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千人殺し 1
10月20日
秋の穏やかな空に、鋭い光が跳ね返る。刃はたちまち血に塗れた。
一人殺せば百万、百万、それだけが井上の心を繰り返し駆け巡った。
流れる血が柄を伝う。手の中を滑り落ちそうなたった一つの仕事道具を離さぬように、今しがた刺した女の顔も見ずに、その脇腹からナイフを引き抜く。
今回の依頼
私の代わりに、通り魔事件を起こしてください
出来るだけ沢山殺してください
死体一体に百万支払います
――次!
立ち竦む者も逃げようと走り出す者も関係ない。
それが彼の仕事だからだ。