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激闘の果てに

宜しくお願いします!

ボスフロアに入るなり速攻でしかける


「アースランサー!」


牛鬼や青鬼を飛び越えて赤鬼に直接アタックだ!


ん?おかしい...


牛も青も俺が赤鬼に近づいてるのに反応せずに前進してる...


舐めやがって!


「舐めプしてて負ける事程ダサい事はないってなぁ!」


赤鬼に渾身の突きをいれる


けれどレイピアは刺さらなかった。


躱したのでも、硬かったわけでもない


二本指にて抑えられていた


「ありえませんわ!ジークの剣筋を見切った...!?」


「シンディさんは目の前に集中!ゴー君は10体のゴーレムを作成!急いで下さい!」


マルカは内心思っていた


想定が甘すぎた、と


全滅がしてしまう...と


けれどやれる事はやらなければ死ぬに死にきれない。


マルカは指示を出しながらジークと赤鬼を魔眼にて見つめていた。









ジークはそのまま投げ飛ばされてマルカ達とは反対方向の端まで来ていた。


分断されたが好都合


そう思っていた。


赤鬼はジークが空中で体制を整えて壁に着地した所をみて笑っていた


嬉しそうにすら見える


「お前もバトルジャンキーか。そういうのはあいつで間に合ってるんでね!」


俺は全力で突進してレイピアにインビジブルエアロを巻く


一撃より手数で勝負!


