01 教室と放課後
「眠い...」
そんなことを考えながら僕は高校への通学路を歩いていた。
小鳥遊零ーー身長はそれなりに高く、顔も悪くはない。しかし、髪は男子にしては少し長く目にかかっており、よく寝癖がついていたりとどうしても地味、暗いといった印象を抱いてしまうような青年だ。クラスの中でも特段仲のいい友人もなく基本的に一人行動をとっている。
あ、友達がまったくいないわけではない。決して。うん。
そんな俺ではあるが少しばかり隠し事をしながら学校生活を送っている。まぁそれはそのうちわかるとして、今は三限の数学の小テストに意識を向けなければ。そんなことを思っていると不意に目の端にある人物をとらえた。正確にはちょっとした人だかりか。
「今日もご苦労なことで...」
そんなことをつぶやいた僕の視界には多くの生徒から挨拶を受けているとても綺麗な人が映っていた。
来栖風音は美少女である。少し赤みがかったストレートヘアーはさらさらで光沢があり、その瞳は見るものを引き込んでしまうような不思議な力を持っている。乳白色のその肌もまさにマシュマロの様な白さだ。
成績も優秀で第一回の校内模試では全教科学年一位。学校内では知らない人がいない程の有名人だ。
当然、男女問わずかなりの人気を誇っている。
しかし彼女自身はというと、普段から少し気怠げな表情をしていることが多く、どこかクールであったりシニカルな雰囲気を持っている。そのため、大人数からひっきりなしに声を掛けられまくるというよりかは、傍からの羨望や崇拝を受けているといったところか。
俺から見ても彼女の容姿を見ては周囲の生徒と同じような印象を抱く。まぁ、勉強に関しては天才肌、といった感じではあるが。
なお、いくら彼女が羨望や崇拝を受けているといってもそこは思春期の男子である。そういう感情を持つ生徒は少なくない。そのため、入学からこの半年間彼女にアプローチを試みた男子生徒は数知れず。
しかし、全員があえなく玉砕。しかもそのすべてが
「ごめん」
の一言のみで来栖風音の前に散った。
そんなこんなで今教室で見る来栖風音には”高根の花” そんな言葉がよく似合ったーー。
「れ い くーんっ!!」
「うおっ!?」
さて、今の俺の状態を説明しよう。今俺の右腕には先ほどまで来栖風音だったものがくっついている。
いや、この言い方だと語弊があるな。来栖風音は生きている。元気いっぱいだ。訂正しよう。今俺の右腕には教室で見る来栖風音とはどうやっても一致しないような表情と言動をしている来栖風音がくっついている。
もうにっこにこだ。
「もう、零くん!どうして今日学校で話しかけてくれなかったの?」
「いやだって...学校で風音に話しかけるとめちゃくちゃ目立つから、それに数学の勉強もあったし」
「数学のテストは三限までだったじゃん!! むぅ、学校でも零くんとお話ししたいのに...」
そう、実は俺と風音は付き合っているのだ......。
いや、そんなものではない。
俺と風音は......許婚なのだから。
俺たちは現在一つ屋根の下で暮らしているのだ。
いきなりこれだけ聞いても正直理解できないだろう。俺もできない。
それならばなぜこのような突飛なことになっているのか。これから説明しよう。それは二か月前まで遡る。
夏暁です。初めて小説を書いているため至らない点も多くあると思いますが、もし良ければ読んでみてください。お手柔らかに。