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死んだかと思ったら新世界の幕開けだった  作者: 田村 毅
第一章
6/7

初めての戦い、そして痛み

魔法と暴走について⇒異能力を使うことのできる者は魔力体と呼ばれるものが細胞の中にあり、そこで作られた魔力を消費することで力を使うことができる。魔力が切れても異能力が使えなくなるだけで体には何の影響もなく、時間経過で回復する。


本文で説明する機会が無いと思ったのでここに書いておきます。


『今よ!』

『了解です!』

智聖ちゃんの指示に合わせて俺は水魔法で作りだした人を軽く飲み込む大きさのビームを悟さんめがけて撃ち出す、がまるで撃たれるのが分かっていたかのように、いや実際分かっているのだが数歩横にずれただけで簡単に避けられ、左手に持っていた拳銃で俺を撃ち返してくる。


「うおっ!」

俺は拳銃を向けられた瞬間に足から水流を出して推進力にし、その場から緊急脱出する、と同時に発砲音がする。そしてさっきまでいた場所に銃痕があるのを見て冷や汗を流した、どうやら足を狙っていたようだ。間一髪だったな。


「動きは読めたけどやっぱり速いね、君」

「よそ見するなぁ!」

悟さんが智聖ちゃんの二本の剣による熾烈な攻撃を受け流すこともなく完璧に避けながらこちらに言ってくる。俺は何も言わずに狙いを付けさせないように動きながら次の攻撃のチャンスを窺う。これで五回めの攻撃が失敗に終わった。


 こんな戦いをすることになった理由は約三十分前にさかのぼる。



 俺はあの後智聖ちゃんと話をしながら悟さんの部屋まで向かい、部屋に通された後自分の資料を読みながら暴走の使い方を教わった後、施設内にあるとんでもなく広い戦闘訓練場に行き、動かない的相手に練習を繰り返しているときに模擬戦の誘いを受けてしまったことが原因だった。後、話しているときに名字で呼ばれるのは嫌だとのことだったので智聖ちゃんは名前で呼ぶことになった


 長いこと体を動かしていなかったし試してみたい動きなどもあったが、一番の理由として自分がいる組織のみんながどれくらい強いのか知りたくてOKしたが、武器庫に案内されて俺は一つ勘違いしていたことに気付いた。


 そこにあったのは銃や剣、槍、ハンマー、ナイフなどの本当に相手にダメージを与える武器ばかり、刃のつぶれているものやゴム弾なんてものは一切なかった。この人たちの言う模擬戦とは本当の戦闘を想定した生々しいものだということに気付いたがここまで来てしまった以上断れる雰囲気でもなく仕方なく戦う羽目になってしまった。このとき資料に書いてあったここで起きたダメージや傷は戦闘後に無くなるという一文を見逃していなかったらどんなに気が楽だったことか・・・。


 そのあともトントン拍子に話が決まり、俺と智聖ちゃんVS悟さんの戦いをすることになった。俺は連携を取るためと、相手の攻撃パターンを予測するために二人から異能力を聞いた。


 智聖ちゃんは属性が光、暴走は【身体強化】という癖もなく強力な能力だった。光属性は攻撃力が非常に小さい代わりに魔力が尽きにくく、使用した際にとんでもない光を発生させるため、戦闘では自分の後ろで発動させて目くらましなどに使う人がほとんどだ。


 悟さんの魔法属性は土で、暴走は相手の考えていることが分かるという能力だった。悟さんは【読心】と呼んでいるらしい。暴走は能力の効果によっては長い説明になることが多いため分かりやすくするため自分で能力名を付ける人も多いらしい。土属性に関しては地面の地形変化、材質変化などをまとめてその属性に分類されるため人によって強さが全く違う。


 その二人に対して俺の属性は水、新たに得た暴走は物体や生物の動きや位置、状態を維持させることができる、という能力だった。一言でいえば【保存】、だろうか?使い道としてはキンキンに冷えた飲み物を保存してぬるくならないようにしたり、空中にある物の位置を保存して足場にするとかだろうな。攻撃には全然使えないと思うがそこは魔法でどうにかするしかないだろう。


