表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スペース飯テロ輸送艦 最強宇宙船で本物の食材を狩り尽くし、最高のグルメで銀河をわからせる  作者: 空向井くもり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

115/120

第115話 『新鮮イワシ定食』

 航行中のブリッジで俺はメインモニターをチェックしていた。


「ルシア、オービットへの到着予定時刻は?」

「現在の巡航速度を維持した場合、48時間後にドッキング・ベイへ接続可能です。依頼主の専用コンテナも異常ありません。現在、温度・湿度ともに最適値を維持しています」


 ルシアの報告に、俺は軽く頷いた。

 積み込んだ貨物の状態は良好だ。

 依頼遂行に支障はないだろう。


「……よし、一段落だな」


 大きく伸びをして、息を吐く。

 緊張の糸が解けると同時に、腹の虫が小さく鳴った。

 時計を見れば、丁度いい時間だ。


「飯にするか」


 俺は立ち上がり、キッチンへと向かった。


          ◇


「マスター。夕食の準備ですか?」


 キッチンに入ると、ルシアが先回りしてお茶の準備をしていた。


「ああ。とびきり鮮度のいいやつが入ってるからな。刺身にする」


 俺は冷蔵庫から、一匹の魚を取り出した。

 アズライト・シャイナー。

 地球のイワシによく似た、青く輝く小型魚だ。

 鮮度維持フィールドから出したばかりのそれは、死後硬直すら始まっていないかのように身が張っている。


 まな板の上に置き、包丁を手に取る。

 キッチンには水流の音だけが心地よく響く。


 まずは頭を落とし、腹を割く。

 内臓を傷つけないように素早く掻き出し、血合いを流水で洗い流す。

 鮮度がいい魚は、水に濡れると宝石のように輝く。青い背中と銀色の腹、その境界にある虹色の光沢が美しい。


 今回は手開きで捌いていく。

 中骨に親指を添わせ、ズルリと滑らせるように身を開く。

 包丁を使うよりも身に熱が伝わらず、骨も綺麗に取れる。イワシのような小魚には、この方法が一番だ。


「……しかし、こうして魚を扱うとなると、このキッチンも少し手狭だな」


 シンクの深さや作業スペースの広さが、本格的に魚を扱うとなると少し物足りない。

 以前の冷凍食品を温めるだけの生活なら十分だったが、こうして「料理」をするようになると不満が出てくる。

 いずれ改装も進めたいところだ。


 そんなことを考えながら、開いた身を冷水に潜らせる。

 キッチンペーパーで水気を拭き取ると、指先に吸い付くような弾力が伝わってきた。


「いい匂いですぅ……!」

「アキトー! まだー?」


 準備が整う頃、鼻をひくひくさせたエマと、待ちきれない様子のミナがキッチンに入ってきた。


「おう、丁度できたところだ。座って待ってろ」


 俺は人数分の皿に、銀色の切り身を丁寧に並べていく。

 薬味には、ショウガモドキのすりおろし。

 そして合成米を用意する。


 イワシの刺身定食、完成だ。


「おおー! これ、アズライトシャイナー?」

「綺麗ですぅ……。宝石みたい……」


 食卓には、既にルシアがお茶を用意して待機している。

 俺たち三人は席に着き、手を合わせた。


「いただきます」


 俺はテーブルに置かれた醤油差し――巨大な備蓄タンクから、扱いやすい小型容器に移し替えたものだ――を手に取る。

 小皿に傾けると、トクトクという音と共に黒い液体が注がれる。

 夢にまで見た本物の醤油を、こうして日常的に使える。この光景だけで、胸に来るものがある。


 ミナとエマも真似をして醤油を注ぎ、刺身へと箸を伸ばした。

 たっぷりと醤油を絡ませて、白飯と共に口へ運ぶ。


「んん~っ!! おいしい!」

「冷たいのに、口の中で溶けますぅ……! このタレ……醤油がまた、最高に合いますぅ!」


 ミナは満面の笑みで頬を膨らませ、エマルガンドは眼鏡を曇らせながら恍惚の表情を浮かべている。

 俺もまた、刺身と白飯を掻き込んだ。


「……美味い」


 温かいご飯の熱で、刺身の脂が活性化する。

 米と魚、そして醤油。

 これ以上の組み合わせが、この宇宙にあるだろうか。

 米の課題はまだ大きいが、しかし咀嚼するたびに幸せが溢れてくる。


「マスター、良い表情ですね」

「ああ。……やっぱり、魚はこうじゃなくちゃな」


 俺は空になった茶碗を見つめ、小さく笑った。

 更新を再開しますよ!!!


 面白かった、続きが楽しみ、と思っていただけたら「★」をポチッと!

 アキトの明日の夕飯が少しグレードアップするかもしれません。よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
刺身の醤油がついたご飯っておいしいよね。 合成米もそうなんだろうか。
準備が整う頃、鼻をひくひくさせたエマと、待ちきれない様子のミナがキッチンに入ってきた。 捌いただけなのに部屋内に良い匂いがするとは…ファンタジーなイワシだな
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