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千人殺し 5
路上の黒いワゴン車に乗り込んだ途端に、警察署が轟音と共に火を吹いた。
「また、物騒っすねー」
「通り魔引き受ける方が物騒でしょ」
「俺今回でどんくらい稼いだんすか」
腹、減ったなあ、と思いながら聞いてみる。
「34人だから3400万?じゃないの」
「ゼロいくつ並ぶんすかねえ」
「その前に請求書」私とユキちゃんの分、と付け足す。
「そんなに高いんすか」
井上も、真紀の仕事が高いというのは聞いたことがある。今回はユキちゃんの爆弾がメインなんじゃないのか?と思いつつ、紙を受け取った。
「うげっ」
30000000……最早数えたくもないが、確かに3000万と書かれてあった。
「二人でどんだけ持ってくんすか!!」
「仕方ないから。今回は数も多かったし、爆弾のねーーこれでも安い方でしょ?私が殺し、してないんだから」
「酷いっすよー……俺の30人分……どこ行った……」
「もし捕まったら警察署ぶっ壊してでも外に出してって言ったの、誰」
「へーい……」
仲間なら情けをかける。
仲間ではないから、情けはかけない。
井上がいるのは、そんな場所だ。