聖剣と魔剣と
宜しくお願いします!
王都までは10日程で辿り着いた。
簡単に言うがとんでもない事だ。
主に俺の尻が。
10日を馬車で大半を過ごす
それはとんでもない苦行だった。
「だから一緒に走れば良かったのに。いつもと違う景色で気持ちよかったよ?」
「馬車と同じスピードで半日走り続けるなんて選択肢俺にはないよ。つうかお前位だよ!」
「そうかな?普通じゃない?」
「普通は馬車に乗ってるもんだ。護衛の冒険者の人達の呆れっぷりを見てないからそう言えるんだよ。」
そうかなぁとまだ言うデュラン
こいつには全く常識がないな。
3台もの馬車が来てそれに追従する5歳児
冒険者より早く魔獣の接近に気付き投擲で片付ける5歳児
魔獣の解体から調理までこなす5歳児
5歳児ってなんだろう...
「それにしてもここが王都ピースか。でっかいねぇ!人も沢山いるし、匂いも凄い。なんていうかサマラとは全然違うね!」
「そりゃ辺境のちっこい村と王都じゃ違うだろ。そんなに周りばっかジロジロ見てると田舎者だと思われるぞ。大人しく馬車に戻れ。」
ようやく王都まできたんだ。
馬車で少しは落ち着けばいいのに。
「デュラン様、ジーク様。まずは王城にて王と謁見して頂く予定になっております。只今早馬を走らせておりますので、後に続く形でこのまま向かおうと思います。デュラン様は王城にてクラスの確認をする必要もございますので今は馬車にてお休み下さい。」
そう言ってきたのは今回俺らを連れて来る一団の中で最も老いた老人
ギルバートさんだ。
見た目は執事。
職も王の執事だそうだ。
とても気遣いの出来る人で
デュランがなにかする度にフォローしていた。
解体をしだしたら隣にナイフを置いたり
調理をしだしたら隣に調味料を置いたり
石を投擲しだしたら槍を渡したり...
5歳児にする事でも無い気はするけど。
「わかりました。とっても大きな街なんでついつい見入ってしまいました。馬車に戻りますね。」
デュランは俺が言っても絶対聞かないが
ギルバートさんの言うことは聞く。
俺もお前より年上なんだよ?
肉体的には数週間
精神的には31年位。
王様との謁見はあっさりしたものだった。
なんか褒め称えられて、色々渡されて
これからに期待している、みたいな。
んで本命のクラス確認なんだけど
本来超級以上のクラスになるには条件があるそうだ。
超級に至るまでの経験値は勿論だけど
なりたいクラスを申告して、それに見合った試練を与えられる
試練をクリアすれば晴れて超級になれるんだと。
教会か、王宮なんかでその試練を確認は出来るらしい。
神託を受ける魔導具でもあるんだろうか?
けれど例外はいくつかある。
そのうちの1つがデュランだ。
デュランは超級のクラスを生まれつき持っている。
けれどクラスは本人でさえなにかわからない。
俺も生まれつき上級クラスだったが、それは自分で騎士だってすぐにわかった。
見てる感じ魔術は全く使えないし怪力だし
近接戦闘系のクラスなんじゃないかな?
そんな風に思ってたけど答えは全く違った。
「おぉ、この国始まって以来のクラスだ...なんと素晴らしい!余の代でこのような幸運に恵まれるとは!...デュラン殿。貴公のクラスは超級の中でも最強と呼ばれる[勇者]だ。」
勇者
それは超級の中でも珍しいエクストラクラス
世界でたった1人しかなれないクラスで
同時に2人は存在し得ない
記録では勇者にもタイプがいくつもあったそうで
魔術がメインの勇者
弓術がメインの勇者
肉弾戦がメインの勇者
勇者だから何が得意とかは決まってないが
必ず1つの事に特化しておりその点だけは最強なんだとか。
デュランは近接戦なら多分誰にも負けないだろう。
「へぇ、僕が勇者か。実感湧かないな。でも1つの事って...僕の場合は剣だね。普段は力を入れると壊れちゃうから素手だったんだけど。」
剣の勇者か。
お前が剣使ってんのは見た事ないな。
「ならばこの国に伝わる剣をいくつか見せようではないか。好きな物を選ぶとよい」
「僕だけ?生まれつき上級のクラスを持ってて僕と同格の戦闘センスを持つジークはダメなの?」
こいつ!
俺を持ち上げやがって!
あとその顎タプタプ系のおじさんは一応王様だからな?
もうちょい言葉使いなんとかしろよ!
「ふむ。ならばデュラン殿が選び終わった後にジーク殿もお選びになるがいい。期待しておるぞ?」
いいんだ?
めっちゃ笑顔だけど、ギルバートさんが凄い汗かいてるよ?
大丈夫?
「あ、それなら僕はもうこれにしたからジークも選びなよ。考え過ぎず直感でいいと思うよ。」
「おまっもうちょい選べよ。お前がいいならそれでも良いんだけど、こんな機会2度とないぞ?」
「うーん、でもこの剣以外は僕の闘気に耐えられないからなぁ。」
そういうのわかるんだ?
ま、いっか。
デュランだし。
俺はマジマジと残った11本の剣を見る
どれもカッチョいいし高そうだ
剣なんて村にあるのは錆びついたのばっかだったしな
ん?
これ一本だけデザインが...レイピアってんだっけ?
フェンシングとかで使う感じの細い長剣
「これにします。」
俺の場合は防具もつけるし、この身体じゃ重い剣より軽くて使い易そうな方がいいだろう。
「ほう、デュラン殿は納得の選択だが。ジーク殿は珍しい選択をしたな。」
え?
まずった?
ハズレ?
「まずデュラン殿の選んだ剣はこの12本の中で唯一の聖剣だ。その剣を握る事が出来るのは持主ただ1人の専用の聖剣。今迄使用出来る者がいなかったためにどのような能力があるかは不明だがここにある剣の中で1番強力なのは間違いない。」
専用の聖剣か。
カッチョいいな!
うっすら輝いてるようにも見える
「うん。この剣随分とプライドが高いように見えるね。持主としては認めて貰えたけどなかなか使わせてくれなさそうだ。」
「ん?なに?いつから剣と対話出来るようになったわけ?」
「他のとは出来ないと思うけど、この剣握ってると意思みたいのが少し伝わってくるんだよ。多分ジーク並に捻くれ者だね。」
「じゃあとっても素直でいい子じゃないか。」
文句ばっか言うなよ
聖剣なんて立派なもん貰って。
「ジーク殿の剣は切る、というよりは突くに特化した魔剣だな。ダンジョンの深層で手に入った物だ。材質はミスリルで魔術との相性がいい。滅多に刃こぼれも折れもせん。そして最大の特徴はその緑の魔石だ。」
ん?
あぁ柄の1番下に緑の宝石的なのが埋め込まれてる
これ魔石なんだ。
「その剣が仮に折れたとしても魔石が無事な限り剣は再生する。あとはその魔石に3つの攻撃魔術が刻印されておる。初級、中級、上級の3つだな。」
おぉー!
すげーじゃん!
ハズレじゃないよ!
「3つの魔術については後でギルに説明させるとするが、この形状の剣は余も他では見た事もない。なんとも扱いずらそうな剣のように見えるが本当によいのか?」
「えぇ。この魔剣でお願いします。非常に気に入りました。」
なんたってお手入れ要らずだ。
最高じゃないか!
ーーー王様との謁見も無事終わり
いよいよ学院に向かっていた。
学院に着くとそこには沢山の人だかりができていた。
レイピア結構すきだったりします。