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スペース飯テロ輸送艦 最強宇宙船で本物の食材を狩り尽くし、最高のグルメで銀河をわからせる  作者: 空向井くもり


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第112話 卸売り市場での挑戦

 港のさらに深部、重厚な防熱扉が重低音を響かせてスライドすると、そこにはリゾートの華やかさとは無縁の、青い燐光が支配する巨大な空間が広がっていた。


「……そういえば、まだ名乗っていなかったな。俺はカイだ。コーディネーターってのはここでの対外取引担当でもある。アズライトの『裏の顔』へようこそ」


 コーディネーターの男――カイは、重いブーツの音を響かせながら短く自己紹介をした。


「……すごい。これ、単なる保管庫じゃないね。磁気浮上の同調精度がめちゃくちゃ高いし、電力ラインの密度も異常だよ。一体どれだけの熱量を管理してるの?」


 ミナが技術者としての目を輝かせ、巨大な構造体を見上げて驚愕の声を漏らす。


「お目が高い。ここはこの惑星の『生命線』だ。数億クレジット相当の獲物がここで管理されてるからな」


 カイの言葉通り、そこは『アズライト・プライム』の全海域から集められた獲物が集結する、ギルド直営のストックエリアだった。巨大な磁気浮上コンテナが音もなく縦横無尽に行き交い、ホログラムの価格表が吹雪のように空中で激しく明滅している。

 透明な円筒形の保存カプセルの中には、最初に食べた『シザーズ・シェル』の巨大な個体や、銀色に輝く未知の魚たちが、人工的な冬眠状態で静かに横たわっていた。


「ここにあるのは全部、帝都の最高級レストランや、一部の特権階級へ直送される『本物』だ。帝都の市場に出れば、ここでの卸値の何十倍って値になる代物だぜ。……中身の方は融通してやる、欲しいものがあれば言ってくれよ」


 カイが顎で指した先には、俺の船に積み込まれる予定の星間輸送用コンテナが二基、ドローンに乗せられて待機していた。


「カイ、一つ気になっていたんだが」


 俺は立ち並ぶカプセルを眺めながら、以前から抱いていた疑問を投げかけた。


「観光向けのガイドには、この星の魚を扱うには特別な資格がいると書いてあった。俺のような余所者が、これだけの量を持ち帰るのは問題ないのか?」


「そりゃあ、あんたがこの街で店を開いて、客に魚を捌いて出すってんなら、ギルド発行の資格がなきゃ一発で営業停止だ。だが、自分の船に積み込んで、旅の途中で自分で焼いて食う分には、誰も文句は言わねぇよ」


「そうか、それはよかった」


「当たり前だ。こっちの職人が完璧に三枚に下ろして、小分けに包んだ『切り身』にしてから急速冷凍してやる。それが一番確実だ。折角の獲物を素人に渡して、ゴミにされちゃたまんないからな」


「……待て。今、『切り身』と言ったか?」


 俺の問いかけに、カイが怪訝そうに眉を寄せた。


「ああ。最高級の身を、一番使いやすい形にして引き渡してやる」


「……いや、断る。基本は姿のままでいい」


 俺の言葉に、カイが足を止め、疑念の混じった目でこちらを振り返った。


「あんた、正気か? 捌くのはどうする。あんたの船に、魚をそのまま処理できるような聞いたことも無いような自動化された設備があるのか?」


「設備なんて必要ない。俺が自分の手で捌く」


 俺は一呼吸置き、具体的な注文を付け加えた。


「今買ったコンテナに積む分は、内臓だけ処理してくれればいい。……だが、俺の船に元々あるクラス3の鮮度維持フリーザーに入る分は、内臓もそのままでいい。完全に獲れたての状態で積み込みたい」


 静寂が、市場の機械音を一時的にかき消した。

 カイは目を細め、値踏みするように俺を凝視した。その視線は、単なる客としてではなく、同じ領域に生きる職人としての厳しさを帯びていた。


「……手作業で、だと? 冗談はやめな。この星の獲物は繊細なんだ。熟練の職人が専用の刃物を使わなきゃ、まともな切り身にすらならねぇんだぞ」


 カイは近くの作業台に横たわっていた、一匹の『アズライト・スナッパー』を指差した。一メートルを超える巨体。碧い鱗は硬く、しかし指先で触れた感触は、驚くほど地球の『真鯛』に近かった。

 骨の入り方、身の弾力、そして内臓の位置。先程食べた時の味の記憶と合わせれば、その内部構造もまた、俺が知り尽くしたあの魚とほぼ同一であることは明白だった。


「いいか、俺は気前のいい客は好きだが、命を無駄にする奴は嫌いだ。姿のまま持って行く分にギルドの資格は必要ねぇが、ちゃんと扱えない奴には一匹たりとも譲れねぇ。……あんたが本当に『捌ける』ってんなら、ここで証明してみな」


 カイが腰のベルトから、無造作に一振りの作業用ナイフを抜き、台に静かに横たえた。


「こいつを完璧な三枚にしてみな。話はそれからだ」


 周囲で作業していた職人たちが、突発的なイベントに手を止めて集まってくる。  俺は腰に下げた自前の包丁の重みを確かめ、一歩前へ出た。


「……カイ、あんたのナイフは必要ない。俺には、俺の相棒がいる」


 アズライト・プライムの冷気が、肌を刺す。


「――料理人の仕事の時間だ」

 カイの名前をすっかり忘れていてちょっと困ったわけではありません。決して。

 最近、魚を捌く動画をめちゃめちゃ見ています。


 面白かった、続きが楽しみ、と思っていただけたら「★」をポチッと!

 アキトの明日の夕飯が少しグレードアップするかもしれません。よろしくお願いします!

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