02 事の発端1
連投です。ちょっと分けます。
「あっつ...」
八月某日の昼過ぎ、零は照り付ける日差しに体力を奪われながら歩いていた。目的は買い出し。スーパーを目指す。零は高校の近くのマンションの一室を借り一人暮らしをしていた。もちろん家事も自分だ。
冷蔵庫に食品がなくなってしまったため仕方がないとはいえキツイものはキツイ。
「もう少し待ってから出ればよかったな...」
そんな愚痴をこぼした時だった。零のスマホが鳴った。
「ん?誰だ?」
正直零には友達が少ない。本当に仲の良い友人などそれこそほぼ......これ以上はやめておこう。
そんな零は自分に電話なんて珍しいなと感じつつスマホを手に取る。そこには小鳥遊宗司と表示されていた。それは零の祖父であり、零を溺愛する人物だった。
零は歩きながら電話するのもなと考え、ちょうど通り道の公園の木陰に入り受信ボタンに手をかけた。
「もしもし?じいちゃん?急にどうしたの?」
「零か!わしだ!わしわし!!」
わしわし詐欺。新手の詐欺かなんかだろうか。
「えー、人違いd」
「馬鹿もん!切るな!せっかく久々にじいちゃんが電話したというのに...」
「あはは...ごめんって。で、どうしたの?電話をかけてきたってことは何か用事があるんでしょ?」
祖父は俺のことを溺愛している。だからと言ってそうそう電話をかけてくるような人ではない。それなりの用事があるのだろう。
「そうじゃったそうじゃった、つい取り乱してしまったわい。それで零よ、お前に話したいことがあるのじゃ。明後日に家のほうまで帰ってくることは可能か?夏休みだし予定も空けやすいと思ったのじゃが...大丈夫か?」
「んー、明後日か、別に空いてるからいいよ、時間とかはまた連絡して。今出先なんだ。」
「本当か!よかった、細かいことはまた話そう。出先なのに悪かったな。」
「全然いいよ、んじゃまたね」
そこで俺は電話を切り、再びスーパーのほうに歩きだした。まさかこの後あんなことになるとも知らずに......。
そして約束の日、零は祖父の家に来ていた。零の祖父宗司はそれなりに大手企業の会長をしており、その祖父の家はかなり大きい。情緒あふれる日本家屋といったところか。
「久々に来たな...相変わらずでかい...」
そんなことを思いながら門の前に立っているとにっこにこの祖父が出迎えに来た。
「零!よく来たな!さぁ上がってくれ!」
「あぁ、爺ちゃん久しぶり」
わが祖父ながら面白いくらいの溺愛ぶりだ。表情筋がゆるゆるである。
そんなこんなで俺は祖父と軽めの昼食を取りながら談笑していた。ちなみに祖母は二年前に亡くなってしまい今はこの大きな家に祖父とお手伝いさんが住んでいる。
「なぁ零よ」
「ん?どうした?」
何やら祖父が神妙な面持ちになり話を切り出してきた。
「お前......彼女はいるのか?」
「ブフォ!!何を言い出すんだ!?」
唐突だった。めちゃくちゃびっくりした。もはや爺ちゃんから発せられた予想外ワードランキング堂々の一位だった。
「な、いるのか?彼女いるのか!?」
爺ちゃんは何か焦ったような口ぶりで聞いてきた。
「...ない。いないよ...」
何が悲しくて自分の祖父に彼女いない宣言をしなくてはならないのか。僕の心が泣いている。
「そうか!いないか!!それは良かった!!」
「いや良くないからな!?!?」
挙句の果てに彼女がいないことを喜ばれた。え?何?急に爺ちゃんがいじめてくるんだけど??
「あ、いやすまん。その零は少し雰囲気が暗いだけで顔は結構いいからな、もしかしたらと思ったのだが...よかった!」
「褒められた気がしたけどやっぱり最後に彼女いないことを喜ばれている!?」
なんだこのアメ2割ムチ8割みたいな会話は。爺ちゃんは何を喜んでいるのだろうか。
そんな中、爺ちゃんが口を開いた。
「その、零...お前に許婚ができた。」
「...............は?」