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第6話〜弱肉強食の世界〜


「はぁはぁ…やったぞ…」


目の前で横たわる女を見手実感する。

本当にギリギリだったが、俺が勝った。


なんとか生き残ったのだ。


だが、それは同時に俺が彼女に手を下したことを意味していた。


俺はこの手で生涯で初めて人間を殺めたのだ。

その事実を再認識した時、自然と手が震えるのを感じ同時に吐き気が込み上げてきた。


仕方がなかった、正当防衛だった。

殺らなきゃこっちが殺られていたんだ。

そもそもここは俺がいた世界とは違う、きっとその女のように殺人が当たり前になっているんだ。


そんな風に理屈をいくつも並べてみる。

だがそれでも、元の世界で培ってきた殺人という罪の重さを掻き消すことはできなかった。


だが、世界とは実に残酷なものでいつまでも干渉に浸ることを許してはくれない。


‐ガゥルルルル‐


死体が放つ血の匂いに呼び寄せられたのだろうか、赤く血走った目をした、真っ黒な狼のような生き物が後ろから歩み寄ってきていることに気がつく。


こちらに敵意を向けていることは明らかである。

俺からこの死体を奪おうとでも考えているのだろうか。


「なんだよ…っ、死体が食いたいならくれてやるよ…!」


俺は慌てて死体から離れ、狼のような獣にそれを譲ろうとする。

獣は一瞬死体の方に目をやったが、すぐにこちらに目を向け直してジリジリと歩み寄ってくる。


「クソが…狙いは俺かよ…っ」


剣を構えながら、にじみ寄ってくる獣と距離を取ろうとする。

だが、そこで気がつく。狼が一匹ではないことに。


後ろに1匹さらに両サイドに2匹づつ…


気がつけば合計6匹の獣が俺を取り囲んでいたのである。


「嘘だろ…っ、ふざけんじゃねぇよ畜生…!!」


あんな想いをしながら、殺人鬼を殺して繋いだ命だというのに、それをこんな化け物に奪われてたまるか…!


俺は覚悟を決めて獣達と向き合う。


四方から一斉に飛びかかられたらまずい。

だからまずは少しでも攻撃範囲を狭めなければ…


「うぉぉぉぉぉ!!!!」


大声を出して威嚇しながら横にいた狼に向かって突進していく。


‐グルルッ!?‐


突然の雄叫びに動揺したのだろう。

獣が一瞬だけ怯み、にじり寄っていた動きが止まる。

俺はその一瞬を利用して1匹に目がけて剣を突き立てる。


「まずは1匹…っ!」


仲間が頭を突き刺されたことで、さらに動揺を誘ったらしく、隣にいた獣がたじろいでいるのが分かる。


こいつを殺すなら今が好機だが、その隙に背後にいる4匹に飛びかかられたら終わりだ。だから…


俺は横の1匹の隣を駆け抜けて、廃墟の壁際まで走った。

壁に背中を張り付けるようにして、再び剣を構える。


後ろに引けないのは苦しいが、これなら獣が俺の死角を狙ってくることはない。


前だけを見て残りの5匹を処理すればいいんだ、いけるはずだ…


覚悟を決めて獣に向き合うと、獣達はまるで狩りを楽しむかのように、唾液を垂らしながら口元を歪めた。


「この…!舐めやがって…!」


獣のこちらを見る態度に腹が立ったが、そんなことで冷静さを欠いてはだめだ。

論理的思考こそ人間の武器、その思考を手放したら死を招くだけ。


俺は1つ深呼吸をして、心を落ち着ける。

その間にもジリジリと獣が距離を詰めてきていたが、幸いにも今の一瞬で焦りや恐怖心は消えており、戦いに集中することができるようになった。


来る…


殺気を感じそう直感した刹那、2匹の獣がこちらに駆け出してくる。


2匹同時…だがさっきの女より遅い。

これなら目で追える…!


先に来た1匹が爪で俺の喉を狙ってきたが、寸前で身をかがめてそれを躱す。


「喉を狙ってきた…ってことはこの世界でも生物の弱点は同じなんだな!」


言いながら俺は剣を突き出し、逆に獣の喉元に向かってそれを突き立てる。


血飛沫が舞いながら1匹仕留めることに成功する。

でもまだだ、もう1匹がすぐ目の前まで迫っている。


‐ガルルルッ!!‐


身を起こして獣から距離を取ろうとしたが、既に獣はその大きな口を開け、俺の喉元に食らいつこうとしていた。


「くっ…」


咄嗟に俺は左手を前に突き出し、喉元を守る。

狼がそのまま俺の腕に食らいつき、その鋭い歯が肉を食い破る感覚が鮮明に伝わる。


「がぁぁっ!!!?」


気をやりそうになるほどの鋭い痛み。

今にも叫びだしそうになるが、懸命にこらえる。


「痛ってぇなぁっ!!!」


代わりに渾身の殺意を込めて、腕に食らいつく獣の腹を目がけて剣を突き立てた。


獣はドサリと鈍い音を立てて、その場に倒れ込む。


腕の噛みつかれた激痛からは解放されたが、代わりに尋常ではないほどの血が流れ出てくる。


幸いにも腕を食いちぎられることはなかったが、この出血だ…早く止血しないと長くは保たないだろう。


だから一刻も早く…残り3匹を仕留めなくては。


意識が朦朧としながらも、俺は残った右手で剣を強く握りしめた。



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