 そのあとで戦闘前に俺と智聖さんは作戦を練っていた。訓練場は様々な地形にすることができるらしく今回選んだのは市街地だった。


「で、どうします?卑怯かもしれないですけど数で有利だしでもローテーション戦法でも使いますか?」

能力の分析をしながら俺は智聖ちゃんに問いかける。ローテーション戦法とは二人以上でやるもので、何人かが戦っている間に何人かが休憩を取るという戦い方だ。

「悟は組織の中でも一対一なら負けなしの相手よ、一人ずつだと多分相手にもならないわ」

そんな言葉を聞いて俺は自分でも顔が引きつるのが分かる。


「それに悟の土魔法は地形変化だから下手に距離を取ると分断されて各個撃破で終わりだと思う・・・」

「困りましたね・・・」

予想よりずっと強そうなんですけど悟さん・・・。戦闘スタイルは中距離も近距離も戦えるアタッカータイプかな?土属性魔操者は石を飛ばすくらいなら誰でもできる。読心によってこっちの攻撃は当たらず、向こうは動きが分かるから的確こちらを攻撃してくるはずだ、厄介なことこの上ない。


「真保ちゃんは普段どうやって戦うの?」

「そういや言ってませんでしたね。基本的には遠距離から攻撃して相手の消耗待ちです」

真保ちゃんって言われるとなんだか変な感じがするな。なんかこう、体がかゆくなるような感じがする。

「じゃあとりあえず攻撃は範囲攻撃にしてくれる?私は前に出て戦うから」

「それだと攻撃が智聖さんにも当たりますよ?」

「そうでもしないと悟に当たらないと思うし私が指示を出した時だけその攻撃をしてくれればいいわ。それ以外の時はそっちの判断に任せるから」

「分かりました、足を引っ張らないように頑張ります」


そして俺たちは戦いを始めた・・・。



 のだが結局一発も当たらないまますでに五分経過している。智聖ちゃんは暴走の身体強化によって自分の体長ほどもある剣を軽々振って悟さんを斬りにかかるがバックステップのみで躱されてしまっている。しかも向こうはまだ一度も右手に持っている槍を使っていない、たまに左手に持っている拳銃で俺を撃ってくるくらいだ。最初はビビったがこちらに銃口を向けた瞬間に動けば何とか躱すことができた。


「軌道が見え見えだよ?こんなの心を読むまでもないね」

「うるさい!」

智聖ちゃんが目にも止まらない速さで攻撃し続けているにも関わらず当たる気配がない。俺も距離を取りつつ横から握りこぶしほどの幅のビームを立て続けに四本、足を狙って攻撃を仕掛けるがやはり当たらず、逆に弾を撃たれる。


『一旦引くわ、あれ使って』

耳につけたインカム越しに声が届く。

『了解です』

俺はそう返して逃げ回りながら用意していた水魔法を作動させる。この水魔法は球体にして魔力を溜めておいたものを様々な場所に配置し、作動と同時に球体同士が水の柱でつながり、相手を取り囲む設置型の魔法だ、今回は戦闘離脱用に使った。弱点としてはとどめておいた魔力分しか作動しないため発動している時間が短いことくらいか。


 今回は魔法によって足止めしている間に智聖さんが素早く離脱することができたので途中で解除したため魔力を温存することができた。現在は距離を取るために道をでたらめに走りながら作戦を考え直していた。


「今の時間ならもう一回使えます」

俺は報告する。こういった味方がいる戦いにおいて、味方の状況を知っていることは大きな力になる。

「助かるわ、でもやっぱり当たらないね・・・」

「このままこの作戦を続けますか?」

そんな事を話しているときだった、

「今度はこっちの番だよ」

後ろから突然声がした。


「危ない!」

俺が智聖ちゃんに横腹を蹴られて道の反対側に転がっていく中、剣を持ったままの肘から先のみの小さな腕が宙に浮かぶのが視界の端に見えた。痛みこそあるが、すぐに体制を立て直して自分がいた場所を見ると、必死に片方の腕で悟さんの攻撃を受けている少女の姿がある。