幸い赤鬼のサイズは他の鬼より小さい。


3m程でジークの3倍程度あるがそれでも今までの敵に比べれば大したことはない。


けれどこちらの攻撃前に赤鬼は動いた


ジークの真横に移動して殴りかかる


「はやっ!ぐぅっ!!」


再び吹き飛ばされ壁に激突


血を吐きながらガードした左手を見ると明らかに折れている


マルカの結界がなければ片腕は千切れていたかもしれない。


鉄鋼は砕け、片腕にレイピアを構えてジークは立ち上がる


「速すぎだろ、レイピアの魔術一回無駄にしちまったじゃねえか!」


そう言って覚えたてのスキルを使用する。


「闘気変換!ははっ、確かにこれは覚えて良かった。無ければ詰んでたな。」


ジークは赤鬼へと向かう


3度目の特攻を仕掛けに










「くっ!牛鬼が速すぎますの!まるで当たりませんわ!」


「気にせず打ち続けて下さい。当たらずとも警戒は続けさせられますぅ。ゴーレム達の壁に近づけさせないで下さい!」


シンディはクラスアップの恩恵で連射速度が向上している。


ラッキーペンダントの効果もあり命中率も高いはず


けれど当たらない。


牛鬼の移動速度が速すぎるのだ。


既にシルバーゴーレムは2体が破損、1体がコアを破壊されている。


大してあちらは被害なし、ゴー君が青鬼を抑えているが、1対1なら勝てそうだが数が多すぎる。


ジークの結界を維持しつつゴーにも結界を張っている。


クラスアップの恩恵か、複数に魔術の操作能力が向上していた。


あちらのフォローも入れたいがマルカのボーガンでは傷1つつかない。


ジークの戦況も悪い。


まだ戦闘開始から1分程度


このままでは全滅まで10分保たないと予測する


マルカは思考を止めない


ここで死にたくはないのだから。








ジークは出し惜しみせずに魔力をガンガン闘気へと変換していく。


ようやく赤鬼と対等の速度で戦えていた。


レイピアにも闘気を纏わせ、ミスリルの剣は赤鬼の肌を切り裂く。


けれども即再生される上に、赤鬼の一撃は重い


ガードすれば折れてしまう


かといって近距離でかわし続けもできない


ヒットアンドアウェイで一撃与えればすぐに引く


ボスは魔力を使っても回復しつづけるし


再生能力もある。


一見無意味に見える行動


けれど今はまだ続けるしかない。


自身の魔力を消費しつづけ、赤鬼の行動パターンを見切ろうとしていたのだ。


一撃で倒すために。


ジークの狙いはレイピアの中級と上級の重ねがけ


エアストームを集中させエアスラッシュで放つ


それで一撃でコアを破壊するしかないと思っていた。


赤鬼を倒した後の事は考えない。


とにかく全力でこいつを倒す。


けれど当たらなければ意味がない、今はとにかく回避パターンを見極めるために仕掛け続ける


一撃貰ったら終わるデスゲームを。










シンディは焦っていた。


一撃も当たらない。


以前よりも遥かに速く、強く放ってはいるもののその全てが躱される


壁となって耐えているシルバーゴーレムは少しづつ数を減らす


既に3体が消え、破損も4体と長くは保たない事は明白だ。


本来でいえばゴーの戦闘もフォローしたかった。


けれど余裕がない。


なにがMVPだ。


何が模擬戦3位だ。


ここではなんの役にも立たない。


シンディの焦り増すばかりだった。


「シンディさん。ちょっと無茶をしますよぉ、突然ですが合わせて下さいねぇ。」


「この状況は打開できるならばなんでもしますわ!おやりなさ...これは!」


「長くは保ちません。ですがシンディさんを信じますぅ、MVPですからねぇ!」


マルカは笑う


この地獄絵図でも希望は捨てていないのだ。


「ふふっ本当に強い子ですわね。ワタクシも見習わないといけませんわ!」


シンディが再び矢を放つ


そしてその矢は牛鬼を初めて捉えたのだ。


それもコアを見事に貫いていた。


「やりましたわ!見えますの!これで一気に...マルカ!貴女その姿は一体...」


シンディが振り返るとマルカは目と鼻から出血していた。


「気にせず打ち続けて下さい!そう長くは保ちませんからぁ。」


マルカがした事は他の2人と同様身体強化の魔術を使っただけ。


けれどシンディに施したのは少し違う


目に強化を集中させたのだ。


学院長がダブルアクセルの効果時間を短縮し、代わりに効果を上昇させたように


マルカも魔術を操作して集中させた。


他の2人にも魔術を継続しながらだ。


シンディはすぐに前方を見据えて矢を放ち続けた


マルカは止めても止まらない。


ならばすぐに倒して楽にさせなければと思ったのだ。


けれどマルカの出血は増すばかり


魔力の消耗も激しいが元々の魔力量に加えてクラスアップによって上昇した魔力量はまだ耐えられる


けれど身体が耐えられない。


それもわかっていた。


魔術を3つ同時使用するというのは両手と頭で同時に別作業をするようなもの。


難易度の低い初級だから発動は出来たものの、魔術操作によって自身のキャパを超えるのは明白だった。


全身が裂ける


周囲が自身の血液により赤く染まる


「なにをしてるかわからねえが、やめねえってんなら声かけろよ!お前が死んだら誰がこの状況に指示出すんだよ!」


ペーターはライトヒールにてマルカを癒す


けれど間に合わない、初級の治癒の速度とマルカを破壊する速度では圧倒的な差があった。


それでもしないよりは遥かに楽になる。


「もう少しだ!大丈夫、マルカなら耐えられるから!見ろよ?もう牛鬼は1体だけだぞ?ゴーレムが囲んでシンディがすぐに片すから...おい!」


マルカが大きく咳をすると大量に吐血する。


「だい、じょうぶですよぉ。心配性ですねぇ。シンディさんはぁつよ、い、ですからぁ。」


マルカは笑って答える。


ペーターは泣きそうになるも必死で堪える


これ程までに流血しているのに笑っているんだ


俺を心配させないために、なら男の俺が泣いてどうするか


そう考えていた


8歳の孤児院の男子はせめて自身にもっと力があればと悔むも、全力で癒し続ける


少しでも傷を広げないように...











