9.農業
9話目。あまりストーリーは進みません。ごめんなさい。
ブクマ、評価ありがとうございます〜!ガツッ(頭を地面に打ち付ける音)
※わかりにくいと思ったので補足
魔法は詠唱完了後に放たれるもの。それまではただの魔力の塊です。自分でも書いてて間違っているかも知れませんが……。
むすぅー。
ティナはその後、岩の上に座って脚を組み、そっぽを向いて、暫く拗ねていた。
が、
『ティナさん、魔法……続き、やりません?』
と、俺がおそるおそる提案してみると、
『……やる』
っと拗ねながらもばっちり返事頂いたので、続き行っちゃいたいと思いますっ!
『ぉほん、えっと、次にやるのは、さっきも言った通り、自分から離れた魔法の操作だ。爆発させたり、壁を作ったり、撃った魔法の向きを変えたり、とね。これをやるには、魔法の中の魔力の流し方を覚える必要がある。例えば、爆発させたいなら内から外に、壁を作るなら広く伸ばすように、といった具合に』
『……よくわかんない』
『そりゃそうさ。これ覚えるのに普通どれくらいの時間がかかると思う?』
『一週間?』
『違う。1、2年といったところだ』
『そんなに!?』
『だからわかりにくくて当然。むしろ今までのティナが速すぎたんだ。普通の人が初等魔法二つをあのレベルにするのにどれくらいかかるか……。俺がいるからって理由も無いことは無いだろうけど』
『きっとそう!』
『まぁ、魔法といった感覚的なものは、実感出来るとやりやすいのは確かだろうね。てわけで今回も百聞は一見にしかず! やってみようか』
『うん』
立ち上がったティナに、また腕を伸ばしてもらって。
魔力を練り、放つ。自らが放った魔力を感じ取り、その流れを制御する。
今回やるのは、
『闇属性魔法〝シャドウシールド〟』
目の前1m辺りに直径1.5mくらいの黒い盾が出現する。
〝シャドウシールド〟は、言わずと知れた魔力操作練習用の初等魔法なのだが、シールド系はこの前ウォーウルフと戦った時に使ったウォール系の劣化版になる。範囲が少し狭いのだ。
『どうだ?』
『うーん、魔力がずっと手につながってる感じ?』
『お、その通りだ。〝シャドウアロー〟をみっちり練習したかいがあったな。魔力を感じられる様になってきたじゃないか』
生物の身体には魔力が流れている。魔力操作に慣れて、魔力を感じられるようになると、気配を察知したり、不意打ちに反応したりといったことも、出来るようになるわけだ。
『魔力が、近くても離れていても思い通りに操作できるようになれば、無属性魔法や、もっと強力な中等魔法や高等魔法、そうだな、転移魔法とかも使えるぞ』
『え、転移? 遠くに行けるあれ? すごい!』
『因みに転移魔法は闇属性だ。ティナ以外の人間は誰も使えない』
『ティナだけ……!』
ティナは、両手を胸の前で組んで上の空になった。
おそらく、自分がピョンピョン転移しているところを想像でもしているのだろう。実際は魔力消費量が尋常じゃないので、安易には使えないが。
転移などのいわゆる空間魔法と呼ばれる魔法は、全て闇属性の領分である。
その中に収納魔法というのがあるが、これは魔力ステータスによって仕舞える量が左右される。今のティナなら……そうだな、リュック1個分くらいだろう。
旅にいちいち荷物を持つ必要が無いというのは大きな利点だ。闇属性、便利だろ?
さて、そろそろティナを現実に引き戻してやらんと。
『ティナー? やってみるかー?』
『あ、うん』
ティナは俺と同じように魔力を放出するが、形が上手く整わない。ぼやっと、丁度スライムみたいな見た目になっている。
『もっかいやって見せようか?』
『むぅー、お願い』
俺は再び〝シャドウシールド〟を展開する。魔王となって魔法を使い慣れたといっても、魔力の絶妙な扱いというのは一定集中力がいるものだ。ティナにわかりやすいようにゆっくりやっていると尚更。
教えることで学ぶものもある、というのは本当だな。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
その後、ティナの練習、俺の実演、ティナの練習、というのを繰り返したが、やはり今までのようにすんなりは行かなかった。
魔力の大体の方向は定まって来たかなぁ、ぐらいのレベルだ。実用には程遠い。
太陽がてっぺんを超えたあたりで、ティナの魔力の限界が来た。
前回よりは多少余裕を持っての魔力切れだな。上手く調節出来たのだろう。大したものだ。
「はぁはぁっ」
『お兄ちゃん、もうだめ……』
『焦ることは無い、ゆっくりやればいい。今は休みな』
『う……ん、わかっ……た……』
ふっ、とティナから力が抜ける。
倒れる前に急いで入れ替わる。
「っと危ない。ティナ、ゆっくり休めよ。さぁて、ティナが休んでる間、俺が出来る事をやるか」
やりたいことは沢山あるが、まずは畑だ。俺個人として、この貧しい暮らしは余り嬉しくない。ティナにも腹いっぱい食べさせてやりたいしね。
「るんるんるーん♪」
スキップしながら畑の方に向かう。金色の髪が太陽に照らされて煌めき、風になびく。
服は白ワンピースに比べたら、大分着心地が良い。
ただ下が相変わらず心許無い。風吹いたら下着見えるじゃん。世の中の女の子はこんな闘いを毎日しているのか……。
そう言えばウォーウルフと戦った時、下着とか全然気にしてなかった。ウォーウルフよ、さぞ眼福だったろう……?
