ダンジョントライ
宜しくお願いします
なぜ世界各地に出現したのか
なにが目的なのか
発生原因も不明
巨万の富と災厄を届けるパンドラの箱
それがダンジョンだ。
そのダンジョンの1つを終わらせるために今俺たちはダンジョンの前まで来ていた。
ーーー冒険者ギルドはあっさりとしたものだった。
登録はすぐに終えて首飾りを1つもらった。
燻んだ胴の首飾り
初級の冒険者に与えられる冒険者の証だそうだ。
シンディはぶつくさ文句言ってるがこんなもんだろ
半分は10歳の女の子にもう半分は5歳の男の子だ。
1人は自身より大きな聖剣持ってるけどな!
とりあえず今日の目標は地下1階層のクリアだ。
ボスといっても初回以降は弱体化するらしいし、1階層は問題ないだろう。
念のため装備もある程度整えた。
俺は盾と予備の剣を
デュランは予備の剣と手甲を
シンディは槍と弓を持っていたがダガーの購入
マルカは杖を持っていたがローブの下に鎖帷子を購入
ぶっちゃけるとだな。
今月のお小遣いを全て使った。
装備バカ高えよ!
あれで一体何個のじゃがバターを...
いやいい。
必要経費だ。
だけどこれで俺もダンジョントライに集中せねばならんくなった。
かけた分のお金は取り返さねば!
「やけに明るいね?地下だしもっと暗いと思ってたよ。」
「1部の階層を除きダンジョンの壁面にはうっすらと光る夜光石が組み込まれてますの。理由はわかりませんが、他のダンジョンも同じだそうですわよ?」
ふぅーん
まあ明るい方がいいさ。
っと
「魔獣が来るぞ。数は2、左の穴からだ。」
「うんうん。今日はジークがやる気で嬉しいよ。ついでに言うとその奥にさらに一体いるね。結構離れてるしこっちにも気づいてないから問題はないけど。」
気づいてるなら先にいえ!
「タイミングを教えて下さいまし。弓で先制しますわ。」
「うん、じゃあ今回は僕抜きでやってみようか。ジークは魔獣が苦手、他は戦闘経験なしだろう?なら1階層での腕試しがベストじゃないかな?」
「そうだけどこのギリギリのタイミングで言うなよな。あと数秒で来るぞ...いまだ!」
矢は連続で3回放たれて2本が1匹に命中する。
黒い大型犬だな。
これなら俺でもやれる。
残った1体をすぐさまレイピアで突き刺す。
負傷した1体はマルカとシンディがタコ殴りで倒す。
「うん、いいんじゃないかな?それぞれ役割をわかってる。マルカは治癒と防壁の初級魔術がメインだからね、基本は前に出ずサポートだ。シンディは弓で牽制して近距離は僕かジークを槍にてフォロー。ジークと僕は前衛、バランスは思った以上に良いと思うよ。」
そういいつつ落ちてる魔石を2つ拾っていた
「魔石...初めての収入です!私は全然活躍してないですけど本当に全員で均等に振り分けでいいんですか?」
「勿論ですわ。マルカがいなければ誰かが負傷を負った時、毒を受けた時、誰が治しますの?ここは闇のダンジョン。状態異常は最も多いんですから貴女抜きでは攻略は不可能ですわ。」
そうだね。
実際マルカ抜きじゃ厳しい。
「自信を持って!マルカはこのメンバーの守りの要なんだから。堂々としようよ。」
「は、はいぃ!皆さんありがとうございます。はぁ、良かった。鎖帷子が思ったより高価で半期分のお金を全部使いましたから...」
マルカは裕福ではないらしい。
そういう庶民の感覚って大事だよね!
その後7体の魔獣と遭遇したがいずれも問題なかった。
てか後半5体はデュランが無双してた。
俺ですら気付かない距離の魔獣に石投げて撃破
魔石もすぐに回収してくるし上層ではこいつ1人でいいんじゃないかと思ったよ
やっぱこいつチートだわ
そんなこんなであっさりとボスフロアまで辿り着く
「1階層とはいえボスだからね。油断せず行こう。危険だと思ったらすぐに後退する。いいね?」
「それは俺がお前に言いたいけどな。強いと思ったら喜んで向かって行きそうだ。」
「1人ならそうしたかもね。けど流石に皆の命がかかってるのにそんな事はしないさ。」
どうだか
お前ピンチになったら安全な所に逃げろとか指示して自分だけ残るだろ?
