プロローグ 諦めた日
夜空を映している窓に跳ねた血。べっとりと付いた血は、絶望的なこの状況を表すのに十分だった。
「こんなところで死ねない……」
アランの体には切り傷が何ヵ所もあった。塵も積もれば山となるとは、よく考えられたものだ。
それぞれの傷口から確実に出血している。そして、痛みが体を鈍らせている。
隣に立つシノーペと言う名の少女も、傷を負っている。綺麗な肌に傷がついており、僕に怒りの気持ちを抱えさせた。
隙を見せると次の瞬間には、男の剣が襲い来る。
アランはすかさず持っていた剣で攻撃を受けたが、圧倒的な威力に負け左腕を切り落とされた。
「ぐああっ」
切断された左腕に激痛が走る。それと同時に、脳にアドレナリンが流れ込み僕が止まる事を許さなかった。
アドレナリンに任せて剣を振り、カウンターを浴びせるが……
簡単に相手の持っていた剣でいなされてしまった。
僕はただ、男を見ている事しか出来なくなった。目は死んでいて冷酷な事が一瞬で分かる男にただ恐怖するしかなかった。
「死ね」
僕の全てを終わらせるに十分な一撃を放ってきた男の剣。
終わりだ。僕はここで終わるんだ。
そう悟り、剣を手放す。そして、下を向いた。
死を覚悟した僕だったが、なぜか死んでいない。しかし、血の匂いがする。最悪の状況を想定し前を見た。
そこには、胸を斬り裂かれ倒れ込むシノーペの姿があった。それは、僕の最悪に当たるものだった。
「シノーペ、どうして」
彼女こそ僕の希望であり一番幸せになって欲しいと、守りたいと思った人間だ。
それがどうだ? 僕を庇って死にかけているではないか。
「アラン君。ごめんね」
笑顔でそう言い残し、静かに目を閉じてしまった。
「嘘だ。嫌だ。受け入れられない……」
僕は怒りに任せ、再び剣を取った。
「カーデイル!」
男に向かい剣を叩き込む。
「剣技 破空」
しかし、この世界は無情だ。僕の剣は届くことなく、僕の腹を貫いた。
そして、僕は剣を落とし倒れ込んだ。それでも、濁っていく視界をどうにかシノーペの方へ向ける。
「僕が、もっと、強け、れば…… 君、を、守り……たかった」
苦しい思いをしながら残した言葉。
その言葉に、シノーペが応えた。
「私、の……せい、で…… アラン、君……ごめ、ね」
途切れ途切れで弱弱しい声を微かに聞いた。
そこで、僕のアラン・ランドールの人生は終わりを迎えた。




