楽園
よろしくお願いします。
エルフの住む国
そこは美しい花々と豊かな森に囲まれた土地にあるらしい
しかしその国を見たものは誰一人としておらず
存在さえ怪しい国
けれど過去の歴史を見ると確かにエルフは存在していた
ならば今もどこかにいるのだろう。
ーーーあれから4ヶ月が過ぎた
現在俺たちは海を漂っていた。
虱潰しに探すには余りにもこの世界は広い
けれどエルフがいるのであれば国もあるはず
いるのであれば目撃情報もあるはず。
そう思って他国をグルグルとまわったのだが有力な情報は得られなかった。
そもそもの情報自体も少なく
出てきた情報は全てガセ
けれどとある漁村で1つの情報を得られた
情報提供者は老人
まだ若い頃に漁船を大破させて奇跡の生還をしたらしい
嵐で船は大破
どこかの陸に到達するも意識を失ったらしい
しかし目覚めるといつもの漁村の浜辺にいたとのこと
気になる情報はここから
意識を失う前に長耳の銀髪のエルフを見たのだとか。
エルフは伝わっている情報だと明るめ茶髪
もしくは金髪だ。
銀髪のエルフなど聞いた事もない
その上そのエルフが漁村まで送り届ける理由もない。
当然誰もが信じなかったらしい
けれど老人は決して嘘をついているようには見えなかった。
それから幾度も海に出てその陸地を探すもとうとう見つけられなかったとか。
その情報から老人の示す方角へ海をさまよっていた
「海に出て5日、なんにもねえな?」
「とても穏やかな海ですねぇ。嵐も滅多にないと聞きますしぃ。やはりエルフの国はないのでしょうかぁ?」
俺はそうは思わない。
あの爺さんの語った事が嘘なら相当な役者だ。
「俺はその嵐がキーワードなんだと思う。なんでエルフはわざわざ漁村まで送り返した?」
「それは...親切心ではなくて?」
「その爺さんは大破した船で3日は持ち堪えたと言っていた。少なくとも結構な距離があるにも関わらずただの親切心でか?」
「んー、ジーク君は嵐が人為的に起こったものであのお爺さんが巻き込まれたから送ったと思ってるんですねぇ?」
「そうだ。そもそも漁村までの距離を送ったにしてもそれまでずっと意識がないのもおかしい。陸地について気絶もな、なら眠らされたと考えるのが正しいと思う。」
「なぜ嵐が人為的なものだと?」
「秘密の国だからだ。人が近づいたら自動発動でもするんじゃね?けど乗ってた船が気付くのが遅いかなんかの理由で巻き込まれたんだろ。んでその船を助けた、って感じと予想したんだ。」
「ではその嵐を探しているということですわね。」
「そゆこと。」
「魔眼で見るも周囲には特に魔術的な罠は仕掛けられていないようですねぇ。」
「近くにはないんだろ。気長に待とうぜ!」
食料も必要物資はそれこそ数ヶ月分はある。
余裕だ。
それもこれもダンジョンで手に入ったアイテムボックス的な袋のおかげだ。
魔界のダンジョンでは3つも手に入った。
そこからさらに5日
海をただただ彷徨っていると
ーーー嵐が起きた。
「マルカ!あの嵐を魔眼で確認してくれ!」
「あれは...魔術ですねぇ!どうやらジーク君の言ってた事は大当りのようですぅ。それもこちらに向かってくる気配はなく、あの辺りを覆うように展開してますねぇ。」
「んじゃ突っ込むか。」
「お待ちなさいな!あの規模の嵐とすれば間違いなく超級レベルの術式ですわよ?無策で突入すれば木っ端微塵になりますわ」
「そこは考えてる。ペーター超級の爆発系魔術使えたよな?」
「エクスプロージョンか?あんまし得意じゃねえができるな。攻撃なんかしたらまずくねえか?」
「嵐の中心じゃなくて嵐の手前側で使えないか?んでそれを俺が風魔術で適当に分散させて晴らすから。」
「威力とかは細かい調整できねえぞ?」
「大丈夫。ダメならこの船だけをいくつかの結界で守るから。」
「ダメじゃなくても結界は張りなさいな!」
「使うぞ?知らねえからな?エクスプロージョン!」
壮大な爆音と閃光が走る
とんでも規模の水柱があがるがこっからは俺の仕事
上級風魔術と上級風魔術
全く同じ魔術を両手で行使する
マルカ程じゃないが俺にだって複数魔術は使える
大雨と霧が少しずつ晴れていく
すると...
そこにはなにもなかった。
「これ、隠蔽系の魔術じゃないか?」
「そうですねぇ。結界が張られていますねぇ。問題は解除方法が全くわからないのと規模がでかすぎますぅ。この規模の結界なんて見た事ありませんしぃ、魔眼で凝視してようやく結界の存在に気づける程隠蔽もされてますぅ。魔界の島の規模の10倍以上のでかさと伝えればわかりますかぁ?」
10倍!?
