第十四話 敗北
「アラン!」
ルカが心配の声を上げる。突如、目の前から消え去った仲間を見て動揺していた。
しかし、ルカは戦いの途中である事を思い出し、フランに一撃入れようと地面を蹴って走り出すが
「ルカ! 落ち着け!」
後ろから、聞き覚えのある友の声がした。
そこで、ルカは踏みとどまり後ろを見るとそこにはアランが立っていた。
「アラン! 無事?」
「ああ、吸い込まれた瞬間は視界が真っ暗になったが、すぐにルカの後ろに立っていたさ。おそらく、フランの天武で後ろの方に転移させられたんだ」
アランは急いでルカの横に並び立った。そして、ルカと共に剣を構えた。
「なるほどね、理解力が少し高いみたいね。そこの少年は」
「そうだな。僕は過去に見てきたものがあるからな」
僕は前世の趣味だったゲームで、空間移動の能力を持つ敵と戦った事がある。
なんだったら、空間移動の能力を持つ主人公のアニメだって見たことある。
だから状況は直ぐに理解できた。
そして、弱点も把握している。
その弱点とはずばり空間移動後なのだ。
ワープをして地面に降り立つその瞬間こそが最大のチャンスと言える。
移動をしている瞬間は視界が真っ暗になっているのは確認済み。
ならば、移動をしている瞬間は周りの状況が分からないのである。
そこで、ワープ先を予測し迎え撃つことが出来れば、大チャンスなのだ。
ただ、問題はワープ先を予測する事。これを、どうするか。無条件でワープできるのか、それとも何か条件を踏むことでワープできるのかそれを突き止める事が重要になってくる。
「ひとまずは、近づいて攻撃をすることに集中しよう」
「分かった!」
アランとルカは再びフランに向かって走り出す。
そして、それを拒むように後ずさりをしながら素振りを続けるフラン。
現状、避けることは難しい。ならば、受けきればいい。そんなスタンスで進み続ける。
「アラン、良い考えを思いついた!」
「見ていて、一発入れてみせる!」
ルカはそう言い、魔法を唱え始めた。
「初級魔法 メトロ・サンダー」
雷魔法の基本となる魔法だ。
それでも、当たればそれなりのダメージが期待できるはずだが……
「待て、ルカ。やつに魔法は通じない!」
「え?」
フランに飛んでいく雷魔法だったが、突然目の前から消えてしまった。
そして、次の瞬間……
「ルカ! 伏せろ!」
アランからの指示を受け、咄嗟に伏せるルカ。
しゃがみこむルカの上をアランの剣が通過した。ルカの放った雷魔法が転移して出現したのを斬り裂いたのだ。
「なにが起きたんだ?」
ルカからの問いに、僕が答えた。
「フランは魔法を天武で吸収し、転移させ僕達に向けて放ったんだ」
「そうだったのか。ごめん、そこまで考えてなかった」
「いや、これはなかなか気づけないさ。気にすることは無い」
魔法はやっぱり通用しない。だから、剣で直接叩くしかない。
やはり、近づくしかない。
またしても走り出し、少しずつ距離を縮めていく。しかし、先ほどのように攻撃をしようとした時にワープさせられたら、振り出しに戻ってしまう。
そこで、一つ試してみたいことがある。
それが上手くいけばフランにダメージを与えられるだろう。
距離がだいぶ縮まったのを確認し、再びダメージ覚悟で攻撃を仕掛ける。
「剣技 レクイエム・バースト」
「何度やっても、結果は同じよ。私には通用しないわ」
再び、魔力の籠った剣を放った。しかし、今回は空中にはいかない。
足に力を込め、地面を強く踏み込み前へ飛び出すと斬り出した。
そこに、再び黒い時空の裂け目が現れる。
僕を吸い込もうと誘っている。
しかし、同じ手にはかからない。
僕は時空の裂け目の前で踏みとどまった。単純であるが、事前にわかっていれば対策が可能だ。
そして、裂け目が消えるのを待った。その間、僕は緊張感を高めた。
ブウォォン
裂け目が消えた! 今しかない。
アランはこの機を逃しまいと、全力で走り出した。
「剣技 レクイエム・ガンマバースト」
獲った。そう思った瞬間だった。
フランは不敵な笑みを浮かべ、こちらを見て言った。
「絶対天武 時間転移」
また、ワープさせられる。そう思い踏みとどまろうとした。
しかし、気付くと僕は地面に倒れこんでいた。
全身が痛む。意味が分からない。
何が起きた?
「少年。君は、私を舐めすぎだよ」
自分の体を見ると、いつの間にか体中が痣だらけになっていた。
所々から出血をしていて、体中がだるい。
「まあ、この能力までは分からないわよ。人間の能力の限界を超えて真価を発揮した力、それが絶対天武」
「私の時間転移は、対象の相手の意識を五秒後に送ることができるのよ。その間、対象の相手は五秒間何もすることができないわ。意識が未来に送られて、現在には無いのだからね」
「なんだよ、それ。そんなのありかよ」
僕は理不尽な現実を突きつけられ、不満を漏らした。
そんな無法すぎる技を使われたら、勝ち目がないじゃないか。
「ア、アラン! 無、無事か?」
ルカの声のする方を見た。
そこには、腹から血を流し地面に這いつくばっているルカがいた。
「クッ ルカに何をしたんだ」
「何をって、あなたが意識を失くし、立ち止まっている間、ルカ君はあなたを守ろうと私に攻撃をしてきたのよ。だから、攻撃に夢中で無防備になった可愛いお腹に一撃重いのをプレゼントしてあげたわ」
「安心して、死なない程度にはしたつもりよ」
くそ、勝てない。僕達は、また負けるのか。
ドスッ
僕の横に、誰かが吹き飛んできた。黄色髪の学院の服を着た少年が倒れている。
「ヒナタ……」
そこには、全身血だらけになったヒナタが倒れこんでいた。
「この黄色髪のガキは、思ったより戦えたな。俺に剣技を使わせたんだからな」
「それは、やるわね。こっちの、少年達も思ったより戦えたわ。でも、ルカ君は想像より弱かったわね。皇帝はあれのどこが気に入ったのかしら」
傷を負っているからといって僕達の前で、雑談を始めた大柄な男とフラン。僕達の事を舐めているのだろう。
しかし、まだ僕は諦めきれない。
諦めたくない。
ルカを……仲間を侮辱されて黙ってられない。
でも、体に力が入らない。
さっきの意識を飛ばされて殴られている間は、魔力で体を覆えていなかったんだ。
だから、骨も折れて肉や臓器も損傷して体が動かない。
そして魔力は負ったダメージを治すために使われていて体を動かすエネルギーとして使うことが出来ない。
つまり、積みだった。
誰も戦える者はいない。そして、助けも来ない。
「お話はここまでにして、ルカ君を連れて魔界に戻りましょう」
ルカにフランの手が伸びる。
ああ、ルカが連れていかれる。止めたいのに、何も出来ない。
「待ちなさい!」
突如、フランめがけて剣が飛んでくる。危険を察知したフランは後ろに下がって攻撃を回避した。
「ラインブルクの生徒を連れ去るなんて、生徒会が許しませんよ!」
生徒会……助けが来たのか。
助けに来たであろう生徒会の生徒を見たが、そこには女の子が一人立っているだけだった。