んで目一杯楽しむんだろ?
知ってるよ。
お前がバトルジャンキーって事は。
「念のためシンディはマルカの護衛で遠距離の弓に専念してくれるか?俺とデュランで多分お釣りがくる。」
「言いましたわね?言ったからには活躍を期待しますわよ?」
「期待しとけ、デュランに。多分俺もいらん。」
「本当にデュラン君1人で片付けちゃいそうですぅ。」
そんな事を話しながら扉を開ける
中に待ち構えていたのは黒い大型犬5匹にさらにちょっと大きい大型犬1匹だった。
「はは。僕でもボスフロアの中の魔獣は分からなかったからちょっと期待してたんだけどね。」
うん。
瞬殺だった。
ここまでおよそ30-40分程度
思ったより早かった。
「当初の予定ですとここで帰宅する予定でしたがどうされます?ボスフロアにある転移石に触れれば入り口まで戻れるそうですわよ?」
「うーーん。ちょっと肩慣らしにしても余裕過ぎたからね。出来ればあと2、3層は潜りたいところかな。」
「寮の門限までは相当余裕がありますし、いいんじゃないですか?潜った分だけ次回潜る際には入り口の転移石で飛べますし。」
そうなんだ!
帰りの時間気にしなくていいならもうちょい潜っても良いかな。
本当はもう疲れたんだけど、このちっこい魔石が大した金にはならないと思うともうちょい欲しい
「ジークもまだ潜りたいだろ?お小遣い使っちゃったもんね?」
「うるさい。そうだけどわざわざ言わんくていい!」
「普段から授業に出ずに外で無駄遣いばかりしているからそうなりますの。マルカを見習って節約した方がいいですわよ?」
お前みたいなボンボンに言われると一層腹がたつ!
「反対意見はないみたいだし目標は3層にしようか!」
ってなわけで続行したのである。
2層は蜘蛛がいっぱいいた。
デカイ蜘蛛がわんさか。
さっきの大型犬よか小さいけど数も見た目もエグい
ってなわけでデュランを見習い投石にて片付ける
外の魔獣はこうもいかないが、ダンジョン内だと倒すと魔石化する。
人が死んでも肉体は消えるそうだ。
こんなキモい奴を解体しなくて済むと思えば非常に楽だ。
「遠距離は正解ですわね。このポイズンスパイダーは近距離での毒霧と糸が厄介ですの。矢も勿体ないですし、投石で済むならお願いしますわ。」
「見た目は可愛いんですけどねぇ。目がクリクリしてて撫でたくなりますぅ。」
マルカのセンスは独特だな。
ボスフロアも問題なかった
30匹くらいの蜘蛛と1匹のちょっと大きい蜘蛛
全部投石で倒した。
1層より時間もかからなかったな。
そうして3層に向かうと
初めての人型の魔獣がいた。
ーーーゾンビだ。
エグい。
前世で散々映画やらドラマやらで見てきたし
ゲームでは何度も殺して来たゾンビ
実際に見るとエグすぎる
気持ち悪いし臭い。
吐きそうになるレベルだ。
「あぁ、これはキツイね。」
「えぇ、フロア全体が異常な臭いですの。さっさと抜けたい所ですわね。」
「ごめんなさい、魔力の無駄遣いとはわかってはいますが、この階層で終わるなら浄化の魔術で臭い消してもいいですか?」
「頼む。むしろお願いするからやって!無駄遣いじゃない、ここが魔力の使いどころだ!」
ゾンビの移動スピードはかなり遅い
けどもあれには触れたくない。
が、このフロアの石には触れたくない。
なんだかフロア全体がネチャネチャしているのだ。
「わかりました。フロア全体にまでは及びませんが10数メートルは浄化できます。クリーン!」
おぉ!
2層までと同じ床が見える!!
匂いも臭く...臭い!
匂いを浄化したのは一瞬だけで、すぐに臭くなった。
「流石にフロアが広くてダメでしたね...あと10回程度使えばある程度いけそうですが、初級とはいえそこまで使うと魔力量が心配です。」
ぐぬぬ...
