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スペース飯テロ輸送艦 最強宇宙船で本物の食材を狩り尽くし、最高のグルメで銀河をわからせる  作者: 空向井くもり


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第16話 艦内探索

 ハイパードライブというのは、スイッチ一つで目的地にワープ、というわけにはいかない。

 超光速航行とは言っても、物理的な距離をゼロにする魔法じゃないからな。


 マッコウクジラに搭載されているドライブは、間違いなく最高品質の逸品だ。

 通常の民間船なら二週間はかかるアステリア星系への航路を、わずか数日で踏破できる。

 とはいえ数日という時間は決して短くはない。

 調べてみたが、娯楽系コンテンツは意外と物理媒体で取引されているようだ。レプリケーターのデータと同じだな。不正利用を減らすためとはいうが、船を降りて買わなきゃならん。小狡い商売だ。


「……暇だ」


 コックピットで俺が呟くと、隣に控えていた少女――ルシアが、手元のタブレットから視線を外し、ふぅ、と小さく息をついた。


 彼女が身に纏っているのは、黒を基調とした機能的なボディスーツだ。要所を覆う白い装甲板がエプロンのように見えなくもないし、頭部のセンサーユニットはカチューシャの形状をしている。

 要するに、開発者の趣味なのか何なのか、全体的なシルエットが「メイド」っぽいのだ。


「贅沢な悩みですね、マスター。……精神衛生上、これ以上の環境はないかと思いますが」


「せっかくだし、船内の見回りでもするか。まだ見てない区画もあるしな」

「良い心がけです。ご案内します」

「ご案内というか俺の船なんだが、もうルシアの方が詳しいだろうな、頼む」


 ルシアが音もなく立ち上がり、背筋を伸ばして恭しく一礼する。

 俺たちは連れ立って、居住ブロックからさらに奥、機関部へと続く通路へと足を踏み入れた。


          ◇


 結論から言えば、この船はでかすぎる。


 通路の床にもしっかり重力制御が効いているが、その足音が反響して遠くまで聞こえるほど、人の気配がない。

 時折、足元を清掃用ドローンがウィーンと低い駆動音を立てて通過していくだけだ。


 貨物ブロックの一つを覗いてみる。

 サッカーコートが丸々一面入りそうな空間に、俺たちが買い込んだ物資がちょこんと置かれているだけだ。その寂しさたるや。


「ここ、何に使えばいいんだか」

「……声が響きますね」

 ルシアがぽつりと呟き、広大な空間を見渡す。

「いつかここを物資で埋められるようになりたいもんだな」

「そうですね。そのためには、より効率的な稼働が必要です」


 次に向かったのは、艦載機用の格納庫だ。

 ここもまた、見事なまでに空っぽだった。

 かつて――つまり、この世界が現実になる前は、ここには俺が収集した小型艦コレクションが所狭しと並んでいたはずだった。


 苦楽を共にした初期艦、小回りの利く惑星探査艇、対小型艦・対大型艦それぞれの特化型戦闘艦。 見た目だけで選んだロマン機体や、メーカーの試作実験機なんかもあった。 アイテム倉庫になっていたやつもあったが、それでもズラリと並んだ光景は壮観だったのだ。


それらが全部、きれいさっぱり消え失せている。


「……ないな」

「ありませんね。リストにあった艦載機群は、初期化の波に飲まれたようです」


 わかってはいたが、実際に何もない空間を見ると来るものがある。

 コレクションとしてもそうだが、純粋な戦力でもある。優秀な小型艦を手に入れるのも大変だろうしな。

 俺は深いため息をついて、広すぎるハンガーを後にした。


 さらに奥へ進むと、予備の個室が並ぶ通路に出た。

 ドアを開ける。ベッドと机、ロッカーが備え付けられたシンプルな部屋だ。

 それが、通路の両側にずらりと並んでいる。ざっと数えて三十部屋はあるだろうか。


 整然と並ぶ空っぽのベッドを見ていると、ふいに胸が締め付けられるような感覚に襲われた。

 この船は本来、これだけの人間を乗せて、騒がしく旅をするための場所だったはずだ。

 今はただ、ドローンの駆動音だけが響く幽霊船ゴーストシップみたいだ。


「……掃除、ドローンに任せてるとはいえ、これだけの部屋数を維持するのは大変そうだな」

 俺が無理やり話題を変えるように言うと、ルシアは眉をひそめて首を横に振った。

「ええ。自律型の清掃ドローンが巡回していますが、動線を最適化し、統括するだけで、私のバックグラウンド処理の数パーセントを持っていかれます。誰も使っていない部屋をピカピカに保つというのも、虚しい作業ですね」


「……ドローンの統括程度で処理を持っていかれるのか? ルシアの性能向上とかはできないもんかね」

「可能です。ハードウェアの換装による演算能力の底上げ、あるいは外部サーバーを用いた分散処理などが考えられます。当然、莫大なコストがかかりますが」

「金か……結局そこに戻るんだな」

「世知辛いですね」


 俺たちは苦笑いしながら、長い長い廊下を歩く。

 足音が、カツン、カツンと虚しく響く。


 艦内最深部にある機関室のドアを開けると、そこには低い唸りを上げるハイパードライブ・コアが鎮座していた。

 青白い光が脈動し、船全体にエネルギーを供給しているのだが……こいつだけは、どう見ても普通の工業製品じゃない。


 実験技術やら特異技術やら、サイオニックパワーやらアーティファクトやらが組み込まれており、とにかく理論も構造もブラックボックスの唯一品だ。


 正直、ちゃんとした技術者に一度見てもらいたい気持ちはある。

 だが、こんな得体の知れない代物をうかつに見せていいものか。


「とりあえず、空き部屋は今のところ用途なしか。何か置くほどの物資もないしな」

 そこまで言って、俺はふとある事実に気づき、隣のルシアを見た。


「あれ? そういえば俺が寝ている間、ルシアはどうしてるんだ?」

「ブリッジで待機しております。今のところ、私に割り当てられた部屋もありませんので」


 涼しい顔で返された言葉に、俺は冷や汗をかいた。


「やっべ、すぐ決めよう。今決めよう」

「おや、よろしいのですか?」

「よろしいも何も、部屋は腐るほどあるんだぞ」

「私はアンドロイドですので睡眠等の休息行動は必要ありません。ですので催促はしませんでしたが……被服保管等のスペースは必要になりますし、決めておくのが合理的かと」


「よし、一番いい部屋を使え」

「承知しました。では、最もコックピットに近い部屋の個室登録をお願いします」


 コンソールで登録する俺にルシアは満足げに頷くと、真顔でとんでもないことを言い出した。


「それに、このデフォルトのボディスーツは性能も低いですし、AI的に言えば裸のようなものですから」

「はあ!? 裸で連れ回してたのか俺は!?」

「嘘です」

「……え?」

「ジョークです。しかし、従者として運用されるのなら相応しい衣装が必要なのは本当です」


 ゲーム時代の常識と違う部分が結構あるからマジで焦ったぞ。服か、俺の服も必要だな。最後に着てた装備じゃなくて初期配布のジャンプスーツなんだよな。こいつは万能だが、最低限の性能しか無いし。


 アステリア星系到着まで、あと二日。

 船内探索回。細かい設定がどうだっけとなる。矛盾点あればコメントどうぞ(o_ _)o


 面白かった、続きが楽しみ、と思っていただけたら「★」をポチッと!


 アキトの明日の夕飯が少しグレードアップするかもしれません。よろしくお願いします!

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