20(夢の中)
眩しくて目が覚めた。カーテンの隙間から陽がまさしく射ぬくように顔を照らしていた。
美香子は起き上がると、窓を開けた。途端に物凄い熱気とセミの鳴き声が襲ってきた。時計を見れば十時をとうに過ぎていた。布団を片付けようとして、ふいに思い出した。カナミ!
部屋のどこにもカナミがいない。美香子は部屋を飛び出し、叔母を呼んだ。「しーちゃん!」
「なんぞー」
はたして、カナミは居間に叔母と一緒にいた。「おはようさん。昨日は残念だったけど今日は大丈夫っぽい」
「うん?」叔母が何を云っているのか分からなかった。カナミを抱き上げ、訊き返す。「大丈夫って?」
叔母はリモコンのボタンを押して、テレビに天気予報を映した。太陽のマークがずらっと並んでいた。「流星。見に行こう」
カナミを撫でながら、昨夜のことを思った。夢のような、不思議な出来事。
「どうしたい?」
叔母はよいせっとちゃぶ台に手を突き立ち上がると、居間を横切り出て行った。「まだ夢の中かー」
どう云ったものかと思案していると、「顔、洗っといで」
そうした。
鏡を見ながら髪を整え、洗面所を出て居間に戻ると、叔母はボール箱を手にして待っていた。その箱には見憶えがあった。昨日、増田さんが配達してくれたやつだ。
「さて、美香子さん」
「はい」
「お誕生日、おめでとう」
差し出された箱、伝票とテープの剥がされた痕がなんともみっともない。
「ほら」
促され、抱えていたカナミと箱をトレードした。「開けていい?」
もちろん、と叔母は頷いた。美香子はちゃぶ台にそれを置いて座る。叔母も対面に座る。
箱の中にはかわいい動物柄のラッピングのされた包みが入っていた。取り出し、リボンをほどくと、「あっ」思わず声が出た。
手に取り広げる。染め抜いたフラワーが大胆にあしらわれた涼しげなレモンイエローのサマードレス。背が大きく開いて、肩ひもではなく首の後ろで結ぶそのデザインは、可愛らしさと大人っぽさがうまく組み合わせれていて、自分の持っているどんな服とも違っていた。立ち上がって身体に重ねてみる。ぴったりだった。生地の手触りが気持ちよくて、色もきれいで、着るものなのに着るのがもったいないと思った。
叔母を見ると腕にカナミを抱いてにこにこしている。
「ありがとう」素直に思った。嬉しかった。
「どういたしまして」
微笑む叔母の顔がまたどうしようもなく嬉しかった。
「なんと」縁側の向こうに紙袋を持った増田さんが立っていた。「妖精がいた」笑顔でサンダルを脱ぎ、夏の陽射しを背負いながら入ってきた。「そういえば昨晩、公民館に幽霊が出たって前園のおじさんがいってたなぁ」
増田さんは白地の柄モノTシャツに紺のアロハシャツ、カーキ色のハーフパンツ姿で、ヒゲもあたってさっぱりした顔をしている。紙袋から取り出したそれをすっぽり美香子の頭に乗せた。「お誕生日、おめでとう」