使って欲しいけど、万が一怪我したりしたら困るからそこまでは言えない。
とりあえず投石でゾンビを撃破する。
魔石は床に落ちる前にデュランが回収していた。
多分このダンジョンに入って1番の動きを見せてたな。
その後2回程クリーンをお願いして石を溜めて進み
ボスフロアまでたどり着く
「あぁ、この扉開けたくないな。」
「珍しくジークに同感ですわ...恐らくは複数のゾンビと大きめのゾンビがいますわね...」
「ボスフロアは道中ほどには広くないので2回のクリーンで浄化出来ると思います。即使いますので即投石お願いしますね!」
「うーん、ジークのレイピア使ったら?」
俺のレイピア?
「ギルバートさんが前に言ってたじゃない。3つの魔術が使えるよって。クリーンで投石を出来るようにするのはいいんだけどその間に近づかれたら剣で切らなきゃでしょ?でもそのレイピア使ったら一撃で全部倒せるよ。多分。」
「あぁ、初級中級上級の3つが使えるってやつね。確か刀身が見えなくなるほどに剣に風を巻き起こすインビジブルエアロに、斬撃を飛ばすウインドスラッシュ、それと剣を向けた方向に強烈な突風を巻き起こすウインドストームだっけか?」
「そう。ウインドストームで多分1撃じゃない?魔石に魔力が溜まるのは丸1日かかるっていうけど問題ないでしょ?」
「問題ないな。むしろ今まで1度も使った事なかったし良い機会だ。やってみよう!けど念のためクリーンはお願いね?」
臭いし。
ーーー1撃だった。
けれど誤算もあった。
まず威力が強過ぎた。
油断していて、反動で腕がぶっ壊れるかと思った。
上級魔術って凄いんだね。
それと...グロいのだ。
風によって千切れる腐ったゾンビ
もう色々見えちゃって...
俺だけ吐いた。
クリーンで綺麗になったから良かったよ。
「今日はここまでにしよう。時間はともかく精神的にキツイ。」
「そう、ですわね。3層がこれですと4層もなにかしらキツイのが来るかもしれませんもの。事前に調べて対策も練りたい所ですわ。」
今日は妙に意見が合うな?
「すいません、3層での魔術でもう数回しか使えないです。またゾンビ系だと少々心許無く...」
それは絶対あかんな。
クリーン無しのゾンビは無理だよ。
「そうだね。お腹も空いてきたしまた明日にしよう!明日は授業午前中だけだしね。」
多分全員思ったはずだ
え?あれ見て飯食えんの?って
ともあれ全員一致で帰還する。
ダンジョンの入口に戻るとギルドまで直行した。
「初めてのトライで3層クリアですか。期待のルーキーですね!次回もお願いします。」
受付の猫耳さんは笑顔でそう言っていた。
なんでも初心者の壁は3層なんだと。
強烈な臭いで戦闘意欲を失い敵の数も増える
先に言えや!
可愛いから許すけど。
魔石を換金すると銀貨30枚と銅貨6枚になった。
前世からの感覚でいうと銀貨1枚で1000円位、銅貨で100円位だ。
屋台飯一食分で大体銅貨1枚しない位だから物価は安い国、って感覚ではあるんだけど。
全部で36000円
多いのか少ないのかわからんな。
「まぁ3層だとこんなもんですわね。」
「えぇ!想像よりは多かったですよぉ、それに3層の魔石だけで全体の7割近くの換金でしたから今後は益々増えていきそうですよ?」
マルカは細かく見てるな。
でもそっか。
まだ3層だもんね。
「10層を越えると一般収入の数ヶ月分にもなる場合があると聞いてますわ。ドロップアイテム次第な所はありますが、夢はありますわね。」
マジ!?
ダンジョンって素敵!
「意外だね。ジークはあんまりお金に執着しないと思ってたんだけど。」
「失敬な。人を金の亡者扱いするな。けど金はあって困らないだろ?飯を食うのもおやつを食うのもジュース飲むのにも金はかかる。」
「さっきの戦闘を見てると忘れがちになるけど、ジーク君も5歳なんだよね...全部食べ物じゃないですか。」
「育ち盛りなんだよ。寮の飯だけじゃ足りない。」
報酬は山分けして銅貨分はマルカに預ける事になった。
次回の報酬と合わせて分けるか、ちょっとずつ貯めて装備を新調するのもいいかなど話してたが
どちらにせよお金はマルカ
これは満場一致だった。
ーーー深夜に異変が起きた。
身体中が痛い。
時々来る成長痛より遥かに痛い。
ナニコレ?
