家電車
こんな夢を見た――
冷える朝、階下のトイレに行き、窓を覗くと鉛色の雲が朝日を浴びて、少しずつ明るくなっていくのが見えた。
そして、家屋が揺れ出したのに気がついた。はじめ、地震かと思ったが、ゴトンゴトンと、定期的なリズムに揺れる。
これは電車の揺れだ。どうやら家が電車のようにレールに乗って移動しだしたようだ。いつの間にか窓と壁は電車の操縦席になっていた。
窓から覗くと、レールも見えないのに、外の庭を進み、舗装道路の通りへ出て、左側に曲がっていった。
ゴトンゴトンと揺れる家電車はいつしか高速道路に乗り上げ、前へ進んでいく。
家電車は左側に曲がった。この先には最新のショッピングモールがあるはずだ。だが、その敷地には昔――二十年以上前にあって、今は無い二階建てのスーパーマーケットが現れた。
家電車から降り、今はもうないはずのスーパーマーケットに入った。野菜売り場に魚売り場、雑貨コーナーに文具店、本屋、家具コーナーなど……懐かしい思いにふける。
いつの間にか私は神社の薄闇の中を歩いていた。遠くで祭の囃し太鼓が聞こえ、露天商のテント、提灯の灯りが見える。両隣には小学生の男の兄弟が二人いた。
私が子供の頃、仲が良かった兄弟だ。金魚すくいか、片抜きかでもやろうか。それとも、綿あめか焼きイカ、焼きとうもろこしでも買おうか……
そして、目が覚めた――