ゴーが10体もの青鬼を抑えられていたのは偶然だった。


折角手に入れたサイクロプスの石剣だが、青鬼の硬い皮膚と闘気では役に立たない


ゴーの攻撃は通るも、相手の攻撃も若干ではあるが通る


10体に囲まれていては数分でゴーは砕かれるはずだった。


それが何故耐えているか


それは青鬼が遊んでいたからに過ぎない。


奴らはゴーと1対1で仕掛け続け


残りは囲んだまま何もしなかった。


数分をかけようやく1体のコアを破壊するも


ゴーもまた片腕を失っていた。


魔力消費は激しいが再生するしかない。


再生すると自身の魔力が2割程度になったことに気づいた。


次に再生すればゴーは魔力回復まで停止する。


2体目の青鬼は笑いながら向かってきた。


ゴーのコアが砕かれるまでそう時間はないだろう。


ゴー自身、そう感じていた。








ジークはタイミングを見てレイピアの魔術を同時に発動させる。


自身の体力的にも、時間的にも、もう後がなかったのもあった。


けれど十分に見極めた、はずだった。


魔術を発動した瞬間に目の前から赤鬼が消えるまでは。


「ぐうっ!...なにをしたんだお前。手加減してたって感じでもなかったろ?」


赤鬼は笑う


口で答えはしないものの、答えを見せてきた


「闘気...変換...そうか。青鬼も牛鬼もできるんだ。お前が出来ないはずはなかったな。これはしくった。」


自身の身体能力だけで全力のジークを圧倒し続けてきたのだ。


ジークは3度目になる壁の激突で片足を骨折


これで2箇所の骨折となる。


既に切り札を使い後がないジークは笑っていた。


「多分あいつならこんなに追い詰められたりなんかしないんだけどな。まぁ俺だし仕方ないだろ?」


ここにはいない友の姿を思い浮かべる


アイツならどうしたか


多分もう決着はとうについている


圧勝だ。


そんで言うんだ。


楽しかった、てな。


「俺はやっぱ楽しめないわ。痛いし、辛い。けどま負けたらお終いだかんな。もうちょい付き合えよ!」


ジークは片足で進む


止まる事は許されないのだと身体に張った結界が、強化が、まだ残っているのだから。











「マルカ!目の強化を解除して下さいまし!」


シンディは牛鬼を全て殲滅した。


ゴーレムは全てダメージを負っているが4体が残っている。


両足を砕かれた1体を除き3体がゴーの下に向かう。


マルカはシンディへの強化を解除した。


「マルカ!安心しろ!俺が必ず治す。だからもう少し頑張ってくれ。」


ペーターは全力で治癒を続ける


ようやく傷が癒せる


自身の魔術と併用して回復薬もふりかける


しかし...流れた血が多すぎる


「あり、がとぉぺ、たぁ。しん、でぃさんはじぃくくの、えん、を。」


「わかりましたわ。あんな奴すぐに射抜いてきますの!ですからもう少しだけ、もう少しだけですわ!耐えて下さいまし!」


シンディはジークの下へ走る


決して振り返らない。


きっと頑固なあの娘は戦闘が終わるまで、他の魔術を止めようとはしないのだから。










シンディがジークの元へ到着した時


ジークは赤鬼に特攻していた。


片足は折れており、残った片足に闘気を集中させ一直線に跳んでいた。


「なんて無茶を!このパーティは馬鹿しかしないんですの!?」


シンディはすぐさま弓を構える


自身も闘気変換して矢に集中させる


同時に風魔術にて補強する。


一発しか放てない切り札だ。


しかし2人とも速すぎた、シンディは弓を引けないでいた。


ジークは一直線に赤鬼を捉えるとそれを赤鬼が躱す


赤鬼は笑いながらジークにトドメを仕掛ける


「待ってたよ。この瞬間を!」


ジークも笑う。


「全魔力闘気変換!闘気一点集中!」


全魔力を片足に注ぎ上へ跳ぶ


赤鬼の攻撃をかわした瞬間に剣を構える


「闘気一点集中!いけよ、飛斬!!」


そう、かつて友が自身に放った技


相手トドメの一撃を仕掛けた後にこれでし返す


それがジークの狙いだった。


けれど赤鬼はこの距離でも身体を捻り、コアを外す。


半身が切り裂かれるも、笑みは止まらない


「...ちっ。やれよ!シンディ!!」


