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5.魔法Ⅱ

大きい訂正、活動報告に載せておいたので良ければ見て下さい。


 魔法講義は続く。陽もだいぶ高くなり、木の影も短くなってきた。

 この世界は一日二食が一般的。昼ご飯にわざわざ戻らなくて済む。


『魔法には8属性あるってさっき言ったな』

『うん』

『それらの魔法は主に4段階、簡単な方から、初等、中等、高等、超高等に分けられる。等級が上がるほどに必要な魔素量があるから、素質がないと、いくら頑張っても習得出来ないことがある。ここら辺はシビアな世界だよな』


『ティナはあるかな』

『まあ、俺が感じる限りでは高等魔法くらいは訳ないんじゃないか?』

『ほっ……』


『使ってみりゃわかるさ。んじゃ魔法を使う上での注意をいくつか。まず、魔法を使うには魔力が必要だな? 人一人の持つ魔力には限りがあるから、あまり使いすぎるとなくなってしまう。魔力が尽きると、意識がはっきりしなくなったり、最悪気を失う。もし、敵と戦っている時に魔力切れを起こすと……わかるよな?』

『うん…気をつける』

『よし。でも練習の時は自分の魔力量を体でわかって欲しいからじゃんじゃん使ってOKだ。魔力量も使うほど増えるし』


『おーけー?』

『大丈夫って意味。前の部下にもきかれたな……。兎も角、習うより慣れろ、使ってみようか、魔法』

『やた!』


 ティナは切り株からぴょんっと着地。



『まず、目を閉じて、手を胸に当てる。そこに意識を集中させるんだ。そうすると、手の下辺りに、暖かいもの、何かが集まっている感じがしないか?』

『うーん、なんとなく?』

『それが魔力だよ。次にもう片方の手を突き出して、胸から腕に流すイメージで魔力を流していく』

『うーん、よくわかんない』

『初めは誰もそんなもんだ。てわけで、俺が代わりに流してみるから、それを感じ取ってみてくれ』


 ティナは目を閉じ、じっ……と魔力の動きを感じる。


『………あ、わかる』

『よし、やってみな』


「むむーー」

 ティナの突き出した右手の手のひらから、昨晩俺が魔法を使った時に出たような光の粒子が、わずかに放出される。


『ぉー』

『上出来だ。こんなに早く出来るとは思ってなかったぞ』

『お兄ちゃんのおかげ』

『ティナ自身の能力だよ。だが、まだ序の口だ。もっと速く、かつ魔力量の調節が自由に出来るようにならないと使い物にはならない……ってどうした?』


 ティナが急にそわそわし始めたので、気になったのだ。


『お、おしっこ……』

『え』


 まさかのおしっこですか、でもどうしよう、女の子に森の中でさせるわけにもいかんし。


『我慢は……』

『もう無理〜!』


 どうやら魔力操作の練習で力んだのが良くなかったらしい。ティナは半泣きだ。漏らすなんて事はあってはならない! 急いで家に戻るか……だが、この状態では駄目だ。力が足りん。


『ティナ、ちょっと替わってくれ、家まで急いで戻るから』

『わ、わかった』


 昨日したのと逆の作業を行う。ティナにも外が見えるように調節し、ティナの身体の主導権が俺に……



「はうっ!」


 わ、忘れてたァー! そうだ、他人事じゃねぇじゃん! おかげでちょっと色っぽい声が……


『ほっ……』

『ティ、ティナさん、そんな気の抜けた声出さないで?』


 漏れそう。急がねばならない……。

 そう言えば聞いたことがあるな。女の子は男の子より尿の我慢がしにくいと。何でも膀胱の容量が少ないとか……ってんな事どうでもいいんだ。


 問題はこの状態では走れん……。

 俺は今、かなり内股でもぞもぞしている。一歩でも動けば大放流も有り得る。

 どうする……!


 これらの考えが瞬時に頭を巡り、結論にたどり着いた。

 飛ぶ!


「風属性魔法〝フロート〟!」

『わぁ、浮いた』


 光の粒子が溢れ、俺の身体が宙に浮く。ぉおっと危ない……。

 俺は、森の木より高い高度まで浮き上がる。この魔法だけでは推進力が足りない。現代科学の力の出番だ! この世界には無かった、俺が編み出した魔法。


「融合魔法〝ジェット〟!」

『ひゃ!』


 炎が勢いよく噴き出し、俺の身体は家の方向へ鋭く加速。かかったGでまた大放流されそうになったが堪える。あ……ちょっとやらかしたかも。


 〝ジェット〟は、火属性魔法〝フレアバースト〟を風属性魔法〝テンペスト〟で指向性を持たせたものだ。〝フロート〟も合わせた3つとも、中等魔法なので、今の俺からすると魔力消費がかなり大きい。

