第四話 決闘
すると、ルカは嬉しそうな顔をして返した。
「負ける気はないからね」
ご飯を食べた僕達は、中庭の戦闘ができるスペースに行き準備を始めた。
決闘は基本的に安全面を考慮して木剣で行われる。正直、ルカはあまり強そうな感じはしていないというのが本音だ。
ともあれ、実際に戦えばわかる。
果たして、ルカは僕に剣技を使わせられるかなといった所。
「準備はいいかい? 俺はいつでも始められるよ」
「僕も準備できたよ。いつでも来い」
お互い睨み合う。
拮抗状態を破ったのは、ルカだった。
アランの方へ走り出すと、剣を前に突き出す。
形はなっているように見えた。でも、まだまだ甘いところが多い。
三十点。
アランは強く踏み込んで上へ高く飛び、ルカの頭上を取った。
そして、急降下しルカの背中に一撃叩き込んだ。
この一撃が決定打になり戦いが終了したと思ったが、意外にもルカは攻撃を耐えたのだ。
さすが、学院の生徒ってだけはあるようだ。
僕はもう一度剣を構える。
ルカは息を整えながらも剣を構えた。
次は、アランから打って出る。
剣に全身の体重を込めルカの剣にむかって打ち込む。剣と剣がぶつかった瞬間、ルカが後ろに弾け飛ぶ。
流石にやりすぎたかな。
「ルカ、大丈夫か?」
三メートルぐらい後ろでしゃがみこんでいるルカに声を掛ける。
「全然平気だよ。受け身を取れたから」
「それにしても凄い強いね、アラン。びっくりしたよ。負けてられないな」
おどかされたのはこっちもだ。
今の攻撃で、ちゃんと受け身を取れているんだから。
決着がついたかと思ったが、ルカはまだやる気のようだ。
ルカは剣に最大級の魔力を込めた。そして、アランに向かって走りだす。
アランはそれに対し、変わらぬ表情で剣に魔力を込めた。
「剣技 レクイエム・エレメント」
剣が青く光ると、ルカに向かい撃ち放った。
互いの魔力の籠った剣が衝突する。アランは冷静な表情で、ルカは緊迫し全体重を乗せていた。
しかし、衝突には力量差が出ていた。その結果、アランの剣と魔力に耐えきれず、ルカの剣が吹き飛んだ。
「やられたよ。アラン、君の勝ちだ」
これにて、決着はついた。結果は僕の勝ちだ。
でも、予想以上の戦いぶりを見せてくれたルカにも敬意を。
「ルカも強かったさ。君となら剣を高め合えそうだ」
教室に戻ろうと準備を始めた時だった。
一人の少女が声をかけてきた。
「あなた、見たことのない顔ね。名前は?」
「一年のアラン・ランドールです。君は?」
「私は、ロベリア・マグネム 一年よ」
うーん 初めて聞いた名前だな。
どこかで会ったことがある訳でも無さそうだし、なんの用だろう。
「アラン、私と決闘をしない? 腕には自信があるの」
なるほど、今の戦いを見た上での決闘の申し出か。
面白い。腕に自信があるなら、その力を確かめるとしよう。
「いいですよ。決闘しましょう! でも、僕が勝ちますよ」
「ふふ、戦えばわかるわ。私の力がね」
お互い、一定の距離を取り木刀を構える。
見た感じ、ロベリアは特別強そうには見えない。
いつの間にか、周りには人だかりが出来ていた。
二十人ぐらいはいるみたいだ。
そこにいる生徒達から様々な声が聞こえてくる。
「この決闘に勝てば三十人抜きだな」
どうやら、学院の生徒と手当たり次第決闘しているといった感じだろうか。
これまでに二十九連勝しているなら、なかなか期待できそうだ。
「行くわよ! アラン」
「来い、ロベリア」
ロベリアが大股で一歩後ろに下がると次の瞬間、凄まじいスピードで迫ってくる。
気迫は十分に伝わってくる。
剣の構え方も振りも悪くない。
アランは剣を横にし、ロベリアの剣を受ける。
そこから、ロベリアはおよそ十一連撃の攻撃を仕掛けてきた。
しかし、十一回の攻撃をアランは全て剣で受け流した。
なかなかしんどい。しかし、負ける気は無いのでここで防御を緩めることは無い。
魔力と火花が飛び散る。
「あなた、只者ではないわね。でも、これはどうかしら?」
ロベリアは、剣に魔力を込める。
「剣技 ドゥームズ・デイ」
風が吹き荒れ、空気の流れが変わった。
魔力のこもった剣がアランに振りかかる。
僕は納得した。
この威力の剣技を普通に打てるなら二十九連勝をするだけあると。
普通の生徒であれば、この剣を受ければ気絶間違え無しといったところだろう。
しかし、僕はそこらの生徒とは違う。
「なかなかの剣技だけど、僕には届かないな」
そう言ってアランは、剣の握る手を強めた。
「僕の剣技を食らえ」
「剣技 レクイエム・ガンマバースト」
剣を突き出す。
その瞬間、アランの剣先から魔力が正面に一本の線で解き放たれる。
そして、伸びていく魔力の光はロベリアの剣を捕えた。
その攻撃を受けきれず、ロベリアは地面に倒れこむ。
「凄まじい魔力ね。私の剣技が打ち破られるとは……」
「これで決着かな?」
僕は勝ちを確信し、構えを解いた。
「笑わせないでよね。一撃入れたぐらいでいい気にならない事。本当の勝負は、ここからなんだから!」
その時、鐘の音が学院に鳴り響いた。これは、授業五分前の鐘の音だ。
ロベリアは不満そうな顔をしながらも言った。
「決闘もここまでね。また今度、決着をつけるとしましょう」
結果としては引き分けとなった。勝利を手に入れられなかった悔しさはあるが、一撃入れられて優勢を取れたので満足だ。
教室に戻ったアランとルカ。
席に着くとすぐに、さっきの試合について聞かれる。
「本当に凄いね、アラン」
「あれくらい朝飯前さ」
「君は、どうしてそこまで強いんだい?」
そんなの決まっているさ、十五年の努力である。しかし、生まれてすぐに修行を始めたなんて言っても信じてもらえないだろう。
「強いて、いうなら努力かな」
ここは、言葉を濁す感じで答えた。
「努力……君はいったい、どこまで強くなったんだい?」
「うーん、最強かな」
「最強? それは伝説の生き物になってしまうけど、最悪の竜ベリアルを倒せる可能性がある?」
最悪の竜ベリアルはかつて地上を支配した、まさに最強と呼ぶにふさわしい存在だ。
当然、僕はベリアルとは戦ったことは無いので倒せると決めつけられた訳では無いが……
「まあ、本気を出せば倒せるだろうね」
「本当にすごいんだね、君は」
「まあ、僕はそこら辺の人間よりかは少し特殊だからね」
そう、忘れてはいけない僕は一応転生者なのだ。
午後の授業も終わり、帰り支度を始める僕とルカ。
「アラン。帰りに君に見せたい所があるんだけど、いいかな?」
「景色か、何か?」
「当たり! 君に見せたい綺麗な景色があるんだ」
「それなら、見に行くか」
「本当? 嬉しい。ありがとう」
前世から、綺麗な景色を眺めるのは好きだった。
この世界ならファンタジーな景色が楽しめそうだ。