そんなしょうもないことを考えていると、村の西、一面畑の場所に着いた。この近くだな、最初俺が目を覚ましたのは。
植えられている作物はよく分からない。季節は春。苗しかないのを見ると、種を蒔いたばかりなのかもしれない。だが、ひと目でわかるくらい、どの苗も萎びて元気がない。
試しに畑の畝から土を取ってみる。ついさっき水をやったのか、土が湿っているのだが、これは……粘土質というのだろうか。粒が細かく、俺が土を取った畝の断面を見ると、ほとんど隙間がない。
これだと、水はけも通気性も悪いから、作物の根が腐ったりして、作物がうまく育たない。
前世、つまり日本で高校生やってた頃、おじいちゃんの家に年末年始で両親と帰省した時、畑仕事をしていたおじいちゃんから色々聞いたのが、今役に立つとは。
とはいえ、ちろっと聞いただけなので深くは知らないが。
とりあえずお父さんを探して話を聞くかー。
んーー、おっいたいた。何やら土をほじくり返して、ウンウン唸っている。
「お父さーーん!」
ティナの真似をして呼んでみる。
「えっ、おぉ、ティナじゃないか。こんな所へ、どうしたんだ?」
案外バレないもんだ。
「畑の事色々聞こうと思って。えへへ」
「畑? 実は私も良くわかっていないんだよ。私にはどうやら畑仕事の才が無いらしくてね、あはは。情けない」
「ティナが何とかする」
「ティナが? 畑仕事した事ないだろう?」
お父さんは心底不思議そうに俺の顔を覗き込む。
まぁそうなんだけど。見てろよー。
「まぁ、ね。土見てどうしたの?」
「あぁ、知っての通り、作物が上手く育たなくてね……。村の皆も同じだから、困ってしまって、何とかならないかと思ってね」
「水はけが悪いんだよね?」
「えっ、あぁ、よく分かったな。何とかなるのか?」
なんか、ダメ元で訊かれている気がする。魔王を舐めるなし。
「腐葉土を持ってきて混ぜる!」
「腐葉土?」
「腐葉土っていうのは、森の落ち葉が腐って出来た土だよ。栄養が多いんだって」
「そんなものが……? ティナがなんで知ってるんだ?」
「えーと、何となく?」
「ふっ、また何となく、か。まぁいい、娘の言うことだ。信じてやってみよう。人を呼んでくる。少し待ってなさい」
「うん」
お父さんは、すぐそばの畑で作業をしていた村人四人に声をかけ、ついでに土を入れる用の木箱も五つ持ってきた。
「連れてきたぞ」
「本当に何とかなるんですかい? ディートさん?」
「とても信じられねぇがなぁ」
四人のうち、マッチョの人と、髪が長いチャラめの人が文句を垂れる。
お父さんの名前ってディートって言うんだ。覚えておこう。
「やってみればわかるよ。お父さんの畑でまず試してみたらどうかな?」
「そうだな。すまないが少し手伝ってくれ。成功したら君たちの分も手伝わせてもらおう」
「まぁ、仕方ねぇですな。待っててもどうしようもねぇんですし」
同意を得たようなので森に入る。お父さんとマッチョの人は剣を持ってきている。ウォーウルフみたいな魔物が出ないとも限らないからな。引退したとはいえ、元は冒険者や兵士。頼りになる。
ちょっと奥まったところに来ると先陣を切っていた俺は立ち止まった。
「この辺りで良いかな」
「よし、みんな集めてくれ」
えっさほいさと土を掘り、箱に入れること十五分。土が山盛りに積まれた五つの箱が出来た。
畑に戻ると苗を一旦全部丁寧に抜いて、持ってきた腐葉土を畝の土としっかり混ぜた。
するとなんということでしょう。あの固くて粘り気の強かった土が、ふかふかの床土に。
これにはお父さん始め、村人四人も驚いたようで、それぞれ感嘆の声をもらしている。
「なるほど、これなら確かに作物も育ちそうだ」
「今何を植えてるの?」
「豆だ。今年から導入したんだが、曰く、痩せた土地でも育つらしいのでね」
お、豆を育てるという考えには至っていたか。
「ならそれでいいと思う。あとはトマトとかかな。土地が痩せてると美味しいらしいの」
「なるほど。やってみよう。まだ何かあるか?」
「うーん、ない……かな。あとはお父さんの方で頑張って欲しい。でもその代わり頼みがあるの」
「なんだ? 何でも聞こう」
これだ! 俺の計画の一つ! これを言う機会を待っていたのだ!
「この世界について色々教えて!」
計画、計画言ってましたが、一つはこれです。
二つ目はティナに関すること。