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スペース飯テロ輸送艦 最強宇宙船で本物の食材を狩り尽くし、最高のグルメで銀河をわからせる  作者: 空向井くもり


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第15話 おまとめ発送便

 輸送依頼なんてものは、探せばいくらでもある。

 だが、大口の荷物を一度に運べて、かつフリーで動ける船なんてものは限られている。

 大手運送会社に頼めないような規模の商人もいれば、急ぎで隙間を埋めたい荷主もいる。そういった奴らは荷物を小分けにして依頼を出さざるを得ない。


 端末の画面には、そんな小口依頼が山のように表示されていた。

 一つ一つの報酬は雀の涙だ。だが、やりようはある。


 俺は端末を操作し、複数の小口依頼を出している一人の商人にコンタクトを取った。


『傭兵管理機構の信用スコアは……ふむ、正直パッとしませんな』


 画面の向こうで、商人が渋い顔をする。

 まあ、そうだろう。俺はまだ駆け出しもいいところだ。

 だが、ここで引くわけにはいかない。


「俺の船を見てくれ。積載量は保証する。あんたが出してるアステリア星系への依頼32件、全部まとめて積めるぞ。手数料だって馬鹿にできるもんじゃないだろ」


『ほう?』


「それに、前回の仕事で世話になった商会からも一筆もらってる。確認してくれ」


 俺は前回関わった商人からの紹介データを送信した。

 そこには『マッコウクジラ』が単艦で仕事を請け負い、中型艦を含む宙賊に対して被害を出さずに撃退したという戦闘記録が添えられている。

 商人の目が少しだけ丸くなるのが見えた。

 船のスペックと、最低限の実戦証明。これだけあれば十分だ。


『……なるほど。確かに、バラバラに頼むより手間が省ける。よろしい、まとめて契約しましょう』


 交渉成立だ。


          ◇


 前金が入ったところで、まずは装備の補充だ。


「……ミサイル、一発でこれかよ」


 武器商人のカウンターで、俺は腕組みをして唸った。

 買えない額ではないが、気軽に撃てる額でもない。今はまだ、その時ではない。


「どうします? 軍の放出品で、性能は折り紙付きですが」

「……今回は見送る。まずは実弾だけでいい」


 俺は首を振った。

 ガウス砲の中でも小口径のものの弾や、マスドライバーで投射できそうな雑多なジャンクの弾を購入する。

 これなら、いくらかは気兼ねなくばら撒ける。


 多用途マスドライバーはほとんど名前の響きだけで導入した趣味武器だったが、実体弾兵装の中じゃこいつが一番つかえるかもしれんな。現実になった以上、武器以外の使い道だってできるだろう。


 さらに言うなら、ハイグレードなミサイルや大型弾薬の購入には、当局への申請が必要なようだった。

 言われてみれば、軍関係のクエストの報酬として解禁される武装は多かった覚えがある。よほどのことが無きゃ、軍の信用を得るのは時間も手間もかかる。

 金ができたら、裏ルートでもなんでも使ってどうにか工面する必要があるな。


 ついでに、残った金で輸送用の物資を購入する。

 依頼主の指定品とは別に、向こうで売れそうな嗜好品を少々。

 こういう小商いが、意外と馬鹿にならないのだ。


          ◇


 ドックを離れ、ハイパードライブのチャージに入るまでの数時間。

 完全な慣性航行に入ると、艦内は嘘のように静まり返った。

 ブーン、という空調の低い唸り声だけが、ここが真空の宇宙ではないことを教えてくれる。


 コックピットのシートに背中を預け、俺は天井を見上げた。

 無機質なグレーのパネル。


「……殺風景だな」


 いくらなんでも、もう少しこう、居住性が欲しいし、暇を潰せるものも欲しい。

 こういうのは全部、コロニーで手に入るうちに思いついてくれないかな、俺。


 ぐぅ、と腹が鳴った。

 思考が現実に引き戻される。

 内装よりも先に、まずは腹ごしらえだ。


 新設されたシンクの脇に積まれた備蓄コンテナを開ける。

 そこにはまとめ買いしたレーションが詰まっている。

 銀色の無愛想なパッケージを一つ取り出す。

 『マンプク・コーポレーション製:即席リゾット・キューブ』だ。


 封を切り、そのままかじりつく……わけにはいかない。

 コイツは水分を含ませて戻すタイプだ。

 適当な器に放り込み、お湯を注いで数分待つ。


 キューブは水分を吸ってブヨブヨと膨張していく。

 見た目は確かにリゾットっぽくなったが、漂ってくるのは人工的なチキンの香りだけだ。


 スプーンで掬って口に運ぶ。

「……ん」

 ぐねり、とした奇妙な食感。

 弾力が強すぎる。

 まるで小さく切ったコンニャクかを噛んでいるようだ。

 水分で無理やり体積を増やしました、と言わんばかりの密度のなさでこの食感。脅威のテクノロジーだ。なんでだよ。

 噛んでも噛んでも、米特有の甘みや粘り気はやってこない。ただ塩気と化学調味料の味が、舌の上を滑っていくだけだ。


「……食えなくはない、か」


 美味いか? と聞かれれば首を横に振る。

 じゃあ不味くて食えないかと言えば、そうでもないのが腹立たしい。


 水で流し込みながら、俺はため息をついた。

 先ほどの商談で稼げる金が手に入れば、もっとまともな飯が食えるはずだ。

 次のステーションに着いたら、絶対に人の作った飯を食おう。

 そう心に誓い、俺は残りの「ぐねぐね」を口に放り込んだ。


 さて。

 腹も一応満ちたことだし、もう少し内装について真剣に考えるとしようか。

 例えば、あの殺風景な壁に、美少女のポスターでも貼ってみるとか。

 ……いや、それはそれで落ち着かないな。



 部屋の掃除をしてたら期限が12月いっぱいのアルファ米がでてきた。あれは結構おいしい。


 面白かった、続きが楽しみ、と思っていただけたら「★」をポチッと!


 アキトの明日の夕飯が少しグレードアップするかもしれません。よろしくお願いします!

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