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01 おっさん、女性に拉致され異世界へ

 

 おれの名前は、佐藤太郎30歳のニートだ。職歴もゼロで友達もゼロ。もちろん彼女なんていない。



 そんなおれの趣味は、ネット。

 ある日偶然、そこの某掲示板で異世界に行く方法というのを見つけた。


 エレベーターを使って異世界へ行くといった、どこにでもありふれた都市伝説だ。


「異世界か。おれも、行けるかな」


 暗い自室の片隅でカタカタとネットサーフィンをする人生には正直飽きていた。

 そのせいか、その後の行動は驚くべきほど早かったのを覚えている。


 パジャマから外行きの服へと着替え、玄関に走っていく。外行きの服といっても上下柄の違うジャージだ。



 玄関に着いて、ドアを開けると雨が降っていたし、久しぶりに外に出る息子を見てお母さんは喜んでいたので、その日の事は強く記憶している。



 母に異世界へ行ってくると言ったら、笑われたよ。

 まぁ、母以外の誰しもが異世界へ行けるなんて思わないだろう。


 実は、おれもその一人だった。


 どこぞのYouTuberがよく企画でやっているのをネットで見てたけど、失敗してたから。



 だから本当はおれも、エレベーターで異世界に行けるなんて思ってなかったんだ―――――――――――――




 外へ出たおれは、分かりきった答えを確かめるために、近所で出入りの少ないビルを実験場所に決め、掲示板に書かれていた手順通りにエレベーターに乗って動かす。




 〈ガチャン!〉

 エレベーターが閉まる音だ。



「確か、この階で白い服を着た女が入ってくるんだよな」


 言葉とは裏腹に、まさか入ってくるわけないだろう、とエレベーターの開閉扉の前に待ち構える。





 〈ガチャン!〉

 しかし、俺の思惑は少し外れることになる。

 エレベーターの扉が開くと、赤い服を着た女が立っていたからだ。



 一瞬、心臓が飛び出るほどの衝撃を受けて後退りをしたが服の色を確認すると呼吸が元に戻った。




「赤色の服‥ やっぱり異世界なんて行けないんだ」

 分かってはいたが、現実を突きつけられると涙が出てくる。




「どうして泣いているの?」

 泣き声に気づいたのか、女性が俺に声をかけてきた。


 ただ遠くから声をかけるだけではない。

 コツコツ、とヒールの音がエレベーター内に響き渡り、近くまで来るとおれの顔を覗き込み、こう言った。






















 《こっちの世界へ来たいのか》

 女の綺麗に整った顔からは想像できない程の恐ろしい声を聞いて、おれはその場で気絶した。







 しかし、それは単なる気絶ではなかったのだ。

 目覚めたら…おれは、ドラゴンになっていたのだから。




 魔人から、世界を救うドラゴンに。



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