病院の用心棒
こんな夢を見た――
右手の肘が痛い、白い建物に入る。小学生時代の校舎に似た鉄筋コンクリートだ。
ひっそりとして誰もいない。
三階の廊下を歩き、一番西側の部屋が病院となっていた。中では医者と看護師と患者が大勢いた。
若い医師に右手を診てもらうが、なんとも無いという。
私はそれでも右肘が痛いと訴えるが、口論になった。
そこへ着流しの着物に同田貫を引っ下げた浪人がきた。彼は病院の用心棒だ。俳優の寺島進に似て凄みがある男だ。
「お客人、これで勘弁してくれ……」
用心棒はいきなり太刀を閃かせた。そして大上段から若い医師を唐竹割りに真っ向両断にした。
驚いて腰を抜かしそうになるが、目が離せない。
二つになった医師はマネキン人形に変化した。断面に四角い凹みがたくさんあり、駄菓子が詰まっている。
侍が斬ったから、医師がマネキン人形になったのか?
それとも、マネキン人形が医師に化けていたのか?
ともかく、ここにいては危険だ。用心棒に下手なことを喋ったら私も斬り捨て御免になりそうだし。
「失礼します……」
そうそうに退室した。西階段をくだって踊り場まで降りると、上から声がした。
「土産だ……」
用心棒が投じたものが階段の踊り場の手すりの交差する地点に突き刺さった。
人間の腕だ!
よく見ると、マネキンの腕であった。こんなお土産はいらない。
片腕を持って再び階段を上り、廊下に出る。
そこでは寺島進に似た用心棒が唐沢寿明に似た医師と楽しそうに話し込んでいた。近寄りがたいオーラを感じた。そういえば、このお二人は映画で共演していたなあ……
〈さすが芸能人のオーラはハンパない……〉
私は右手にある視聴覚室をのぞいた。小学生がつくった工作や絵が飾ってあって、町の人々が見学していた。
俳優二人の会話は終わりそうにないので、私は片腕を壁にそっと置いて階段を降りていった――
そして、目が覚めた。右腕が痛い……
昼間の作業で右肩が凝ったのであろう、右腕が痺れる。これが原因で変な夢を見たか……
時計を見ると、まだ夜の二時だった。私は右肩を左手でマッサージをした。血行がよくなり、痺れもなくなり、気持ちよくなっていく……
いつしか再び眠りについた。また夢を見た気がするが、朝目覚めた瞬間にすべて忘れてしまった――




