第二話 出会いは突然だった
今、僕は汽車に乗って外の景色を眺めている。
ヨーロッパなどに近い街並みをしていて、前世で海外旅行経験の無い僕にとっては胸が躍るものになっていた。
ついに入学の時が来たのだ。
転入学をするにあたって実技試験があったが、自分自身の実力で合格を掴んだ。最強なのだから特に問題は無いが。
なにより、学院での寮生活が楽しみで仕方ない。
学院の最寄り駅についたら一度寮に行き、荷物を置いてから学院に向かう。
そんなこんなで最寄り駅まで後一時間といったところ。
そこで、イベントが起きた。
僕の座っているひとつ前の席で、揉め合いが始まったようだ。
見てみると僕と同じ色合い・校章の制服を着た女の子が困った顔をして今にも泣きそうになっていた。
それもそのはず、目の前には大柄な男二人組が立っているのだ。
しかし、僕は臆することなく救いの手を差し伸べる。
「あのー、すみません。何かあったのですか?」
まずは、事情聴取から。
どうみても、チンピラに絡まれた少女を助けるイベントにしか見えないけど一応ね。
「兄ちゃん聞いてくれよ。俺たちの荷物をそこのお嬢ちゃんがぶつかった拍子に落としちゃったみたいでよー」
「中に入ってた商売道具を壊しちまったみたいで流石に、こっちとしても困ってるんだわ」
床に散乱しているカバンの中身を見ると、いかにも怪しげな注射器がいくつも入っていたのだ。
これはおそらく闇商売をしている人達だ。
そして、間違いない。
危険な香りがする。
とても困ったな。
流石に、ここで闇の商売人と戦ったら凄い恨み買いそうだし、目をつけられて有名になるとか嫌だな。
でも、女の子を見捨てるわけにもいかないし……
「今回ぐらいは許してあげませんか?」
やんわりとここから引いてほしいと伝えてみる。
これで駄目だったら戦おう。
「ここで、引いてちゃ商売できねえんだわ」
「兄ちゃんは席に戻りな。後は、俺たちでどうにかするから」
ありゃー、駄目だった。なら仕方ないか。
「今回の件は、水に流してもらう。でないと、僕も黙ってられない」
脅しの言葉を選ぶ。
前世の僕なら、間違えなく言えなかった言葉だろう。
「しつけえんだよ、ガキが。殺すぞ。」
そう言って、男達は小型のナイフを取り出した。
戦闘が起きる。
しかし、この狭い汽車の中では僕の腰に携えた剣を取り出すことも出来ない。
ナイフ対素手という盤面が出来上がる。
でも、素手側の僕は魔力で身体強化をすればナイフなど簡単にへし折れるので問題ない。
「引き際を知らねえ、お前が悪いんだー」
そう言って、ナイフが僕の腹にめがけて飛んでくる。その瞬間だった。
「待ちな」
突然現れた手によって、ナイフが抑えつけられる。
そして次の瞬間、ナイフが粉々に砕け散った。
片手で軽々しくナイフを破壊したのだ。
そして、破壊したのは僕でも、泣きそうな顔をしていた女の子でもなく黒と水色のコートを着た紫髪の青年だった。
「何か騒ぎがするので来てみれば、少年にナイフを突き出す男達がいるのでね。ひとまず、ナイフは破壊させてもらった」
そう言うと、紫髪の青年は続けた。
「まずは、話を聞かせてもらおうか。この王国騎士団所属 クロム・ハイエースに」
次の瞬間、闇商売人の男達は体をビクッと震わせ一気に怖気づいた。
「す、すみません。飛んだ、手違えでした。お騒がせしてすみません」
そして、駅に着き停車していた汽車から足早に去っていく。
その瞬間、僕は悟った。
この人、この世界ではすごく有名な剣士なのだと。僕は田舎者なので王都の事など全く分からない。それは、少し失敗した点だと思っている。多少、勉強すれば良かった。
そんな話は置いておき、クロムと名乗る男を魔力探知でなんとなくではあるが探ってみるとこれはビックリ。
すさまじい魔力が探知されたのだ。
その魔力量・魔力の精度は一級品だった。
今すぐにでも戦い気持ちが疼いているが、ここは冷静に。
ここで戦えば当然、戦闘狂の犯罪者になるし学院にも遅刻をしてしまう。
そうこう考えている内に、クロムと女の子が話をしていた。
「あ、あの、助けてくださりありがとうございます」
泣きそうになっていた女の子の顔は、安堵の顔に代わっていた。
そして、お礼を述べたのちに続けた。
「本当にもうだめかと思いました。ありがとうございます」
「間一髪のところだったけど間に合って良かった。怪我はないか?」
そこに僕が割って入る。
「クロムさん、助けてくれてありがとうございます。しかし、ナイフを砕くなんて凄いですね」
感謝を伝えたのちに探りを入れてみる。
「あの男達のナイフぐらい大したことないさ。それより、君も怪我はないか? よく、勇気を出して立ち向かったな」
うーん。あの男達程度のナイフぐらい大したことないか。
まあ、実力者ならそれも違和感はないか。
「その制服はラインブルクの生徒か。やはり凄い学院だな。そういえば君、名前は?」
「アラン・ランドールです」
「アランか、いい名前だ。僕のことは、クロムと呼んでくれ。ここで会ったのも何かの縁だ。呼び捨てで構わない」
よし、親密度が上がった。
これでクロムと戦う道が一つ進んだな。
「それじゃあ、僕はここで失礼するよ。君の勇気に感謝をアラン」
そう言うと、汽車を去っていった。
さて、僕も戻ると……
「あの! アラン君。先ほどは、助けてくださりありがとうございます」
「私、シノーペと言います。良ければ、隣の席空いたので座ってください」
そこで、僕とシノーペはそれぞれ自己紹介をした。
どうやら、シノーペは僕と同じ学院の一年生だったようだ。
彼女は、桃色の長髪で雰囲気はおっとりした感じ。後、胸がでかい。
結論から言えば可愛いに尽きる。
僕が今日から学院に転校してきたことを伝えると驚いていた。
「アラン君は転校生なんですね。私でよければ分からない事とかあったら聞いてください」
優しく接してくれて助かった。
正直、あまり女子と話すことがない前世だったからこういう時緊張してしまうのだが、今回は割と話せたと思う。
そんなこんなで、学院の最寄り駅に到着した。
僕とシノーペは汽車を降りて別れを告げる。
「一度、寮に荷物を置きに行くからここでお別れだね。またなんか困った事があったら手伝うから言って」
「はい! アラン君も学院で分からない事があったら言ってくださいね。頼りにしてください!」
「またね」
そうして別れを告げた。