「その願い承りましたわ。」


シンディの矢が赤鬼のコアを貫く。


赤鬼は何起こったか理解しないまま消滅した。










「やったぞ!ジークとシンディがボスを倒したぞ!これで!」


青鬼も魔石へと変換していた。


赤鬼の消滅と共に消えていったのだ。


もしかしたら赤鬼のスキルで牛鬼も青鬼も作成されていたのかもしれない。


「全部解いていい!マルカ!!」


マルカの意識は既にない。


けれど魔術は行使したままだ。


「なんで...どうすれば!!」


そこにシンディが駆けつける


「本当にバカな女ですこと。意識を失っても尚も魔術を行使するなんどうやったら...ゴー!今すぐジークを連れて来なさい!」


ゴーがジークを抱えて持ってくる


「ジーク。貴方ならこの状況どうしますの?」


「やばいな...なんで俺に聞く?」


「ふざけてる場合ではないですのよ?今すぐ心当たりがあるなら試しなさいな!このままじゃマルカが...」


「あるけど、怒んなよ?」


「怒りませんわ!今すぐやりなさいな。」


「んじゃゴーとシンディそこに座れ。」


ゴーとシンディはジークの目の前まで来て座る


「んで俺に残った魔力全部おくれ。全部だぞ?」


「失敗したら許しませんわ。後の事任せましたわよ、ペーター」


「あぁ、魔術さえやめさせればもっと回復スピードは上がるはずだ。任せろ!」


「んじゃ送れよ!いくぞ?マジックデストラクション!!」


ゴーとシンディは気絶した。


俺が必要魔力のリソースをこの2人に変えたからだ。


その間に送られた魔力は俺の物


「い、いまのは?」


「マジックデストラクション。俺が自分で習得した数少ない魔術だ。触れた魔術を解除する優れものだけど、覚えたら使い所が全然なくて困ってた。」


アースランサーと一緒に覚えた魔術


マジックデストラクション


触れた魔術を解除する事ができるが消費魔力の高さと触れなければいけないというリスクがあり


覚えたはいいものの使い道がなかった魔術


「んで回復間に合うか?」


「間に合わせるさ、絶対に!」


「根性論とか気持ち的な観測はいらない。このペースでお前の魔力が保つのかとマルカが保つのか答えてくれ。」


「...どっちも厳しい。けど!全力で「いやわかったわ、落ち着け」...なにかあんのか?」


「ないけど、これから覚える。そのライトヒールの使い方、コツを教えろ。」


「おまっ!そんな簡単に魔術を覚えられるわけないだろうが!」


「いいから教えろ、ては休ませるなよ?そのためにあいつらの魔力全部奪ったんだから。」


「そもそも治癒士でないお前が光魔術の適性あんのかよ?」


「あるから言ってんだろうが。いいからはよ教えろよ。マルカ間に合わねえぞ?」


「...これでお前が使えなかったら一生恨むぞ。教えるのはライトヒール、これしか俺は知らん。手から癒しの光を出すイメージ、魔力を光に変えるイメージ、温かい光のイメージ、魔力で傷を塞ぐイメージ、人によってイメージは違うがこんな感じのイメージが多いってマルカが言ってた。」


「お前のイメージは?」


「俺のイメージは...温かい光が身体を巡るイメージだ。」


「もっと詳しく。」


「自分の全身を温かい光が覆う。その光は癒しの光、自身の身体を巡り手に移動する、その手を当てたところから光が溢れ出すイメージだ。」


「おけ、こんな感じか?ライトヒール!」


ジークはライトヒールを完成させた。


それもペーターよりも強い癒しの力があった。


「おまっ!無茶苦茶だな...」


「出来なきゃ恨むつったくせに、成功しても文句言うのかよ。」


「文句位は言わせろよ!俺が何日練習したか聞きたいか?」


「天才ですから。」


「帰ったら一発殴らせろ!」


「いいけど殴られるのお前だよ?」


ジークのライトヒール加わった事でマルカの傷は塞がった。


全員見事に魔力切れを起こした事でそのまま眠りについた。


マルカは一命を取り留めた。


2人の懸命な治療のおかげで。










次に目覚めたのは丸一日経ってからだった。

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