新たな名前、新たな世界
残りメンバーはそのうち出てきます。
ドアを開けた先に会ったのは長い廊下だった。さっきの部屋と同様に窓は無く、明かりは照明のみだ。リーダーのいる部屋までは結構距離があるらしい。
少し歩いていると
「そういえば何で異世界に行きたがっていたんだい?」
悟さんが聞いてくる。
「実は俺、ラノベにはまってまして、そこの舞台によくある異世界ファンタジーみたいのに憧れてたんですよ」
俺は答える。まあ異能があるこの世界もファンタジーみたいなもんだが魔物討伐やダンジョン攻略なんかはすごくやってみたい。
「まあ、私たちは独創世界があるからそういうのも作ろうとすればできるわよ」
「そうなんですか?本当に何でもできるんですね・・・」
「試したことは無いけどね。魔物じゃないけど実験用にラットとかなら生み出せたからある程度イメージできてれば空想の生き物も可能だと思うわ」
愛香さんが話す。すげえな独創世界、まるで神にでもなった気分になれそうだ。しっかりと考えた上で使わないとな。
そのあとも会話が弾み、色々な話を聞くことができた。俺の身長は160前後まで縮んでいるし、顔に関してはかっこいいから整っていると言われる見た目に変わっていることもわかった。
この組織に関してもいろいろと聞けた。どうやらこの組織は表向きは異能力者の派遣会社として存在しているらしい。そういや異能さえ持っていれば10歳から働けることを俺は思い出す。まあ時間外労働とかの問題が相次いでいるらしいが。
さらに組織メンバーは俺を除くと全員で10人らしい。ちなみに全員魔暴操者。やべえなこの組織。けど普通、組織の人数は三桁は当たり前で多いものは四桁に届くものもあるので、いかにこの組織が小規模であるかがわかる。まあ、入ることのできる組織は一人一つと決まってないので複数の組織を掛け持ちすることは可能だから人数が多くなるのだけど。
「このドアの先だよ」
雑談をしているうちにリーダーのいる部屋についたようだ。見た目は俺がいた個室のドアと変わらない。
「リーダー失礼します、神薙優斗を連れてきました」
「おお、入れ入れ」
軽い返事とともにドアが開けられる。開けてくれたのはめちゃくちゃかっこいい黒髪のお兄さん。ホストみたいだな。
「し、失礼します」
ちょっと及び腰で挨拶をする。
「やっぱりお前が神薙だったか、最初は誰だか全くわかんなかったぜ。」
奥にいるソファーに座っている男が言う。無精髭を生やし、髪をオールバックにしているダンディなおじさんだった。
「俺の名前は榊原啓祐、この組織のリーダーだ。で、そっちの黒髪が羽切英士だ」
「よろしく」
「こっちはお前のこと知ってるから挨拶はいらん」
リーダーの榊原さんが自己紹介してきた。それに合わして羽切さんもこちらに頭を下げてくる。
「早速だが本題に入るか、お前行くとこないんだろ?だったらこの組織に入れ、面倒見てやるよ。お前らも良いよな?」
榊原さんが周りに聞くが皆無言だ、異論は無いということなんだろうか。それにしてもいきなりだな、まあ俺も何とかこの組織に入れてもらおうとしてたからいいけど。
「俺としてはありがたいんですけど、この場にいない人には聞かなくていいんですか?」
人数が少ないんだし全員の意見を聞いたほうが良いと思うんだが。
「お前は真面目だな。あいつら夏休み使ってバカンス行ってるからほっといて大丈夫だ」
「ええ・・・」
この人リーダーでほんとに大丈夫か?
「ボス、智聖を忘れていますが」
羽切さんが言う。バカンスに行ってないメンバーの残りらしいが、どうやらその子はまだ子供らしく、もう寝てしまっているらしい。
「あいつも大丈夫だろ。反対するどころか逆に後輩ができたって喜ぶだろうな」
「まあ、あいつなら喜ぶでしょうね」
どうやら今の言葉で羽切さんは納得したらしい。そして、満足そうにうなずく榊原さんに悟さんが言う。
「リーダー、名前を付けるのを忘れてますよ」
「ん?ああ、そうだったな」
この組織では問題が発生するのを防ぐために名前を変える。リーダー直々に名前を決めるらしい。不安だ。
「そうだな、名字か名前のどっちか一文字だけ残して残りを変えよう。何を残す?」
「じゃあ、名字の神で」
俺は神を選ぶ。理由はかっこいいからだ、それ以外の理由は特にない。優と迷ったけどな。
「分かった、少し待ってろ。羽切、茶でも入れてやれ」
「決めたぞ。お前は今日から神永真保だ!」
座って羽切さんが入れてくれた紅茶を飲んで待つこと数十分、榊原さんが紙に筆ペンで書いたでっかい文字を掲げながら言う。思ったよりいい名前だった。見た目に合わせたのか分からないけど女っぽい名前なのが気になるが。
「よし、今からお前は俺たちの組織のメンバーであり、仲間だ!改めて挨拶をしろ」
榊原さんに促されて俺は皆の前に立ち、
「えっと、神薙優斗改め神永真保です。皆さん、これからよろしくお願いします!」
元気よく挨拶をした。皆が拍手をする。
「いいか、神薙優斗は死んだ。お前は神永真保として新しい人生を生き、自分だけの新しい世界を作っていくんだ!」
榊原さんが力強く俺に向かって言う。新しい人生、新しい世界か。滅茶苦茶面白そうじゃないか。そうだ、異世界なんて関係ない。俺は俺だけの世界を作り、生きていくんだ!
こうして、俺の新世界が幕を開けた。
実は運営費などはすべてリーダーが用意しています。