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勇者vs魔王

よろしくお願いします。

突如現れた魔王


絶対的な強さを誇ってきたデュランの片腕を奪っていった。


俺にはまだ、現実が理解出来ていなかった。


後退する事は出来ない。


扉などどこにもない。


心のどこかでデュランが負けるはずがない、そう思っていたのかもしれない...










「それでバトラーさん。なんで突然こんな所にきたんだ?魔王ともなれば忙しいだろう?」


「またまた。もうわかってるでしょ?僕の狙いはそこの勇者くんさ。その若さで歴代最高レベルにまで近づき、蓄積された力を考えるとねぇ。このダンジョンのコアまで破壊されちゃったら、ねえ?多分クラスアップするからね。」


「天級クラスが1人いるだけじゃあ冥界には対抗できないんじゃないか?五大魔王と言ったろう?天級クラスが5人もいればいくらデュランが天級になっても勝てないだろう?」


「総力で言ったら圧倒的に有利なのは間違いないけどね、冥界は一枚岩ではないんだよ。そうだな、君達でいうところの戦争中って言えばわかるかな?魔王を中心とした国が5つあってそれぞれが協力する事はない。5対1なら問題なくても1対1なら?そして1人でも倒せば成長する。いつか脅威になる可能性はあるんだ。危険な可能性は小さな内に摘まないとね?」


「ならどうやってダンジョンに?冥界からは人界にはすぐには手を出せないって聞いたんだけどな。」


「そうだね。その通りだよ。だからこのダンジョンを作成した時にレアボスになるように配下をいくつかダンジョンボスになるように設置した。おかげで記憶も自我もなくなったはずなんだけど、そいつを起点に跳べるように細工をしたんだ。けどそこの赤鬼が裏切ってね?」


ペーターの赤鬼が裏切った?


「本来なら赤鬼が開放されると僕に伝わり、そのままそいつとその周辺の生命を生贄にして僕を転移させるはずだったんだけど。あろうことかその赤鬼、自我を取り戻してさ。拒絶したんだ。」


「拒絶...」


「そう、拒絶。だから飛べなかったんだよ。代わりにダンジョンの成長を犠牲にして、コアの所までの転移をしたわけ。だからもうこのダンジョンは放置してても問題ないし、魔獣もそのうち消えるさ。あ、勿論僕は冥界には戻れても外にはまだ出られないから安心してね?」


「そうまでして、ダンジョンの成長を代価にしてまで来たのはデュランを殺すためか。」


「そうだよ?赤鬼開放するまでは赤鬼を通して様子を見れたからね。勇者がクラスアップ間近って事を知れたのさ。あぁ、君達の名前を知れたのもそれのおかげだよ。」


「じゃぁ、あの時レアボスとしての赤鬼に勝てたのは?」


「言わせないで欲しかったけどな。当然制限をかけたのさ。赤鬼を倒してくれないと勇者の様子が見れないだろう?」


俺たちはこいつの手のひらで転がされただけだったのか。


「そろそろ腕の回復も済んだろう?なら、やろうか?」


「ジークにペーター。全力で戦う...聖剣ありの聖気も使っての戦闘だ。悪いんだけど、巻き込まない保証はない。できればペーターには赤鬼開放して自我を保ちつつジークを守って欲しい。多分そうしないと余波で2人とも...後は頼んだよ!」


そう言ってデュランは全身を黄金の光に包んでバトラーに向かっていった。


ペーターはすぐさま赤鬼開放して端までかける


俺には2人の姿も見えなければ衝撃波にも耐えられない


ただのお荷物だった...








「想像以上だ!先に片腕を捥いで正解だったね。」


「なにを!今ならわかるよ、君はまだ力を隠してるだろう?」


「心外だなぁ。僕だって制限なしでやりたいけど、全力だとこのダンジョンでさえ保たないからね。それに、時間の制限があってね。こっちにも長く留まれないんだ。力を開放すればそれが早まる。」


「いい事を聞いたよ。なら時間稼ぎしてたら消えてくれるんだろう?」


「消える前に殺すさ。そこまで間抜けじゃぁないよ。」


全力のデュランは初めて見る。


凄まじい力だった。


この広いフロアが余波で崩れていく。


時間稼ぎ...


あのバトラーとデュランの間に入れば足手まといにしかならない。


俺にはなにも出来やしない...


