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死んだかと思ったら新世界の幕開けだった  作者: 田村 毅
第一章
1/7

別れと出会いは唐突に

転生はしません。(キッパリ)



 「はぁ・・・」

 時刻は夜の八時半、今年受験生である神薙優斗は夏期講習の帰り、揺れもなく快適な電車の中で誰にも聞こえないように小さななため息をついていた。


 神薙優斗は日本に多くいる高校生の一人だ。そしてかなりのイケメンである。身長は170後半であるにもかかわらず体は細く、顔は美形、さらに魔法に関しては同じ高校の中でも優斗に並ぶものはいなかった。けれども幼いころから彼は勉強があまり得意ではなく、今まで遊びほうけていたため親から強制的に塾に行かされていた。


 この日本では炎や水など属性を持つ異能を使うことができるものを魔操者、空を飛んだり瞬間移動といった属性を持たない異能を使うことができるものは暴走者と呼ばれる。魔操者と暴走者は異能力者とひとくくりにまとめられ、異能力者と異能を持たない無能力者は同じ学校に通うことは無い。そして今や異能は一つの教科として取り入れられるほどに社会に浸透していた。そして異能力者が通う学校の受験には知識だけでなく異能の実力も必要になっている。そんな中優斗は異能の実力は十分にあると勝手に自分で判断し、夏休みのほとんどを使って勉強にいそしんでいた。


 (毎日毎日勉強勉強って、憂鬱だな・・・)

声には出さないが心の中でつぶやく。

(今頃家族はあったかい飯をくってるんだろうなぁ)

そんなことを思いながら席に座って今日やった内容の復習をしているとポケットに入っている携帯が震える。妹からのメールだ。そこには『今日のご飯はクリームパスタだよ^^』と打ってあった。


 (クリームパスタかよ・・・)

俺が家に帰るころにはパスタがクリームをたらふく吸ってめんの塊と化しているであろうものを想像して少しげんなりした。


 少し考えてから『あんま腹減ってないから少し残しててくれればいい』と返信する。

(そういや高三になってからあんまし一緒に飯食ってないな・・・)


 なんてことを考えているとふと向かい側の窓から凄まじい光が発生した。直後に衝撃が車体全体に響く。ドゴン!という音を上げながら電車が地面から離れていく。俺はあまりに急な事態に声を出すことすら出来なかったが体は何とか動かすことができた。 

(やばい!このままじゃ死ぬ!)

そう思ってすぐさま魔法を発動しようとする。俺の属性は水、全身を水の球体に入るようにすればある程度は衝撃を防げるはずだ。実際にこれで何度か自分の身を守ったことがあるため、効果があることが分かっているのがちょっと安心するがそれも一瞬の間だけ。魔法が発動しないのだ、一滴の水滴すら現れない。そしてその事を理解するのに数秒、なすすべもなく体を浮遊感が襲う。

「これ、完全に死んだわ」

出てきた言葉は、死を確信したものだった。


 電車が再び地面に戻ると同時に衝撃が再び起こり、乗員は全員車内に体を打ち付け、転がっていく。もちろん俺も例外ではない。まるでボールのように壁という壁にぶち当たった後、やっと止まる。窓ガラスは砕け、車内は血だらけだが状況を把握できるということは少なくとも俺は死んではいないようだ。しかし問題が発生した。


 (助かったのか?)

そう思いに体を仰向けの状態から起こそうとするが何故か体が動かない。体の骨がどこか折れているのかと思ったが顔が上を向いているため体を確認することもできない。そして何かおかしいことに気が付く、全く痛みがないのだ。あんなに激しくぶつかったなら感覚がどこかマヒしていても流石に少しはダメージがあるはずだ。


 (これはまずいな、このまま体の感覚が一切ないなら死んでいるのと変わらないじゃないか・・・)

助けを呼ぼうとするが口すらも動かせないことに気が付く。


 (くそっ、どうする俺?いや落ち着け、まずは状況の確認だ。電車の事故が起きて俺がバウンドしておそらくだが体が石像のようになっているということか?)

意味不明だ。こんな症状テレビでもでもネットでも聞いたことねーよ畜生!そういや息してねーな俺、これって何とか息を吹き返したけど結局のところ死んでしまうパターンなんじゃ?息してないけど!そして自問自答を繰り返すこと数分。


 (あれ、アホなこと考えているうちに意識が・・・)

結局俺は死ぬのか。ああ、さよなら父さん、母さん、そして妹よ。俺は異世界にでも旅立つさ。


「すまないけどそれは無理かな」

薄れゆく意識の中で聞いた神の言葉は俺に絶望を与えた。

 





 

不定期ですが月に二つ以上は投稿する予定です。

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