「智聖さん!」

「私は大丈夫だから早く撃って!早く!」

「くそっ!」

水魔法を発動して悟さんを狙う、するとニヤリと笑みを浮かべて剣で槍を受け止めていた智聖ちゃんを蹴り飛ばし、無防備なこちらに向けて槍をブン投げてくる。向こうはどうやら最初から俺を狙っていたようだ。


「やばっ!」

急いで避けようとするがそれを予知していたかのように地面がせりあがる。俺はそこに激突し、右の太ももを貫かれて壁と化した地面に磔にされる。


「ああああ!」

言葉にできない痛みを受けて絶叫する。尋常じゃない汗が出て視界が揺れる。鮮血が俺の足を赤色に染めていく。しばらく叫んでいると声が出なくなってくる。そして

「抜くよ」

という声がするとともに再び激痛が足を襲う。

「う、ああ」

足の槍を抜かれると同時に地面に倒れこむ、もはやうまく声を発することができない。さっきの叫び声で喉がつぶれたみたいだ。


「これで模擬戦は終わりかな?」

俺の足を貫いた本人が言ってくる。痛い、痛い、痛い、痛い。まともな思考をすることが難しくなってくる。

「これじゃあもう戦えないでしょ。私は無理ね」

斬られた右腕を抑えながらこっちに合流してきた智聖ちゃんが答える。

「じゃあ終わりにしようか」


 悟さんが取り出した端末を操作すると周りの建物や道路が無くなっていき、最終的には元の何もないただの広いだけの空間になる。それと同時に傷が無くなり痛みも一瞬で引いていく。驚いているところに悟さんからこの訓練場の説明を聞いてこのことに納得する。


「大丈夫?初めての戦いはどうだった?」

心配そうに声をかけてくるが智聖ちゃんの呼びかけに俺は声を発することができない。さっきの痛みのせいで動揺しているのか、上手く言葉を発することができない。

「うーん、ごめんね。ちょっとやりすぎたよ」

悟さんが本当に申し訳なさそうに言ってくる。


「い、痛かった、です」

何とか絞り出すことができた声はとても小さかった。顔がこわばっているのが自分でも分かる。その言葉を聞いて智聖さんは涙を浮かべて

「私たちがあなたを誘わなかったらこんなことにはならなかったわ、ごめんなさい。」

土下座した。


「あなたを誘った私が全部悪いの!ちょっといいとこ見せようと思って・・・。本当にごめんなさい!」

本当に自分だけが悪いのだと思っているのだろう。わんわんと泣きながら謝ってくるその姿を見て俺は考える。謝るくらいなら最初から誘わないで下さい、とはとてもじゃないが言えなかった。


 確かに模擬戦をしようと向こうが言いださなければこんなことにはならなかったと思うが俺が向こうの立場だったらどうだろうか?新しい仲間の実力を見たいだろうし安全でもあるなら確かに勝負したいという考えになるのも分かる。戦いを通してお互いの理解を深めることもできそうだしな。そう考えたら複雑な気持ちだ。でも俺はめちゃくちゃ痛かったしなぁ・・・。よし!


「分かりました、そんなに言うならお願いがあります」

落ち着いて呂律もうまく回るようになってきた俺は智聖ちゃんに話し出す

「私にできることなら!」

「じゃあ、これからは二度と今回みたいにならないように俺にいろんなことを教えてください、それが俺からのお願いです。それで今回のことは許します」

「でも・・・、それだけじゃあ」

俺が怒るのもなんか違う気がしたし、そもそも怒る気力がもうないのでこんなお願いをしてこの話は終わりにすることにした。変に距離を置かれても嫌だしな。


「じゃあ次はちゃんと守ってくださいね、智聖さん」

まだ納得のいってない表情をしている向かって言う。こういう責任感の強い子は向こうの納得いくまで何かさせないと気負いしちゃいそうだしな。


 すると俺を見て涙を拭いた後、何かを決心したかのような真剣な表情で

「分かったわ、これから任せて!絶対に私があなたを守るからね!」

と力強く言われた。




 こうして、俺の初めての戦いは惨敗に終わった。



悟さんは作中最強格の一人だから、リアルの戦闘経験が無い主人公が手も足も出ないのはしょうがないのです。

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