 魔力切れに注意しつつ飛び、1分もせずに家の前まで辿り着いた。交感神経が興奮したのかちょっと尿意がマシになったので今がチャンス! トイレに駆け込もうとすると、


『あ! だめ、お兄ちゃん変わってー!』

『そんな余裕ないんですがー!』

『だめぇぇ!』



 はいはい替わりますよって……


「はうっ!」

『だから言ったのに』


 ティナは勢いよくトイレのドアを開け、中に入り、下着を脱ぎだす……


『見ちゃダメ!』

『はいよ〜』


 ちっちゃくても女の子。霊にとはいえ見られるのは恥ずかしいんだな。別に幼女を覗く趣味はないので大人しく目をつぶる、精神的に。

 因みにこの家に水洗トイレなんて高級なものは当然ない。この世界でそんなものを置いているのは貴族の家くらい。

 集められた糞尿は大体、落ち葉や雑草と混ぜられ、畑の肥やしにされる。だから、村の所々は臭かったりするのだ。


『終わった、よ』

『お、おう』


 ティナが、躊躇いがちに報告をする。俺もつられて微妙な返事を返す。

 実はこのやり取り既に3回目。全然慣れません。


『……まだ魔法の練習続けるか?』

『うん』



 家を出て、今度はゆっくり歩いて行く。俺ももう魔力ほとんど使えねぇし、何かあった時のために回復させておきたい。


 暫く歩くと元の開けたところに戻った。


『よし、再開しよう。さっきの魔力操作をもっとスムーズに出来るように練習だ。終わったら実際に使うから頑張れ』

『うん』



―――暫くして



「んっ」

『どう?』

『ふむ、いい感じだ。板についてきたな。このくらいの腕があれば魔法発動もスムーズになる。じゃ、さっきみたいに俺が見本を見せるからよーく見てて』

『お、おーけー?』

『ふふ、行くぞ』


 見本なのでゆっくりやるか。

 まず、ティナに、腕を伸ばしてもらう。魔力を魔魂から引き出し、右腕に流す。ゲートを通って、手のひらに魔力が集まる。初めは光の粒子だったものが、集まって漆黒に染まっていく。凝縮、凝縮……。

 いい具合に集まったところで、


『闇属性魔法〝シャドウボール〟!』


 右の手のひらから放たれた黒い魔力球は、バシィッと音を立てて空き地の角の木に当たり、その皮を削ぎとった。


 〝シャドウボール〟闇属性初等魔法。各属性のボール系は最も基本的な魔法だ。威力は低いが、融通が効く。初心者はそれらで魔法の操り方を学ぶのだ。



『どうだ?』

『やってみる』


 ティナは胸に左手を当て、俺と同じように魔力操作を行い……


「〝シャドウボール〟!」


 ティナの右手から放たれた黒い球は俺が当てたのと同じ木に当たったが、音はぺちっと弱々しい。


『やった! やっと魔法が使えた! ……でもお兄ちゃんみたいに強くない』

『ふむ、魔力の集め方が甘いな。だが一発で出来たのは凄い! ここまで優秀なのは中々いないぞ』

『え、そうかな、えへへ』


 ティナは両手を頬に当てる。照れ隠しのつもりかな。使えないと思っていた魔法が実際使えたのだ。喜びもひとしおだろう。


『魔力を魔法に練り上げ、魔法名を唱えるまでを〝詠唱〟というんだが、その時間、最初のうちは長く取るのも手だ。慣れれば自然と速くなる』

『わかったやってみる!』




 その後、ティナは〝シャドウボール〟を撃ち続けた。

 しかし、陽が沈み始めても、ティナはどうやら自分の魔法の威力に満足出来ないようで、俺のアドバイスを聞きながら、ただひたすらに、真っ直ぐに、〝シャドウボール〟を撃ち続け、そろそろ帰る時間が迫ってきた頃に……


「はぁはぁ、今度こそ! 〝シャドウボール〟!」


 放たれたシャドウボールはすっかりボロボロになった木に飛んでいき……、バシィッと鋭い音を響かせた。


『お、やったな』

「うん、やっと、でき……た……」

『あ、おい!』


 ティナの身体がふらつき、倒れた。魔力切れ……だな。幸い森の地面は柔らかく、ティナが怪我をすることもない。


『よく……頑張ったな。兄として、師として、俺はお前を誇る』


 精神的に撫でてやる。ティナの魔法に対する熱意は見上げたものだ。



 日も暮れる、身体の主導権を交代して家に戻るか……。



 入れ替わった、その瞬間。

 脳の芯まで痺れるような感覚。

 肌に突き刺すようなこの視線。

 全身の鳥肌がぞわっと立つ。

 間違いない。






―――殺気だ。







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