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第5話〜目覚めの時と覚悟の一撃〜


右腕から血を垂れ流しながら、ナイフを左腕に持ち替えて、俺を鋭い目で見つめる女。


「輝核の具象化ができる人間がこんなところにいるとは思わなかったよ。でも…だったらなおさらきっちり殺しておかないとね」


彼女はそう言ってナイフをこちらに向けながら、怪しく微笑んでみせた。

だがそんな態度を見せつつも、先ほどまでの余裕は消え、明らかに俺を警戒しているように見える。


「さっきから、わけわかんねぇことばっかり言ってんじゃねぇよ」


剣を構えながら、彼女を見据え攻め込む機会を伺う。


利き手と思われる右手を潰せたのは大きいが、まだ奴は俺を殺すことを少しも諦めてはいない。


だったら向こうが攻め込んでくる前に仕掛けてやる。

俺は剣を向けたまま彼女へと走り出し、間合いを詰めに行く。


ナイフで懐に入られたら、今度こそ心臓でもなんでも貫かれて終わりだ。


だからナイフの間合いに入る前に、この剣でアイツを…


「やる気満々じゃん♪でもさぁ…そんなスピードじゃ私についてこれないよっ!!」


女は一瞬姿勢を低くして次の瞬間、一気にこちらに向けて駆け出してくる。


あっという間に俺のすぐ近くまで入り込もうとする。


「クソっ…!!」


寸前のところで、目の前の女に向かって剣を振り抜くと女はそれを飛び退いてあっさりと躱す。


「あははっ、そんな大ぶりで当たるわけないでしょ!」


「クソっ!これなら…っ!!」


その後も何度も剣を振るうが、女はまるで遊んでいるかのように、俺の剣をやすやすと回避してみせた。


「なんだかなぁ…せっかく具象化を使える純粋種を殺せる機会なのにこんな弱っちいんじゃ、萎えちゃうよ」


「舐めやがって!」


がむしゃらに剣を振るってみるが、当たる気配すらない。

まだ俺が剣の扱いに慣れていないこともあるだろうが、それ以上この女が早すぎるのだ。


さっきは不意打ちだったからなんとかダメージを与えることができたが、真っ向から戦ったらまず掠りもしない。


なら、どうにかしてさっきのように奴の不意をつければ…


「ほらほら、ぼーっとしてたら死んじゃうよ!」


打開策を見つけるために思考を巡らせていたところに、ナイフが迫る。


「くっ…!」


なんとか胸に突き刺さる直言に剣でそれを受け止め、そのまま相手を弾き飛ばす。


大丈夫だ、こっちだって、かろうじてではあるが動きを追えている。


しっかり間合いを確保しながら戦えば直撃は避けられるはず。


だが、このままじゃジリ貧なのは確かだろう。

相手は小型のナイフで、体力消費も少ない上に戦闘経験もかなり豊富と見える。


一方で俺の武器は大振りの両手剣一本、振り回すのにもかなり体力が削られる。


相手からしてみれば、俺が疲れきって動きが鈍くなったところで留めを刺すことだって容易だろう。


俺が出来ることは…そうなる前にこの女を仕留めきることだけ。


「あぁ、クソっ!どんだけ理不尽だよ…!」


あまりの不条理に毒づいてみるが、それでは何も変わらない。

落ち着け。何かないのか…アイツを出し抜いて一撃を食らわせる方法が…


それこそさっきの宝石から剣へと形を変化させた際の奇襲のような…


いや、待てよ。

考えてみれば俺はさっきどうやってこの宝石を剣に変化させたんだ…?


そもそもこの宝石っていったい…


ふと、ここに来る前に俺にこの宝石を渡した時の、女神様の言葉が頭をよぎる。


〜そしてこれは…魔法を持たないあなたがあの世界で生きていくための必須アイテムです〜


そうだ、女神様は俺がこの世界で生き抜くためにこれをくれたんだ。


魔法を使う人間の中で生き抜くために。

目の前にいるこんなイカれた殺人鬼から身を守るために。


そうだ、だから使いこなせ。


この宝石の力を…


目を閉じて剣に意識を向ける。


伝わってくるのは確かな鉄の感触。だがそれだけじゃない。

この剣から溢れ出ている不思議なオーラのようななにか。


前の世界では見たこともないし、今だって目に見えているわけじゃない。

でも確かにそこにあると確信が持てる、そんな奇妙な気配…。



そうか…これが…魔法なのか。


魔法、その存在を知覚したまさにその時だった。


まるで、穏やかな水面に一滴の雫が落とされたように…

曇りがかった空から太陽とともに青空が現れたかのように…


俺の世界のイメージが一気に広がった。


そうだ、この剣は魔法の産物。

剣という形を一時的に保っているに過ぎない。

なら…


勝利の確信を掴み、目の前の女を見据える。


彼女は俺の雰囲気が突然変わったことに気がついたらしく…ナイフを構え直して一歩後ずさった。


「気配が変わった…?これはさっさと仕留めないとヤバいかもね…だったら…!!」


女はさっきよりもさらに速いスピードで俺の背後を取ろうとする。


もはや目では追えないほどの速さだ。

でも、目に頼る必要はない。


彼女から溢れ出る禍々しい殺意のこもった魔力。

それを知覚してやれば…自ずと狙いは分かる。


「ここだっ!!!」


女が腕を突き出すと、ナイフが的確に俺の頭に向かって放たれる。

だが…これはもう読んでいる。


「捕まえたぜ」


ナイフが俺に当たるよりも早く、女の腕を掴んでその動きをとめる。


「なっ…えっ…なんで…」


「終わりだ」


剣を天高くかざし、そのまま振り下ろす。

次の瞬間、女の体から鮮血が吹き出しそのまま彼女は動かなくなった。



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