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スペース飯テロ輸送艦 最強宇宙船で本物の食材を狩り尽くし、最高のグルメで銀河をわからせる  作者: 空向井くもり


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第92話 失敗作の活かし方

 フリーポート・ノヴァの市場区画の喧騒を抜け、さらに奥へ。

 俺たちが目指しているのはとあるリサイクルショップだ。


「ひぃ……こ、ここ、本当に家具屋さんがあるんですか……? どんどん暗くなってますけど……」


 エマルガンドが白衣の裾を握りしめ、俺の背中に隠れるようにして歩いている。

 すれ違う客はどいつもこいつもガラの悪いサイボーグや、腰にブラスターを下げた荒くれ者ばかりだ。研究室育ちの彼女には刺激が強すぎるかもしれない。


「安心しろ。データによれば、この奥に新品からリサイクル品まで手広く扱ってる店があるはずだ」


「リサイクル、ですか?」


「ああ。ま、品揃えの半分は『誰かが死んで不要になった家具』だが、正規ルートで横流しされた新品もあるらしい。選り取り見取りだ」


「えっ……」


 エマルガンドが青ざめる。


          ◇


 目的の店『スクラップ・インテリア』は、巨大な倉庫を改装した店舗だった。

 所狭しと並べられたベッドやデスクは、軍の払い下げ品のような無骨な中古品から、まだ梱包材に包まれたままの最新モデルまで、まさにごちゃ混ぜだ。


「へい、らっしゃい。何をお探しで?」


 店主と思しき男が、電子タバコを吹かしながら現れた。


「新しいクルーのためのベッドとデスクだ。それなりに質が良くて、清潔なやつを頼む」


「なら、こっちだ。中級居住区画のモデルルームで使われていた展示品上がりだ。新古品だが、モノは悪くない」


 案内されたのは、シンプルだが温かみのある木目調フレームのベッドだった。

 スプリングの効いた厚手のマットレスに、ヘッドボードには読書灯までついている。少なくとも、デフォルトの最低限のベッドよりは遥かに「人間らしい」生活が送れそうだ。


「エマ、これでいいか?」

「は、はい! マットレスがあるだけで十分すぎます……!」


 エマルガンドが恐縮しながらも嬉しそうに撫でている。

 とりあえず彼女の最低限の生活環境は確保できた。

 あとは配送の手配をして終わり――


 ガシャーン!! バキバキッ!!


 その時、店の奥から派手な破壊音と、何かが崩れ落ちる音が響いた。

 続いて、男たちの怒鳴り声と、慌ただしく走り回る足音が聞こえてくる。


「クソッ! またかよ! これじゃ売り物にならねえ!」

「おい、支えろ! 崩れるぞ!」


「……なんだ?」


 俺とエマルガンドは顔を見合わせた。

 音の方へ向かうと、倉庫の隅で店員たちが何やら木製の残骸を囲んで頭を抱えていた。


「どうした?」

「あぁ? ……いや、客に見せるようなもんじゃねえよ」


 店主が忌々しげに、足元に転がる木の棒――かつて椅子か何かだったもの――を蹴飛ばした。


「辺境の惑星から仕入れた『自然木の家具』だ。最近、富裕層の間でオーガニック素材が流行ってるって聞いたから、大枚はたいて買い付けたんだが……このザマだ」


 見れば、そこには椅子の残骸だけでなく、テーブルや棚だったと思しき木材の山が築かれている。

 どれもこれも、継ぎ目から無惨に外れ、バラバラになっていた。


「強度がまるで足りねえんだよ。輸送中の振動でバラけるわ、ちょっと動かせば崩れるわ……。欠陥品もいいとこだ」


「……ふむ」


 俺は残骸の一つを拾い上げた。

 ずっしりと重く、硬い。木材自体の質は悪くない。むしろ、かなり上等な広葉樹だ。

 だが、接合部を見て納得した。


「ホゾ組みか。……釘も接着剤も使っていない」


「ああ。向こうの職人が『伝統的な製法』とか抜かして、化学接着剤や塗料を一切使わずに組み上げてやがったんだ。おかげでこの有様だ。どうしたもんか」


 店主が吐き捨てる。

 だが。

 俺の目は、その「ゴミの山」に釘付けになっていた。


 ――自然木。

 ――無塗装。

 ――化学接着剤不使用。


 俺は木片を鼻に近づけ、匂いを嗅いだ。

 古い洋酒のような、芳醇で甘い香り。

 これは……『オーク材』に近い。


 俺の中で、パズルピースがカチリと嵌った。


「おい、おやじ」

「あ?」

「このゴミ、俺が引き取ろう」


「は? ……これをか?」


 店主が怪訝な顔をする。

 エマルガンドも「えっ、船長さん? そんな壊れた家具、どうするんですか?」と小声で聞いてくる。


「いくらだ? ここにある分、全部買う」


「……正気か? 修理するにしても、パーツが足りねえぞ」


「修理なんてしない。……『燃やす』んだ」


「燃やす……?」


 店主とエマルガンドが同時に声をハモらせた。


「ああ。これだけの量があれば、当分は困らない」


 燻製チップの条件は、ヤニが少なく香りが良いこと。そして何より、塗料や接着剤といった有害物質が含まれていないことだ。  この「家具の残骸」は、意図せずしてその全ての条件をクリアした、満足な燻製チップ素材だ。


「……変わった客だとは思ったが、まさか物を燃やして喜ぶ変態とはな。まあいい、処分料が浮くならタダでもいいくらいだが……」


「輸送費くらいは払うさ。ある程度のチップも付ける。配送ドローンに、こいつも積んでくれ」


 俺は端末を取り出し、別行動中のミナへ通信を飛ばした。


「あー、ミナか? こっちでいい買い物ができた」

『本当? こっちもいったん帰るところ』


 ミナとルシアは生活用品や消耗品の買い増しだ。人も増えたことだし、無くなったら事だからな。


「ミナ。相談なんだが、船に戻ったら硬い木材を細かく粉砕できるような道具、用立てておいてくれないか? 必要なら機材を買っておいてくれ」


『木材? うん、工業用の破砕機なら調整すればいけると思うけど……何に使うの?』


「帰ってからのお楽しみだ。」


 俺は通信を切り、宝の山を見下ろした。

 これで極上のベーコンをつくってみせよう。

 とりあえず全部辺境惑星から引っ張ってくる。ユルシテ


 面白かった、続きが楽しみ、と思っていただけたら「★」をポチッと!

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