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スペース飯テロ輸送艦 最強宇宙船で本物の食材を狩り尽くし、最高のグルメで銀河をわからせる  作者: 空向井くもり


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第118話 フードプロセッサーへの道

ドックを出てすぐ、俺たちは商業区画の家電エリアを歩き回っていた。

 だが、俺が探しているミキサーやフードプロセッサーなんかの「調理家電」の類は、どこを回っても見当たらない。

 あるのは合成食料のサーバーや、レトルト食品の加温機ばかりだ。


「……ないな」

「そうですね。本コロニーの流通データを照合しましたが、個人向けの『食材加工機器』の取り扱いは皆無です」


 ルシアが残酷な事実を告げる。

 この時代、食事といえば汎用合成食(テイスティキューブ)が主流だ。

 わずかに流通しているレトルト食品や冷凍食品も、加熱するだけで食べられる状態でパッケージングされている。


「オーブンやレンジといった『加熱調理器具』は需要があります……いえ。マスターが所有する『スチームコンベクションオーブン』でさえ、このコロニーでは手に入らない希少品(レアアセット)です。ここにあるのは、レトルト食品を温めるだけの単機能な加熱機だけ」


 フリーポートでオーブンが買えたのは、あそこが辺境かつ屈指の交易拠点だったからこその幸運だったらしい。

 一般的なコロニーでは、加熱さえできればいいという効率重視の設計が当たり前なのだ。


「食材を焼くだけでもハードルが高いのですから、それを粉砕・加工する工程など、一般家庭では不要とされています。固形物はそのままかじりますし、柔らかいものは最初からペースト状で供給されますから」

「世知辛い世の中だな……」


 俺が肩を落としかけた、その時だ。


「……ん。諦めるのはまだ早いよ」


 ミナがアキトの袖を強く引いた。


「私が最強のやつ、作ってあげる」


 そう言って、彼女は通りの向こうをビシッと指差す。

 その先にあるのは、宇宙船の廃材や産業機械のパーツが無造作に積まれた、薄暗いジャンク屋だった。

 店の軒先には、焼け焦げたスラスターや、何かの装甲板らしき金属塊が山のように積まれている。


 ミナは俺の手を引き、迷いのない足取りでその店へと向かった。

 一歩足を踏み入れると、鼻をつくのは焦げた絶縁体と金属の匂い。

 店内は迷路のようにうず高く積まれた電子部品や駆動ユニットの山で溢れかえっており、天井のパネルライトが、乱雑に積まれた棚を青白く照らしている。


 だが、俺にとってはただの産業廃棄物の山でも、ミナにとっては宝の山であるらしい。

 彼女の丸いネズミ耳はレーダーのようにピコピコと動き回り、視線は忙しなく棚を走査している。


「あった! アキト、見てこれ! 大型冷却ポンプに使われてた、可変磁気軸受モーターだよ!」


 ミナが棚から、グリスの染み付いた重そうなパーツを引っ張り出し、目を輝かせて叫ぶ。

 その顔は、まるで最高級の霜降り肉を見つけた時のように輝いている。


「これね、今の民生品とは精度が違うの。制御チップを書き換えれば、低速から超高速まで、すごく細かく回転数を制御できるんだよ」

「……お、おう。すごいな」


 俺にはただの重い鉄塊にしか見えないが、彼女のエンジニア魂には火がついているようだ。

 さらに彼女は、店の奥から鈍い光沢を放つ板状の素材を見つけ出した。


「こっちにはチタン・セラミック複合材の端材……! すごい、これ削り出せば、硬い鉱石だって豆腐みたいに砕けるブレードが作れるよ」

「……なあミナ。お前、それで何を作る気だ? 採掘機か何かか?」

「え? 違うよ。フードプロセッサーの刃を作るの! 相談したじゃん」


 ミナは事もなげに言った。

 ……フードプロセッサー? この産業用モーターと複合材の刃で?


「だって、アキトがどんな食材を見つけてくるか分からないでしょ?」


 彼女は真剣な眼差しで、その「素材」を愛おしそうに撫でる。


「もし、すっごく硬い殻とか、骨のある生き物を加工する時、パワー不足で壊れちゃったら困るし」

「……まぁ、そうだな。未知の惑星には何がいるか分からないからな」

「だから、わたしが最強のやつを組んであげる。これなら、どんな未知の食材相手でも負けないはず」


 頼もしい。彼女なりに俺の料理と、これからの旅のことを考えてくれていたらしい。

 岩をも砕くフードプロセッサー。……確かに、未知の惑星で何が食材になるか分からない以上、過剰なくらいの性能があった方が安心かもしれない。


「店主のお爺ちゃんに交渉したら、ジャンク扱いだから……このブレードとセットで10000クレジットくらいでいいって」


 10000クレジット……。

 それなりの値段だが、市場に存在しない「最強のプロセッサー」を一から作ると考えれば、むしろ安いくらいか。

 確か、業務用の高性能なミキサーなんかは、これの数倍はしたはずだ。


「よし、買え。交渉は任せる」

「やった! 任せて、船長!」


 ミナは弾むような足取りで、頑固そうな店主が居眠りをしているカウンターへと向かっていった。


          ◇


 ミナの戦利品である「調理家電」のパーツを配送ドローンに積み込み、俺たちは店を後にした。


「さて、次はエマルガンドの番だな」

「は、はい……! よろしくお願いします、アキトさん」


 エマルガンドが小さく頷く。

 彼女の買い物は、俺たちにとっても重要なものだ。


 俺たちは、商業区画の奥にあるエリアへと向かった。

 最強ミキサーのバイタミックスくんちょっとほしい。

 一番高いのは16万でした。こんな高かったかな……。 


 面白かった、続きが楽しみ、と思っていただけたら「★」をポチッと!

 アキトの明日の夕飯が少しグレードアップするかもしれません。よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
追いついてしまったか 更新が待ち遠しいな ミナの工作も何気に好きなのよね でっきるかな〜
しれっと言ってるけど、5万で年収で1万… でも本物の料理の値段を考えると料理人として仕事をすればフードプロセッサーを使う料理ですぐ元が取れそう。 (食材のつてがきついが)
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