンが鳴った。それに呼応するように心臓がはねた。
「待たせるのも悪いからな...」
そう自分に言い聞かせ、玄関に向かい扉を開けた。
「い、いらっしゃい」
「は、はい、おじゃまします...」
来栖さんはデニム生地のスカートに白いシャツ、チェックの上着を羽織っていた。初めて見た来栖さんの私服姿は正直かなり可愛かった。
そして同時に普段教室で見ている来栖さんとの差に脳がついていかなかった。
(来栖さんってこんな感じだったか?いつもはもっとクールな感じで表情もあんまり変わらないのに)
そんなことを思いながらも、来栖さんをリビングの方に招きとりあえず座ってもらう。
「何か飲むか?コーヒーと紅茶ならあるけど」
「あ、ありがとう...紅茶で、お願いします...」
こんな会話をしているが両者の顔は赤かった。さすがにふたりとも意識しないということは無理なようだった。
飲み物を飲み落ち着いたところで俺は来栖に気になっていた質問をする。
「なぁ、来栖さん、俺らこんな感じで一緒に住むことになったけどさ、ほんとに良かったの...?もし嫌々だったりしたら全然かまわないし、強制じゃないから」
そういって来栖さんのほうを向くと、来栖さんは顔を一層赤くしながら、下を向いて小さな声で言った。
「...な...です。嫌じゃないです...。」
「え..それは...」
正直そんな反応をされると思っていなかった俺は不意打ちを食らってしまった。
そしてそのまま来栖さんは続けた。
「あの...実は..私小鳥遊君が、初恋の人で、ずっと前から好きだったの...だから、この話をもらった時も相手が小鳥遊君っていうことを知って...受けるって言っちゃって...」
何が起こっているんだ?今来栖さんは何て言った?俺が初恋?
(やばい、頭が回らねえ...)
そんなことを考えながら零はなんとか言葉をつないだ
「来栖さん...?それってつまり...今のは...告白...?」
「..................はい」
その瞬間、俺の頭は真っ白になった。
落ち着いて考えてみてほしい。許婚が決まったという時点でまずパニックだ。
そしてその許婚が来栖風音、そう学校一の美少女であり、零の思い人。そんな少女から告白されたのだ。
(さすがにキャパオーバーだろこれは...)
と、ここでいろいろ考えすぎて来栖さんを放置してしまっていたことに気づく。
来栖さんを見るといつものクールさはどこへ行ったのかといった不安そうな表情でこちらを見ていた。
(女子からの告白だっていうのにそれを黙ってるままってのはなかなかダメだな...)
「えっと、来栖さん、実は...俺も来栖さんのことが好きなんだ。クラスが一緒になった時にさ、実は一目惚れ。その、良かったらさ、これから......よろしく」
そう俺が返すと、来栖さんはどこか恥ずかしそうな、それでいてすごくうれしそうな表情で答えてくれた。
「はいっ!」
こうして俺たちの同棲生活は始まった。






