エルフの国へ
よろしくお願いします!
22階層レアボスフロア
入っただけでわかる。
ここのボスは強い
けれど50層のボス程ではない。
3つ首の魔獣
ケルベロスだ。
そしてそこにはレアボスのみが存在して、他の魔獣はいなかった。
これなら問題はない。
そう思っていた。
「アイスハウンドからケルベロスですかぁ、まるで違う魔獣が出現するものですねぇ。」
「なにを呑気に!マルカ?作戦を!指示して下さいませ!」
「いえいえ、指示なんてとんでもないですよぉ。皆でここで一緒にいましょう?」
は?
マルカが...
状態異常か!?
「マルカはなにかしらの状態異常をうけてるとみた。ペーター、解除を片っ端から試してくれ。その間俺とゴーとシンディで時間を稼ぐ!」
しかしゴーは動かない。
「ちっ!マルカが動かない限りゴーも...シンディ!2人で仕掛けるぞ!」
「まさか治癒士を最初に狙うとは...まだ入場したばかりですのに無粋ですこと。やりますわよ!」
「わりい!すぐに治して合流する。なんとか時間を稼いでくれ!」
あぁ頼む。そう言おうとペーターを見ると...
ーーーマルカに刺されていた
「ペーター!!」
「だ、大丈夫だ。俺ならこの程度再生できる。問題は...ゴーの野郎も敵意剥き出しだ。」
マルカの目の前にはゴーが壁となっている。
刺したのはミスリルの短剣、なんの特殊効果もない。
しかしマルカに加えてゴーが敵になると解除も容易ではない。
「シンディ!ペーターを手伝いなんとか2人を殺さずに解除するよう手伝ってくれ!」
「ジーク逆だ!俺が時間を稼いでる間にボスをやっちまえ。その方が確実だ!」
「...ここはペーターの意見の方が正しいと思いますわ。2人ですと厳しい相手ではありますが、勝算はそちらの方が高いと思いますわ。」
「いや、危ないのはそっちだ。まず最初にマルカが状態異常を受けたという点だが、俺やペーターは耐えられる可能性はあってもシンディは同じくかかる可能性がある。1人にしかデバフをかけられないとかならいいんだけどな。最悪全員がかかったら...早くに解除方法を確立しないと終わる。」
「...効果があるかはわかんねえが、いくつか結界やら浄化やら耐性魔術を全員に付与しとく。近接ならまだしも弓術がメインのシンディじゃ加減が難しい。短時間でボスを頼むぜ。」
短期決戦。
相手の能力もなにもかもが不明の中、味方を洗脳されてのこの状況は最悪だった。
そもそもどんな魔術でマルカを洗脳した?
ボスを倒せば洗脳は解けるのか?
けれど急がなければマルカも危なければパーティ全体も危ない。
速攻でカタをつける!
ケルベロスの首は3つ
それぞれが異なる属性の超級魔術を使用する。
俺の[見様見真似]でもコピーできない。
恐らくは種族限定系の魔術なのだろう
ブレスのようにも見える
広範囲の風
攻防どちらにも適用できる水
鉄壁の土
守りが厚すぎて近寄れない。
シンディの矢も全て弾かれる。
「シンディ!少し無茶をする。フォロー頼む。」
「ジークはいつも無茶しかしませんわよ?任されましたの。全力でおやりなさいな!」
頼もしい。
短期決戦なら聖気、闘気を全開放して魔術を併用しながら突破するしかない。
ボスに向かっていくと火魔術で攻撃してきた。
高威力だが範囲は狭い
「アースランサー!」
俺は得意の魔術で沢山の壁をつくる。
フロア中壁だらけだ。
これならどこにいるかわかるまい?
火では当てられないだろ?
するとボスは同じく土魔術を発動してこちらの壁を解除、同時に俺を発見するとそのまま石の槍を降らせる
「うおおおおおおおっ!!」
俺は石の槍を気にせずにボスに向かっていく
大丈夫、仲間がいるから。
「ワタクシのクラスを知っててこのような魔術を?これだから知能の無い魔獣は。マルカを操る獣風情が、容赦しませんわ!」
あいつのクラスって...なんだっけ?
そんな風に思ってると石の槍1つ1つに正確に矢が飛んでいく。
俺の進むところだけ
それもその全てに魔術が付与されている。
あいつ魔力量少なくなかったっけ?
