please continue everlasting
六月。 北海道以外の日本列島が梅雨に差し掛かる。 それは、当然彼が住んでいる街も例外では無い。
「……どうせなら曇りか土砂降りかはっきりして欲しいんだけどな」
傘をさしても意味が無いというわけでもなく、でもささなかったら濡れてしまう。 そんな微妙な天気にため息をつく。
「おっと、もうこんな時間か」
集合の時間が近づく。 玄関へ行き、傘を取り、外へでる。 少し歩けば、いつもの集合場所の公園。 その前に立つ、水玉の傘をさした少女。
「おそーい!! もう三分も待ってる!!」
「悪い、でも集合七分前だぞ? お前が早すぎるんだよ」
暗い外の天気とは対の、彼女の元気な声。
ショートカットという髪型が、余計に彼女の活発さを表す。
「いいの!! それより早く行こうよ!!」
「おう」
いつも通り手を繋ぎ、いつもの通りを歩く。 もう何回も彼と彼女が繰り返して来たこと。
「今日はどこ行く?」
「そうだな……紫陽花通りとかいいんじゃないか?」
「いいねそれ!!」
場所を決める。 少し彼女が早足になり、彼がそれに合わせる。
「あ、クレープ美味しそう!」
「寄ってくか?」
「うん!」
時折寄り道をしながらも、目的地へ。
「わぁ、見て見て! キレイ!!」
「青に赤に白に紫……すごいな」
色とりどりの紫陽花が咲き誇る。
雨だからか、彼ら以外にあまり人がいなく、とても幻想的な景色だった。
「ねえねえ、写真とろーよ!!」
「そうだな」
「……何でそんな素っ気ないの?」
「いや、そんなつもりは無いんだけど……」
もう、と。 頬を膨らます彼女。 その仕草がとても可愛く思えて、思わず笑ってしまう。
「何で笑うの!!」
「いや、お前が可愛く見えて」
そう言うと少し赤くなる彼女が、さらに愛しくて。
一瞬一瞬、全てをカメラに抑えたい。 でもそんなこと不可能で。
「もう!!」
余計に早足にになる彼女。 しかし、手は繋がれたまま。
彼は笑いながら、彼女についていく。
奥へ行くと、小さいながらも神社がある。
紫陽花で彩られた神社。 いつの間にか、彼女の顔は赤くなくなっている。
彼は、少しそれが残念に思えて。
「せっかくだからお参りしていこ!!」
「そうだな」
お賽銭箱へ。 彼女が投げ入れるのは、いつも十円玉。 これは、いつもありがとう、という意味らしい。
彼は、五円玉を。
「ねーねー、何て願った?」
「秘密」
えー、と言う彼女が可愛くて。
彼女といると、いつも飽きなくて。
だから、願うことは。
「永遠に今の日々が続きますように」