僕と彼女
「今から死ぬの」
それが電話に出た最初の一言。
そして彼女の人生の最後の一言だった。
僕の友人の知奈が死んだ。彼女が生きた23歳3ヶ月の人生を、彼女は夜の海に飛び込み自分自身で終わらせてしまった。
自殺の原因はまだ解っていないらしく、遺書すら見つかっていない。
誰も、何故彼女が死んだか解らない。ただ唯一、彼女の死に際に声を聞いた僕でさえ。
僕はバイトを休んで知奈の葬儀に参列した。遺影の中の彼女は、笑顔でなく無表情で、まるで生きている僕たちに無関心のような顔していた。
葬儀から数ヶ月して、僕は携帯電話が怖くなった。彼女のあの最期の一言が、この媒体を通し聞こえた。そうを思うと、携帯は僕にとってただの恐怖の対象でしかなかった。
そうなってしまうと、何も出来なくなってしまった。バイトも、友人と会うのも、家族との連絡も…
そして、なにもなくなってしまった僕の脳内に彼女の声が響いた。
『今から死ぬの』
僕は彼女の影響で、僕をやめる事にした。