表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スペース飯テロ輸送艦 最強宇宙船で本物の食材を狩り尽くし、最高のグルメで銀河をわからせる  作者: 空向井くもり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/96

第45話 もやし山盛りマヨ焼そば

 戦場跡のデブリ帯まで、あと30分。

戦闘とサルベージ作業に突入する前の、最後の休息時間だ。俺たちはブリッジ横の休憩スペース兼ダイニングに集まっていた。


「腹が減っては戦はできん。今のうちにカロリーを入れておくぞ」

「……賛成。緊張でお腹空いた」


 ミナが整備マニュアルから顔を上げ、頷く。

 俺はキッチンの棚から、とある「カップ焼きそば」を取り出した。

 パッケージには『超効率! 水切り不要! 旨味を逃さない吸水麺』と書かれている。


「……こいつか」


 俺はパッケージを見て、少しだけ顔をしかめた。

 一見、便利な機能に見える。貴重な水を捨てずに済むし、手間も減る。宇宙生活においては合理的だ。

 だが、その実態は「お湯を吸ってブヨブヨに膨れ上がった麺の塊」が出来上がるという、食感を犠牲にした悪魔の仕様だ。

 ソースの味も麺のデンプンに埋没し、ねっとりとした炭水化物の泥を食べている気分になる。なんということをしてくれたんだ。


「でも、今の俺には強い味方がいる」


 俺はミナと共にでっち上げた急ごしらえの冷蔵庫――ビジネスホテルのやつを想像してくれればいい――から、収穫して洗っておいた「もやし」……もとい「耐熱ツタの新芽」を取り出した。

 そして、もう一つ。

 ジャンク街の食料品店で見つけた、怪しいチューブ。


「マヨネーズ……のようなものだ」 「マヨネーズ?」


 ミナが怪訝な顔をする。

 パッケージには『万能調味油脂・マヨタイプ』とある。

 成分表を見ると、卵黄も酢も入っていない。乳化剤と酸味料、そして香料で味付けされた、ただの「ねっとりした味付き油」だ。

 高カロリーかつ保存がきくため、そのままチューチュー吸って非常食としても使えるらしい。狂ってるな。


「単体だと胸焼けする代物だが、こいつらを組み合わせれば化けるはずだ」


 調理開始だ。

 まずはカップ焼きそばにお湯を注ぐ。規定量は少なめだ。これが全部麺に吸われるわけだ。

 蓋をして待つ間に、高火力コンロに火を入れる。


 ボッ!!


 青い炎が中華鍋を包む。

 油を引き、ツタの新芽を投入。

 強火で一気に煽る。水分を飛ばし、シャキシャキ感を残したまま火を通す。味付けは塩コショウのみ。


「よし、麺が戻ったな」


 蓋を開けると、予想通り水分を一滴残らず吸い尽くし、一回り太くなった麺が鎮座していた。

 ここに付属の粉末ソースを混ぜる。箸が重い。粘度が高い。

 だが、ここに炒めたツタを山盛りに投入し、さらに「味付き油マヨネーズ」を迷わず絞り出す。


 グルグルとかき混ぜれば、完成だ。

 『カップ焼きそば・ツタ増しマヨビーム』。


「……見た目のインパクト、すごいね」

「食ってみろ。飛ぶぞ」


 俺たちはフォークを突き刺し、麺とツタを絡め取って口に運んだ。


「……ん!」


 ミナの目が開かれる。

 まず来るのは、マヨネーズ(油)の暴力的なコクと酸味。それが粉末ソースのスパイシーさと混ざり合い、濃厚なジャンク味となって脳を揺らす。

 そして食感だ。

 ブヨブヨで頼りない麺の食感を、炒めたツタの「シャキッ! ザクッ!」という痛快な歯ごたえが完全にカバーしている。

 むしろ、柔らかい麺がソースを吸ったスポンジの役割を果たし、ツタのみずみずしさと絡み合って、口の中で絶妙なハーモニーを奏でている。


「おいしい! 麺だけだと重いけど、野菜がシャキシャキしてて、どんどん入る!」

「だろ? この油マヨネーズも、炒め油代わりになって全体をまとめてる」


 カロリーの塊だ。

 一口ごとに、エネルギーが充填されていくのがわかる。

 非常食の油を吸いながら、炭水化物を流し込む。

 上品さの欠片もないが、これから戦場に向かう身体には、この「燃料」のような飯が一番だ。


「成分分析。炭水化物および脂質の過剰摂取を警告……ですが、精神的高揚による戦闘効率の上昇予測値を優先します」


 ルシアも呆れつつ、黙認してくれたようだ。


 ガツガツと平らげ、水を一気に飲み干す。

 腹の底から力が湧いてくる。


「ふぅ……食ったな」

「うん。満タン」


 ミナが満足げに腹をさする。

 その時、ブリッジのアラートが鳴り響いた。


「まもなく目的地座標へ到達します。デブリ帯への突入まで、あと5分」


 ルシアの声が、オペレーターのトーンに切り替わる。

 俺たちの顔つきも、一瞬で変わった。

 食事の時間は終わりだ。ここからは仕事の時間だ。


「よし、行くぞ! 戦闘にはならんだろうが、十分注意しろ!」

「了解! ジェネレーター出力、安定!」

「全兵装オンライン。シールド展開」


 俺はキャプテンシートに飛び乗った。

 目の前のスクリーンに、無数の残骸が漂う「鉄の墓場」が映し出される。

 さあ、宝探しの始まりだ。

 アキトの料理名とタイトルが違う?はて……?


 面白かった、続きが楽しみ、と思っていただけたら「★」をポチッと!

 アキトの明日の夕飯が少しグレードアップするかもしれません。よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