第四話:雨降って地固まる・・・?
ブーブーブー。
携帯のバイブ音で目が覚める。
いつの間にか寝ていたようだ。
メールは・・・
智也からだった。
「大丈夫。何も出来なくて俺こそごめん。
まぁ深く気にするなよ。」
よかった。
智也にきちんと謝る事が出来て。
さて。
問題は綾奈だ。
幼馴染なのでしょっちゅう喧嘩はしていた。
だが、今日はなぜか様子が違うように感じたのだ。
何か・・何かが突っかかるような。
最後に見せた、あの寂しげな表情。
後になってよくよく考えると、あの時確かに俺も綾奈も怒っていた。
でも最後、部屋から出て行く時の綾奈は本当に寂しげな目をしていた。
今にも泣き出してしまいそうな・・・そんな目。
気の強い綾奈が泣くなんてことは滅多に無い。
返事、ちゃんと来るかな。
そう考えた時だった。
携帯のけたたましい音が鳴り響く。
電話なんて滅多に来ないからメールはバイブ設定で電話はそのままだったためだ。
あまりマナーモードにはしない。
急いで携帯を取り、ディスプレイを確認する。
「綾奈」
ディスプレイにはそう表示されていた。
「もしもし」
「あ・・俊? 今、平気かな?」
「え、あ、あぁ。大丈夫。」
突然の電話にしどろもどろになってしまう俺。
「俊、さっきはごめんね。私・・俊の気持ち、何も考えてなかった。
私、最低だよね・・・」
なんて言ったらいいのかわからなかった。
電話越しに聞こえてくる泣きそうな幼馴染の声を、ただ黙って聞いていた。
ようやく言いたい事がまとまり言葉を口にする事が出来た。
「・・・俺は。」
俺が話し始めるとすすり泣くような声がぴたりと止まった。
「俺はあの時、言い返す言葉が無かった。
お前の言ってる事があまりにも正しかったから。
だから、俺は怒りに任せて怒鳴ったんだ。
本当に悪いと思ってる。
綾奈が最低なんじゃなくて、現実をきちんと受け止めてなかった俺が悪いんだ。」
「そんな・・・私は・・私は・・
俊に嫌われて当然って言えるくらいの事を言ったんだよ?
どうして・・・」
「これくらいで嫌うわけないだろ?
幼稚園の時からの仲なんだから。
それに・・綾奈のおかげで気付けたんだよ。
俺はずっと嫌われてるって思って何一つ行動を起こさなかった。
でも、綾奈があそこで思いっきり言ってくれたから気がつけたんだ。
何もしないまま諦めるな、って。
だから嫌うんじゃなくてむしろ感謝してるくらいだって。」
「・・・本当に、私の事嫌わないでいてくれるの?」
「当たり前だろ?ばか。」
「ごめんね、ごめんね・・・」
電話の向こうで綾奈が泣き崩れている姿が想像出来た。
綾奈が泣いている間、俺は何も言えなかった。
やがて泣いている声が聞こえなくなり、しばらく沈黙が続く。
どうしたらいいものなのかと、あたふたするうちに向こうから声が聞こえた。
「俊・・。私ね。ずっと・・・ずっと・・・」
「ん? どうした?」
無意識に声が出た。
その声が綾奈の言葉を遮ってしまった。
「・・・ううん。なんでもない。ごめんね。」
「なんだよそれ・・」
「もういいよ。ばーか。」
先ほどの泣き声はどこへいったのやら。
「ったく。さっきまで泣いてたと思ったら・・・。」
「いいのっ。乙女の心は変わりやすいものなんですぅ〜。」
「あー、はいはい。で・・もう、大丈夫か?」
綾奈の冗談を軽く流しながら先ほどの事を気にかける。
「うん。もう平気だよ。
迷惑かけて本当にごめんね。
じゃあもう遅いし、明日は入学式だしさ。
もう寝るね。おやすみ。」
「あぁ、そういえばそっか。おやすみ。」
そういって電話を切った。
通話時間・・・三時間半。
やっべ、また母さんにうるさく言われるだろうな。
あ、そういえば。
さっきの出来事があまりにも大きすぎたため忘れていた事があった。
・・・綾奈と智也も同じ高校なんだった。
そう。
あの「神崎さん」も。
皆、同じクラスになれたらいいのにな。
そう考えながら眠りについた。
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とりあえず仲直りできてよかった。
私が、全部悪いんだけどね・・・
・・・前から俊が神埼さんに取られちゃうって思ってた。
焦った私はあんな酷いことを言っちゃった。
・・あのまま嫌われてたら私、どうなってたんだろう。
でもな。
また言えなかった。
本当はずっと俊のこと好きだったんだよ、って言うつもりだったのに。
きちんと覚悟して言おうと思ったのにさ。
なんであんなとこで「どうした?」なんて言うかな?
ほんっと鈍感だよね。
ばか。
ばかばか。
ばかばかばーか!
早く気付いてくれないかな・・・
でもまずは明日、同じクラスになることを祈ってなきゃね。
お願い神様。
私と俊を同じクラスにして下さい。