「アースアロー、一本生み出せば流星弓により複数生まれますわ。こちらは初級魔術付与と軽めに闘気を込めただけの矢、けれど材質はミスリルでかつ放ったのがワタクシであれば超級だろうと相殺できますわ!」
相殺した破片が当たって俺の左手折れたけどな?
まあ治癒しながら向かってるからいいけど。
俺は今足と剣に闘気も聖気も集中させている
移動スピードと攻撃を弾くためだ。
それ以外は生身なのでちょっと擦れば大ダメージだ。
短期決戦なのだからこれでいい。
問題はコアがどこにあるかだ。
至近距離まで近づくと風の魔術を放たれる
ーーーそう想定していた。
真っ黒の尻尾
それがジークに向かってくる
ジークの目の前まで来ると紫の光を放つ
「ジーク!!まさか超級クラスである貴方までも操られて!?」
ジークは両腕をだらりと下げる。
「ぃーく...ジーク君!!コアは尻尾の付け根ですよぉ!!」
マルカが後ろから大声で叫んでいる。
正気に戻って?
ならばあれは1人にしか使えない魔術、もしくはスキル
けれどジークは今まさに操られたばかり
ワタクシがなんとかしなければ!
え?
...
ケルベロスが消えていく?
そこに立っていたのはジークのみ
まさか
「操られたフリ、ですのね?」
「ちょっと脱力したけどそんだけ。洗脳でおワタと思ったら効かなくて助かった。」
「超級クラスの中でも聖騎士は洗脳系スキルや魔術なんかへの耐性は強いですからぁ。それにジーク君は聖剣持ちですから抵抗力は高いと思いますよぉ。」
「だからすぐわかったってのか!つか目覚めてすぐ状況わかったな?」
「操られてても意識はありましたからぁ。魔眼でみればあれだけの魔力量ですからコアも丸わかりでしたぁ。けれど...謝らなければいけませんねぇ。」
そういってマルカは地に伏した
「おいおい!マルカは操られてただけだろ?謝る必要なんかねえぞ?」
「それはそうなんですがぁ、実は右足と右手の感覚が無くなってしまいましたぁ。」
ーーーマルカは笑顔で言った。
「洗脳された代償ってことか?」
「ちょっと違いますねぇ。実は前回の攻略時に少々無理をしましてですねぇ、魔術の回路が多少傷ついていたんですよぉ。大した事はなく、うまく扱えば問題なく魔術が使える程度だったんですがぁ先程洗脳後にいくつも同時に魔術をバンバン使用してしまってですねぇ、いくつかの回路が切れてしまいましたぁ。」
「そんな...治す方法は?」
「ここまでですと超級クラスの治癒が必要でしょうねぇ。切断してしまった回路の影響で右側半分の身体が動かせなくなりましたぁ。困りましたねぇ。」
マルカの身体をゴーが持ち上げてゴーの掌に乗せられていた。
「なら超級クラスの治癒が使える奴を探そう。心当たりは?」
「あるにはあるのですが難しいですわね。」
「あるのかよ!超級クラスって俺とペーターだけかと思ったけど?」
「この国にはいないですわよ?他国でも人族ではいませんわ。」
「人じゃねえっつうのか?」
「難しいところですわね。亜人、それも人とは犬猿の仲の[エルフ]。その王族に歴代最高の[聖女]がいるとの噂はありますわ。」
「エルフって...いるのか?」
「見た事はありませんわ。寿命は数百年、魔術に長けているものの闘気を扱えない種族とは聞いた事がありますの。」
「んじゃそいつを探そう。どっちだ?」
「ま、待って下さい!エルフの国はここから最も遠い土地ですよぉ?人嫌いなため人族から遠く離れて結界にて侵入を阻む種族ですぅ!辿り着いても会う事すら...」
「まあダメならダメで他の案も考えよう。俺が覚えてもいいわけだしな?お?超級の治癒魔術さえわかればいいんじゃね?」
「それこそ無理ですわ。この国に超級の治癒関係の魔術書もありませんし、使用しているのを見なければ習得もできないでしょう?」
「んじゃやっぱ行くかエルフの国に。」
「いいんですか?ダンジョン攻略が遅れますよぉ?」
「いやだって身体動かせないとマルカがゴーに任せてばっかになってガンガン太るぞ?」
「そんな事はないですよぉ!」
エルフスキー