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夢日記  作者: 辻風一
3/12

東京迷図

 こんな夢を見た――


 ユーボート(ドイツ海軍の潜水艦)で東京湾に到着し、モノレールに乗って浜松町駅へ。

 私は東京の取り引き先相手に会いに行くのだが、足取りが重い……

 納期が遅れたため、社を代表してお得意先のF社長に謝りにいくのだ。手土産に地元の銘菓を買ってある。

 Fさんはヤリ手の女社長で、厳しく叱られることを覚悟しなければならない……


 ホームの乗り換えがよくわからないので、駅員さんを探していたら、カラフルな道士服(だと思う)を着た中学生くらいの男の子と女の子がいた。

 朝のワイドショーなどのテレビで、ときどき映像で見るアニメやゲームのコスプレイヤーだろう、初めて生で見た。さすが東京……

 二人に新宿への乗り換えをたずねた。二人は丁寧に教えてくれて、好感をもった。

 そして何のコスプレなのか聞いてみたら、これはコスプレではなく仕事服だと答えた。二人は悪霊祓い師エクソシストなのだという。


「ボクたちはこれから港区へ行って、東京タワーを占拠した悪霊の群れを封印にいくところなのです」

「えっ!! そんな危ないこと、大人たちに任せたらいいんじゃないかい?」

「いいえ、霊能力は私たちの年代でしか使えないのです……」

「そうなんだ……」


 私は二人と別れて新宿行きのモノレールに乗った。揺れる車内で物思いにふける。


〈あんな子どもたちでも一生懸命仕事をしているのに、私は情けないなあ……〉


 新宿駅はあいかわらず人が多く、乗り換えがわかりづらい、ぐるぐると無駄に歩き周り、疲れたので手近のエスカレーターに乗って地上にでた。

 喫茶店でアイスコーヒーでも飲もうと思ったら、行先のビルが間近に見えた。


〈よし、誠意をこめて謝ろう……〉


 私は決意して、陽炎ののぼる暑いアスファルトの道をふみしめて行く。銘菓が痛んではいけない、早く冷房のきいたビルに入ろう。

 すると、目的のビルの影からのっそりと、巨大な影が現れた――


 それは巨大なF社長であった。ウェディングドレスを着ている。ズシンズシンと地響きをたてて歩き、まるで進撃の巨人だ。


「社長ぉぉぉ! F社長ぉぉぉぉぉ! まってくださぁ~~い」


 私はあらん限りの大声を張り上げて社長を呼んだが、耳に届かないようで遠くへ行ってしまう……




 そして、目が覚めた――


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