戦いは見えないがデュランの出血箇所が増えているのはわかる


あれだけの強さを持ってしても勝てない。


一体どうすれば...


「ジーク、悪い。赤鬼の衝動は以前より大分ましだがぁ、そろそろ限界が近い。限界到達前になにか仕掛けてえが案はあるか?」


「ない、な。お前の強さでもあれには追いつけないし触れる前に殺される。そしてそれを守ろうとしてデュランに隙が生まれる。俺たちはこの場では無力だ。」


「わかってるが、このまま見てても死ぬんだぜ?なにか一瞬だけでもあの魔王の気を逸らす事はできねえか?」


一瞬だけでも...


周りを見渡す。


なにか、なにかないか?


あれは...


「ペーター。あそこに見える虹色の大きな魔石みたいのはなんだと思う?」


「ありゃぁ...なんだ?」


「多分、だけどコアじゃないか?」


「コア?だが魔王はコアを犠牲にしてって言ったろう?」


「見ると少しづつ小さくなっている。あれの力を利用して転移してるのは間違いないだろうがまだ生きてるって事だろう。」


「だからなんだよ!時間がねえ、もういつ俺の意識が飛ぶかもわかんねえんだ。簡潔にいえ!」


「あのコアを破壊しよう。それで魔王は冥界に戻る。デュランが引きつけてる間に俺とお前のどっちでもいいからあれを破壊。それでハッピーエンドだ。」


「なるほどな。距離があいつらを越えて行かなければならないのが厄介だが...成功すれば全て収まるな!」


「そうだ。今から簡潔に作戦を説明する。なんとか意識を保てよ。」


「意地でももたせるさ。なんとかしてやろうぜ!」


俺たちは希望を持ってこの作戦に挑んだ。


わかってなかったんだ。


目の前の災厄の力さえ正確に測る事もできないのだから。











「いくぞ。ペーター、守りに回す闘気は全て機動力に回せ!そして俺を抱えろ。奴がこっちに来たら俺を全力で投げろ!それだけだ!」


「どっちが死んでも恨みっこなしだぜ?やんぞ!」


ペーターは駆け出した。


猛スピードで。


まるでデュランに乗ってるようだ。


「なるほど。存外頭がまわるんだね、ジークは。けどさせると思うかい?」


魔王がこちらの目を向ける


けれど間にデュランが立つ。


「そうさ!ジークは頭が良いんだ。そして僕が君の相手をしているんだ、行かせないよ。」


「君はもうわかってるだろう?実力の開きを。僕を止められるとでも?」


「止めるさ。死んでも止める。だって僕は勇者なんだから!」


「愚かな子供だ。勇者などただのクラスだろう?君が何を成すかだ。」


「なら僕は君を止める。それが僕の全てをかけても成したい事だよ!」


「本当に愚かだね。救えないよ。」


魔王はローブを脱いだ。


すると俺にもわかるほどの魔力がフロアを駆け巡る。


これが...本当の魔王の力!


「このローブはね。力を抑えるものなんだ。天級の術式が編み込まれていてね。そうだなざっとレベルを200程抑えてくれるんだよ。」


言うなり一撃でデュランを弾き飛ばす。


そして一瞬でペーターに追いつくとペーターを弾き飛ばす。


俺は最後にペーターに投げられた。


「アースランサァアアアアアア!」


魔力を限界まで練りこんでいた。


ペーターに抱えられている時からずっと


それでも盾になるなんて思っちゃいない。


目くらましだ。


投げられた位置から大量の土の柱でコアを中心に覆う


何重にも覆う土の柱で位置はわからないだろう?


俺だけがわかる隙間からコアに近付けばいい!


「無駄だよ。」


空に浮かぶ魔王が手を振ると全ての土の柱は土に戻った。


そしてコアを目の前にして


魔王が眼前にいた。


「面白い魔術の使い方をする。けれど悲しいね、実力が違いすぎる。無力だよ、君は。」


そういって俺に微笑む


少年のような顔つき


蒼白い肌


ようやく目を合わせたと同時に死を覚悟した。


苦し紛れにレイピアの全魔術を開放して攻撃しようとするも、一瞬でレイピアは砕けた。


本当に終わった...


