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第7話〜決死の覚悟のその先で〜


獣に囲まれながらもなんとか3匹を仕留め、残すは3匹…

だが既に俺の左腕は使い物にならず、出血で意識が朦朧としてきている。

まさに満身創痍といった状況…これであと3匹を相手しなければならないというのだから絶望的である。


さらに悪いことに仲間を殺されたことで危機感が募っているのか、獣達は無理に攻めてくるようなことはなく、手負いの俺をじっくりと観察している。


最大限弱りきって、安全に殺せるようになったところで仕留める算段なのだろう。


「クソが…ならこっちから仕掛けてやるよ…テメェらなんざ片手で十分だ!!」


右手で剣を構えて獣たちを見据える。

幸いにも魔法で作られた剣はその頑丈さの割に重量が極めて軽く、片手でも充分に振るうことができる。


俺は壁から離れて、獣達に向かって駆け出す。


これで死角から攻撃する機会を与えることになったが、それでも構わない。


なぜなら奴らは獲物の怪我の具合を見ながら攻撃するかどうか判断できるほどの知能のある獣だ。


そんな相手にこちらが隙を見せたらどうなるか…


「見えてんだよ!」


一匹がすぐさま背後に回り込み、俺の死角を突いて攻撃してくる。

だが、それはこちらの想定通りだ…あえて隙を見せたことで攻撃を誘導したのだから。


俺は背後からの一撃を剣で受け止めながら、獣の下顎を蹴り飛ばす。


‐ガウゥッ!?‐


蹴りをもらうのは予想外だったらしく、獣は完全に耐性を崩し仰向けで地面に倒れる。


「4匹目ぇぇっっ!!」


その腹に向けて剣を突き立て留めをさす。


これで残りは2匹…!!


いける、勝てる。


…一瞬よぎったその油断が命取りだった。


「ぐぁぁぁぁっ!!!???」


迫ってきていた2匹の獣が同時に俺の足と剣を持った右腕に噛み付いてきた。


こいつらはさっきの一体を囮に使ったのだ。

俺は獣達を出し抜いたと思っていたのに、実際は奴らの狩りの術中にハマっていたのだった。


「がぁぁぁぁっ!!ぐっ…離れろぉぉぉ!」


腕と足を振り回して振りほどこうとしても、しっかりと噛みつかれてびくとも動かない。


ミシミシと骨が軋む音が響き、まず足の骨が砕かれる。


「があぁぁぁぁぁぁ!!!!!???」


肉ごと骨が噛み砕かれるあまりの痛みに、自分のものとは思えないほどの絶叫が響く。


そのまま獣はさらに噛む力を強め、次に腕を砕こうとする。


利き腕を折られるのはまずい…俺の頭に警鐘が鳴り響く。


でもどうすればいい?剣を使えなきゃこんな化け物を振りほどくことなんてできるわけがない。


痛みと恐怖の中で必死に考える。

何かないのか…こいつらを殺すための何か…


ふと俺の目の前に光り輝く何かが目に入る。

これなら…


「こうなりゃ…一か八かだ…っ」


最後の力を振り絞り、左手を使って右腕に噛みつく獣に目つぶしする。


その痛みにより一瞬だけ獣が怯むが、それでも右腕から口を離すことはなかった。


だが、狙いはそこじゃない。


今の一瞬で獣が込める力が弱まった…今なら…


「くらえっ!!」


獣に噛みつかれた状態のまま、強引に剣を振るって足に噛みつく獣に一太刀浴びせる。


正確に喉元を狙った一撃によって、足元の獣は血を吹き出しながら地に伏せる。


これでラスト1匹…だがここで俺の右腕は怒り狂った獣によって砕かれる…。


「がぁぁぁぁ…っっ!!」


力なく垂れ下がった手から剣がこぼれ落ち、鋭い痛みが身体を襲ってくる。

だが今はそれを気にしている暇はない。

両腕が使えなくなり、完全に戦う力を失った俺に止めをさすために獣がその大きな口を開けて俺に迫っているのである。


ようやく最後の1匹というところまで来たのに、いよいよ打つ手無し。

あとは一方的に蹂躙されるだけ…


そう獣は考えたのだろう。


「甘いんだよ、犬ころ…っ」


その牙が俺を噛み殺そうとした刹那、口に咥えたナイフで獣の喉元に突き刺さる。


‐ガルルルッ!!?‐


何が起こったのか分からない様子の獣。

当然だろう、俺はさっきまでナイフなど持っていなかったのだから。


ではそんなものをどこで手に入れたのか。

答えは簡単、さっきの女が使っていたものが足元に転がっていたのだ。


それをさっき噛みつかれた拍子に回収し、最後の一撃に使った。

つまりこれは完全に偶然の一撃であり、いくら頭の切れる魔物でも予想できなかったというわけだ。


突然喉元を刺された獣は苦しそうに呻きながら後ろに飛び退こうとする。だが…


「させるかよ、これで…終わりだっ!!」


最後に残った左足でナイフを思いきり蹴りつける。

その一撃によってナイフは喉を貫通し、ついに獣はその場に伏して動かなくなった。


「はははっ…やってやったぞ…」


ようやく終わった…だがもう身体はほとんど動かない。


とは言えこのまま血を垂れ流し続けていたら失血死しかねない。

早く起き上がって止血だけでもしなければ…


痛む身体に鞭を打ち、なんとか上体を起こした瞬間、俺は本当の意味で絶望というものを知った。


「嘘…だろ…?」


仲間の死体の匂いを嗅ぎつけたのだろうか。


数十匹という獣の群れがこちらにゆっくりと近づいて来ていたのだった…



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