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第33話〜死地からの一撃〜


眼前に再び血飛沫が舞い、後から続いて鋭い痛みが走る。

その痛みが斬られたという事実を克明に刻み込んでくる。


「ぐぅっっ…!!」


思わずその場に倒れ込んでしまいそうになるが、気合だけでなんとか態勢を立て直し、剣を振るってオウルアイを遠ざける。


「見たところ、さっきの薬はもうないようだな。その出血…もう決着はついたな」


オウルアイは俺の状態を確認し、淡々と告げてくる。


「まだ…終わりじゃねぇよ…」


だが、俺はそれでも剣を強く握って彼に向ける。


「まだ続けるつもりか?このまま続ければ死にかねんぞ」


「…んなこと、言われなくてもわかってるよ」


「そうか、ならば…」


これはアイリスさんに救われた命だ。

簡単に無駄にするわけにはいかない。


それでも、今ここであいつに何もできずに負けてしまってはオレはもう二度と騎士にはなれないような気がする。


また次回のチャンスがあるなら、その時にチャレンジすればいい。


理屈の上ではそうだとしても、なぜだか本能が強く告げるのだ。


だから…


「それでも、まだ終われない」


そっと傷口に手を当てる。


「止血でもするつもりか?だが、片手で傷口を押さえながらでは満足に剣も振れんだろう」


煽るように笑ってくるオウルアイ。

だが、彼の言葉を無視して俺は集中力を高めていく。


俺の持っている光の魔法、その本質がまさに光そのものだとすれば…


手を翳し、光を傷口に集めていく。

するとすぐに鋭い痛みと共に、傷口から煙が生じる。


「がぁ…ぁ…っ」


痛みとともに鼻につきはじめる、肉が焼けるような香り。

それが自身の身体から発せられていることに吐きそうになるが、全て無視してその行為を続ける。


「お前、いったい何をしている…?」


俺がやろうとしていることが理解できていないらしく、ただその異様さから警戒を強めそう問いかけてくるオウルアイ。


だがあいにく、その声に反応できるほどの余裕は俺にはない。


ただ、歯を食いしばり身体に光を集め続ける。

光が作り出す熱気で手元が歪んで見える。


そして…


「はぁ…はぁ…止まった…っ」


傷口を確認すると、あれだけ開き絶えず血が流れ出ていた切断面が塞がり、出血が止まっていた。


いや、厳密に言えば塞がったというよりは接合されたというべきだろうか。


「…なんだそれは、いったいどんな魔法を使った?」


再び問いかけてくるオウルアイ。


俺は未だに残る肌の焼ける痛みを堪えながら、ニヤリと笑って答える。


「光を一箇所に集めてその熱で傷口付近の皮膚を焼き固めたんだよ。応急処置にしかならないが、これでもう少しだけ戦える」


「よく分からんが、つまり貴様は魔法を自身の身体に当てて傷口を無理やり塞いだと?」


「あぁ、そういうことだ」


「たかが入団試験の決闘ごときでそこまでするとは…世の中には随分と狂った人間がいるようだな」


「なんだそれ…褒め言葉かよ?」


「あぁ、そうだ。貴様の評価を改めてやろう。その覚悟に敬意を示し、次の一撃で確実に沈めてやる」


2本の剣を構えたオウルアイが、こちらに歩み寄る。

ゆっくりとした動きだが、少しの隙も見つけられない。


このまま向こうのペースで間合いを詰められれば勝機はない。

なら、やることは1つ…


「どうせ逃げられないなら、こっちから行ってやるよ!」


一気に駆け出し、オウルアイとの距離を詰める。


「馬鹿が。策もなしに突っ込んで俺が捉えられるはずがないだろう」


こちらの想定外の特効すら、全く動揺ぜずに自身のペースで歩みを止めないオウルアイ。


分かってはいたがコイツ相手に真っ向勝負はあまりに無謀だ。

まして一撃を加えたいのなら、奴の想像を超えた方法で虚を突くしかない。


そして…


俺はその方法を1つだけ思いついていた。


奴との距離が近づいた瞬間、俺は魔法を一気に解放させ眩い光を剣から放つ。


その光自体には何の攻撃性能も備わっていない。

だが、急に発せられた眩い光にオウルアイは思わず目を背ける。


光魔法による目眩まし…これによりオウルアイはほんの一瞬だけ俺を見失った。


その一瞬の隙を突き、俺は背後に回り込む。


そして同時に僅かに残ったありったけの魔力を剣にこめ渾身の一撃を奴に向けて振り下ろす。


「この期に及んで用意した策が目眩ましとは、騎士を目指すものが聞いて呆れるな!」


「なっ…!」


一瞬とはいえ完全に俺を見失っていたはずなのに、オウルアイは俺が剣を振り切るよりも早くこちらを捉える。


そして…


「これで終わりだ!凡人!!」


オウルアイは2本の剣をクロスさせ俺の胸を切り裂くように振るう。

こちらの奇襲を上回る速度で放たれた神速の攻撃…完璧に攻撃が通ったと彼は確信したことだろう。


「この瞬間を待ってたぜ」


彼が放った攻撃は、確かに正確に俺が見えていた場所を切り裂いた。

だが、彼が捉えていた俺の姿は攻撃が命中した瞬間にまるで虚像のようにゆらゆらと揺らめいて形を崩す。 


「な、に…?」


オウルアイの攻撃が虚空を切り裂くと同時に彼の瞳が光を纏った俺の剣を捉える。


「喰らえ」


その一撃は今度こそ完璧にオウルアイを捉え、奴を決闘場の端まで吹き飛ばした。



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