そう思った時だった。


すると突風が来て、魔王が消えた。


いや、魔王が吹き飛ばされた。


「言ったろう?僕は君を止めるって!ジーク、今だよ!」


「デュラン!頼んだ!」


俺は振り返らずにコアまで走るとコアを破壊した。


コアは先程の1/3程縮んでいた


残った魔力を全て込める


「アースランサー!!」


コアは砕け、虹色の光が溢れ出す。


やった...


これで全て終わる!











「やってくれたね。まあいいさ、勇者は殺せたんだ。目的は果たせたとも。それに収穫はあった、2度と勇者は生まれないよ。」


見ると魔王が透けていた。


その傍らに...デュランが倒れていた


「デュラン!」


「全生命力を聖気に変換したんだろうね。そしてそれを一点集中で足に、その後激突時に剣に集中させた。見事なもんだよ。これが成長していたら間違いなく脅威になってたさ。」


「デュラン!起きろよ!おい!起きろよ!」


「無駄だよ。コアを諦めて勇者殺しに専念したからね。君を殺せなかったのは残念だけど、些細な事さ。勇者のクラスは吸収した。もう2度と勇者は現れないさ。」


「どう言う事だ...答えろ!」


「あぁ。答えてやるとも。そこの勇者のクラスを丸ごと奪ったのさ。無理だけど、仮にそこのデュランが生き延びても勇者ではない。これで...あぁ素晴らしい!力を相当溜め込んでいたんだね。予想以上だ!ここ数百年も停滞していた自分のレベルが向上していくのがわかる!超級でここまでの力を持つなんて流石はエクストラクラス。唯一人類で天級に至れるはずだったクラスなだけはあるよ!ははっ、最高の気分だ!!」


俺はデュランに治癒の魔術をかけ続ける。


ダメだ!


魔力を使いすぎた...こんな時に。


「ペーター!寝てる場合じゃない!こっちにきてくれ!!」


「赤鬼の生命力は凄いからね。生きてるとは思うけど闇魔術も併用したから数日は起きれないと思うよ?その勇者は死ぬ。それでおしまいさ。あぁ、残念だ。もう戻らなければいけないなんて。」


「バトラー...お前は必ず俺が殺す!待っていろ!」


「楽しみに待ってるよ。冥界でね。」


そう言ってバトラーは消えた。













俺はデュランを抱えてペーターの所に向かう。


「...ジーク、剣を、持ってきて...」


「目が覚めたのか?待ってろ。すぐに治すからな。」


デュランは首を振り俺の手を掴む


「いい、んだ。それよりも早く剣をここに。」


「何を言ってるんだ!剣なんて!」


「たの...むよ。親友の最後の頼みだ。もう歩けないから...」


デュランの腰から下は消えていた。


「なんで...」


「お願い...ジーク。僕の唯一の親友だろ?」


わかったと伝えて聖剣をデュランの前の床に刺す。


「ありがとう...これから僕の魂をこの剣に込める。きっと僕が死ねば勇者のクラスの中に戻ろうとするはずさ...僕はあんなやつの力にはならない。」


「聖剣にそんな力が?」


「聖剣ダルザール。元は太古の剣聖の剣さ。ダルザールは死の間際に自身の魂を剣に捧げた。そうしてこの剣は真の聖剣になったって話しさ。」


デュランは聖剣の中心に触れた。


足元から光の粒子になって聖剣に吸い込まれていく。


「ジーク?君は人類で最も強い。強くなれる存在さ。僕なんかよりも遥かに、ね。僕の予測では本来同格以下なら必ず未来が見えるはずなんだ。けど、君だけは見れない。君だけが僕の未来予測を越えて動ける唯一の人類さ。」


「そんなの、なんの力になる!こうして友人1人守れず。守られて、挙句に殺してしまう最低の男だ!」


「ジークは自覚が足りないだけだよ...昔からそうだったね。あぁ、もう時間がないや。最後に一言だけ。」


「あぁ!なんだ?」


「今世も楽しかったよ○○○。また来世で会おうジーク。」


え?


「ま、まて!今なんて言ったんだ!答えろよ!ダメだ、まだ消えるな!死ぬなよ、デュラン!!」


デュランはいつものように笑って


ーーーそのまま消えていった。


聖剣と友人を残して。

少し駆け足になりましたがようやくここまで来れました。


これにて一区切りつきました。


ここからジークの物語が始まります。

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