隠し扉と中華少女
こんな夢を見た――
気がつくと部屋にいた。
家具の少ない平屋建て、古い下宿の六畳間だ。
私はバケツに水をくみ、拭き掃除をしている。
壁の一角に不自然な線があるのに気がついた。調べてみると、ちょうど人が通れる長方形だ。
〈以前、この部屋にドアがあったが、リフォームか何かで閉鎖した痕跡であろうか?〉
私はドアノブのあたりを押してみた。すると、カチッと音がして、長方形の壁は扉のように向こう側に開いた。
〈隠し扉かもしれない……〉
私は壁の向こう側を調べてみることにした。その奥には狭い廊下が3メートルほどあった。右側に小さい扉があり、腰をかがめて入ってみると昔風のタイル張りの風呂があった。水が少し残っている。
そこを出て、左側を見ると折りたたみ式ガラスドアがあり、中はシャワー室だった。
狭い廊下の正面のドアを開けると渡り廊下になっている。突き進むとコの字型に曲がり、八つのドアが並ぶ壁があった。
ドアのひとつのプレートを見るとデジタル占い相談室とあり、扉を開けてみるとゲームセンターのような空間があった。振り返れば八つのドアが並び、壁も間仕切りもない。
〈なんのための八つのドアであろうか?〉
正面を見るとアーケードゲームの細長い筐体があり、『デジタル占い相談室』と書いてあった。
ゲームセンターには人がチラホラいて、浴衣を着た男女や親子連れがいる。それらの人並につられて外へ出た。夜の町は通行止めになっていて、歩行者天国だ。
通りには祭りの屋台が並んでにぎやかだ。花火大会がありそうなので人並についていく。
途中、さびれた町に不似合いな三階建てのコーヒーショップと高級酒の店があった。その向かいに中華料理店があり、手前は駐車場になっているが、出店がならんでいる。
ビーチチェアがあり、そこに腰かけて休んだ。
チェアの横にチャイナドレスを着た12,3歳くらいの少女がいた。
右手に龍の絵が描かれた高級そうな風鈴を持っていた。風水の魔除けかお守りであろうか。そよ風が吹いてチリ~~ンと鳴った。
「中国四千年の霊験あらたかな風鈴アル――」
と言って、中華少女は神秘的な眼差しでこちらを見上げた。
そして、目が覚めた――