「あ、ジークって魔獣倒すの初めてだっけ?言ってなかった?魔獣倒すと全身に痛みがはしるって。多分数時間で収まるから安心して。」
「さ、先に言えよ!痛過ぎるだろぉ!」
「明日には魔力量もちょっと増えると思うよ?経験値を得るとそうなるんだって。村の人はレベルアップって言ってたよ。」
レベルアップに痛みをつけなくたっていいじゃないか!
この世界は優しくない。
翌日、ダンジョントライの話もするからと朝から学院に連行される
クラスにはいると...大盛り上がりだった。
英雄気分だね。
皆こぞって聞いてくる
半分以上名前わかんないけど。
「ジークにデュラン様こちらへどうぞ。」
シンディが手招きするので行くとマルカも隣にいた。
「おはようシンディ、マルカ。それといつも言ってるけどクラスメイトなんだから様付けはよそうよ。もうクラスメイトだけじゃなくってパーティメンバーなんだし。」
「ピース国始まって以来の勇者様をお呼びするにはこれでも軽いかとは思いますが...そうですわね。パーティメンバーですものね。ならデュランさん、とお呼びしますわ」
シンディはくねくねしながら言ってる
「シンディさえ良ければいつでも呼び捨てにしていいからね。それと4層なんだけど、寮で少し聞いたら色々わかったよ。4層はマリオネットが出てくるみたいだね。」
マリオネット?
「ええ。もう知っていましたのね。人形型の魔物。厄介なのが両手が刃物になっているのと魔術を使ってくるそうですわ。[ダークスモーク]目眩しの魔術ですが、マリオネットは目がなく、感知型ですので視界を塞ぎ両手で切り刻んでくるそうですの。」
「なにそれ。超強いじゃん。」
「対策は3つ。スモークを使われる前に倒すか、スモークを晴らすか、スモーク毎倒すか、ですね。因みに私の魔術ではスモークは晴らせません。」
ふむ。
多分ウインドストームで問題ないけど1回しか使えないしな。
ウインドスラッシュも同様だ。
なら
「そしたら今回は僕が使われる前に倒しちゃうよ。ジークは2人の護衛に専念してね。あぁ、それとこれも寮で聞いたんだけどパーティ登録していると戦闘に参加しないでも一定距離にいると経験値貰えるみたいだよ?」
3人ともギョっとした。
この反応...やっぱり2人とも
「深夜にレベルアップしたか?めっちゃ痛いだろあれ。おかげで今日は睡眠不足だ。」
「えぇ、知ってはいましたがまさかあれほどの痛みとは。覚悟出来ていませんでしたわ。」
「痛いですよねぇ。あっでも皆さん魔力量は増えてますよ?私も初級魔術1回分位増えてて驚いたんですが。」
魔眼って便利だな。
「それは嬉しいですわ。私は平均的な魔力量しかないので初級魔術2回使えば無くなりますの。」
俺は初級なら10回位余裕で使えるけどね!
魔術2つしか覚えてないけど。
授業出てないからな。
授業が終わりダンジョンに来た。
途中でマルカが買いたい物があると言って大きめのリュックを買っていた。
なんでも非常食やらなんやらを入れておきつつ、魔石を回収するのにも役立つからと
ってなわけで軽めの食事を昨日の余りでいくつか購入して中に入れておく。
マルカはとっても気がきく良い子だな。
「じゃあ今日は4層から行こうか。目標は7層あたりにしとこうか?」
今日は昨日より時間があるからと思ってるんだろう
「いやいや、進むにつれて階層も広くなるし敵も強くなる。実際はやってみないとわからないが焦りすぎじゃないか?」
「そうかな?多分だけど10層まではそこまで広くもないし強くもないと思うんだけどなぁ。」
「お前基準にしたらそうだろうけどな。」
「まぁあくまで目標ですしいいんではなくて?ボスフロア攻略時に都度確認すれば良い事ですわ。」
「それもそうか。」
実際は行って見なきゃわからんしな。
「じゃあ目標は7層で!いこうか。」
そうして俺達は再びダンジョンに潜る
その一歩が死に近づいているとも知らずに...
感想頂きました!
めちゃくちゃ嬉しいです。
励みになります。
これからも頑張って書いていくので宜しくお願いします!