第一話:罪悪感と切なさ
俺は片桐俊。
この春から一応高校生になる。
偏差値的には62前後とまぁまぁな学校へ合格する事が出来た。
細かい事は現在取込中なので後で言おう。
さて取込中というのは今、俺は彼女をフっている最中なのである。
え、最低?
・・・俺にだって事情があるんだ。
目の前で俯き加減に俺の話を聞いているのが彼女の一之瀬春奈である。
顔よし、性格よし、運動も勉強もバリバリなため仲間からは多少嫉妬の目を食らうこともあった。
もちろんそんな理由から別れようだなんて思わない。
ましてや俺になんて不釣合いすぎるほど良い彼女なんだから。
「やっぱり・・・私じゃダメなの・・・?」
辺りは誰もいない公園であるためよく声が通り彼女への罪悪感からか悲痛な叫びが俺の胸に響く。
「・・・本当に・・・ごめんな。」
それしか言う事が出来なかった。
「・・・わかった。我侭言ってごめんね。俊と一緒に居られてすっごく幸せだった。
私は・・私は・・・また絶対に俊の事を振り向かせてみせるから。」
「ありがとう。春奈・・・」
こうして春奈との交際にピリオドを打ったんだ。
後日。自宅にて。
「えっ!あの春奈ちゃんと別れたの?!」
素っ頓狂な声を出して驚いているのはである渡瀬智也だ。
「仲良しカップルって事で噂になってたのにね〜。」
呆れたように雑誌を読みながら言うのは岩風綾奈。
いつものメンツだ。
智也は性格は本当に良いが顔がオタク顔なため一部からは嫌われている。
良い奴なんだけどな・・・
まぁいつも彼女彼女と嘆いているのが好かれないのかもしれないが。
綾奈は俺の幼馴染。
智也とは真逆で顔もスタイルも良いのにとにかく性格が厳しい。
昔、それが表の顔だとわかった時には本当に打ち解けた気がした。
顔もスタイルも良いからもちろん男子諸君からの眼差しは熱い。
だが本人はすべて受け流してしまっている。
俺はどうかって?
俺は普通の人間。
性格は普通、顔は・・・普通であって欲しい。
この二人いわく「モテる顔」らしいのだが・・・。
運動は球技が苦手だが中学の時にやっていた陸上なら自信がある。
多少騒がしい奴なので一部からは嫌われているらしい。
・・・その「一部」が問題なのだが。
「でももったいないよな〜。もし俺が春奈ちゃんと付き合ったら・・・」
「はい、気持ちの悪い妄想はやめ。」
綾奈にキツイ言葉を浴びせられ軽く拗ねる智也。
俺たちの中ではよくあるいつもの光景だ。
「で、なんで別れたの?わからなくも無い気がするけど・・・」
少し苦い顔で綾奈が聞いてくる。
「・・・うん。綾奈が考えてるので合ってると思う。」
「じゃあまだあの人の事、好きなの?!」
「うん。やっぱり春奈に悪いと思ったからさ。」
綾奈の言うあの人とは同じ塾に通っていた神崎綾香の事である。
入塾した当時から可愛い人だと思い眺めていた。
俺にとってすべてがど真ん中の人だった。
顔、性格、仕草、メールの返信の仕方まで。
でも・・・俺の中であの人は憧れだ、と線引きをしていた。
あくまで「好き」という感情に陥らないようにするために。
それには大きな理由があったんだ。