「じゃ、これは最低でも天級クラスって事になるのか?」
「性質が違いますからなんとも言えませんがぁ規模と隠蔽の質からいって天級クラスでもおかしくないですねぇ。」
「ますますエルフの国の可能性があがったな。別にエルフじゃなくてもそれだけの魔術が使える国なら治癒の超級なんてゴロゴロ落ちててもおかしくない。」
「ですがその結界はどうしますの?天級クラスかもしれない結界を我々に破る術など...」
「とりあえずゆっくり結界の方に船を進めてみて。マルカ結界までの距離どれくらい?」
「結界まではここから1キロちょっとってところですかねぇ、え?待ってくださいジーク君!」
俺は聞くなり船を降りて水面を走る
水面を走るスキルなんか覚えても意味はないと思ってたが意味はあったな。
全身の闘気、聖気を全開
剣に集中
上級魔術を2種剣にかける
結界は光魔術だからどちらも闇でいく
そこにスキルを併用する。
「いっけええ!ハイスラッシュ!!」
剣がなにかに阻まれる
硬い!
デュランならいけるんだろうが俺では厳しいか...
いや
闇魔術が効いているのか剣が触れている部分が変色している
いける!
結界にヒビが入ってるのがわかる
けれど同時にヒビの先端から修復もしている
全魔力を使い切るつもりで変換しても修復が早くて膠着している。
「邪魔すんぞ。[邪炎・一式]」
いつのまにかペーターが俺に乗る
重いし、おまえじゃ聖気もろにダメージ食らうだろ!
聖剣にオリジナル魔術邪炎をのせる
超級の爆炎術式を収縮させそこに邪気をのせた強力な魔術
一式は基本的に腕や足に纏わせて使う近接戦闘用魔術だ
それを俺の聖剣に纏わせる
黄金に輝く聖剣が邪炎によって紫と黒に塗り替えられる
そして
結界は砕けた!
「シンディ急げ!再生時間は早そうだ!」
結界をくぐればそこにあったのは
巨大な島だった。
俺もペーターも魔力をほぼ使いなんとか結界を突破できた
大きな島
魔界の10倍では済まないかもしれない。
なんとなく南国風な島だな
ヤシの木っぽいのが陸地に見える
1度休憩したい...
しばらくぶりの陸地だ
船を陸地に近づけて全員が上陸する
すると突然索敵スキルに反応が!
「全員警戒!なにかが近づいてきている!」
「ほぉ?人の分際で我等に気付けたか。存外出来るようだな?」
遅かった...
囲まれている
数は30ちょっと
全員が筋骨隆々
黒くてでかい
毛並はフサフサ
犬耳をつけた
黒い獣人だった。
「ようこそ。我等が楽園[エデン]へ。まさか人が結界を破れるとはな。そこな鬼の力があったにしても信じられる事ではない。」
エデン?
「ここはエルフの国ではないのか?」
「エルフもいるさ。だがエルフだけではない。貴様ら人と対峙してきたこの世界のありとあらゆる亜人の住む国さ。もっとも貴様らがエルフに会う事はない、ここで死にさらせ!」
黒い獣人は俺たちに襲いかかって
こなかった。
正確にいうと阻まれていた
俺達を包むように展開された結界に
「なにをしているのベルガ?いつから貴方1人で来国者を裁く権限が与えられたのかしら。」
「フローラか!侵入者だぞ?なぜ守る!気でも触れたか!」
俺達を守ったのは銀髪の長耳
エルフだ
あの爺さんが言ってたのはこの人!
「それぞれの族長に確認せねばなりません。相手の目的もなにもわからず一方的に殺すなど許しませんよ。」
「はっ!ならばなんのための結界だ!大層な結界は人を拒むためのものだろう?その人が結界を破り侵入したのだ。生かす必要はない!」
「それは貴方の意見でしょう?そしてこの国の総意ではない。勝手な判断で動けば...我がエルフと対峙する事になると理解していて?」
「エルフの総意とも思えんがな...まあいい。ならば今夜にでも族長を集めよ。処分が決まれば我が黒狼族に回せ。その人の肉片、食らうのは我等だ!」
「それも話す必要があるでしょう。1度彼等の身柄は私が管理します。今夜連絡が入るのでお待ちなさい。」
あのエルフすげーな
あんなデカイ獣人に目の前
本当に目の前、それこそキスでも出来ちゃう近さまで詰め寄られても平気に話す
そして獣人は全員去っていった。
「野蛮だこと...まずは言わせて頂きますね。ようこそエデンへ。」
銀髪の少女はそう言った。
銀髪のエルフ
なにかと被っているのは許してください。