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第30話〜神速の刃〜


赤と緑の輝きを放つ2本の剣、オウルアイはそれをゆっくりと俺に向ける。

剣が放つ圧倒的なオーラに思わず息を呑む。


「安心しろ、禁止されてる以上殺しはしない」


「そりゃどうも…」


何とかこちらも構えるが、完全にあちらの気迫に飲まれつつある。

まだ一度も剣を交えていないというのに、ここまで格の違いを見せつけられるとは…


「行くぞ…」


オウルアイがそう呟いた瞬間、完全に視界から消える。


「くっ…!」


とてもじゃないが目で追える速さではない。

高速移動なのか、それともワープでも使っているのか…

それすら判断がつかないが、次に現れる時はこちらに攻撃を仕掛けるタイミングだろう。


だとすれば、奴が攻撃してくる場所さえ予測がつけば…


どこを狙ってくる…?

もし俺がアイツの立場なら…


「終わりだ」


そんな声が聞こえた瞬間、喉元に向けて炎の一閃が走る。

その一撃は正確に俺の首を切り裂く…かに思われたが…


「やっぱりな…!!」


攻撃は俺の剣によって防がれ、首に届くことはなかった。

その一撃を防がれたオウルアイは少しだけ目を見開いたような顔をしたが、すぐに冷静さを取り戻し後ろに飛び退いて距離を取る。


「なんだ、完全に俺を見失っていたようだったが、見えていたのか」   


「…あいにく目はいいもんでね」


…などと言ってはみたが、実際は何も見えていない。

ではなぜ、今の攻撃を防げたのか。

答えは簡単、不意打ちを仕掛ける時に俺が狙う場所と真逆の位置に攻撃が来るとヤマを張って剣を持ってきただけだ。


あの瞬間、もし俺が仕掛ける立場だったなら間違いなく相手の背中に向けて斬りつけただろう。

なぜなら万が一反応されても、一番防御しづらい場所だから。


その分ダメージも少し減るだろうが、相手の虚を突ける攻撃が可能なのだから、じわじわ相手を削っていって消耗させたあとで、最後に正面から斬り捨てればいいのだから。


だが奴は正面から攻撃を仕掛けてきた。


それは騎士を目指す身であるがゆえに正々堂々戦いたいというフェアプレー精神なのか、小細工など使わずとも正面から一撃をいれるだけで試合を決することができるという自信の表れか。


それは分からないが、なんにせよ彼は俺の予想通りまっすぐに攻撃を打ち出してきたわけで、それゆえに俺はそれに反応し、あの閃光のような一撃を防ぐことができたのである。


「そうか。ならこれも対応してみろ」


オウルアイがそう言った瞬間、再び視界から消える。


「くっ…!」


先ほどの通り、俺は見えないながらも剣を構えて予測で一撃を防ぐ。だが…


「おい、見えているんじゃなかったのか?」


炎の剣による一撃を剣で受けた瞬間、こちらの剣が熱を帯び、焼けるような熱さで手を焦がす。


「ぐぅっ…!!」


何とか剣を落とすことはなかったが、完全に意識が削がれた俺に向けて風の刃が振り下ろされる。


気がついた時にはその一撃が、俺の肩から腹にかけてを引き裂き、血飛沫が舞っていた。


痛みと出血で膝から崩れ落ちそうになるが、眼前に再び迫りくる炎の剣が目に入り、俺はなんとか横に飛び退く形でそれを回避する。


「その出血でまだ動けるか。根性は認めてやらんこともないが、そのままだと失血死するぞ」


冷たく言い放つオウルアイ。しかし彼の言う通り段々と意識がはっきりしなくなってきている。


止血しないとやばい。だがそんな時間を目の前の男が与えてくれるはずもない。


だとすれば俺に残された道はもう降参するしかないということか。


一太刀浴びせるどころか、たった数十秒の戦闘だけでここまで追い込まれた。

その事実によってとてつもない無力感に襲われる。


だが、幼い頃から騎士としての英才教育を受けたエリートと、戦いとは無縁の世界で生きてきた俺とでは経験値もスキルも気迫さえも、あまりにも違いすぎるのだ。


だからこれは致し方のないこと。

むしろよく戦ったと誇ってもいいくらいだ。


そう自分に言い訳をつけて、降参のために両手を挙げようとする。


だがその刹那…


胸のどこからか急に温かい光が輝きを帯び、優しく俺を包み込んだ。


その感覚には覚えがある。

それはちょうどリリーが俺に回復の魔法をかけてくれた時に感じたもの。


俺の傷を癒してくれたあの光だった。 


「何が起きてるんだ…?」


驚きながら光の元に手をやると、そこにはリリーがくれた回復薬が入っており、それが強い光を宿しながら俺の傷を治癒していたのである。


僅か数秒の間の出来事、だが回復薬によって流れ出ていた血は止まり、傷も綺麗に塞がっていた。


「回復薬か、そんなものを持ち込んでいたとはな」


オウルアイが忌々しげにこちらを睨見つける。

先ほどよりもさらに気迫を増した殺気…最初に当てられていたら俺はきっと一歩も動けずにやられていただろう。


だが今は不思議と焦りも恐怖心もなくなっていた。


「ありがとなリリー。おかげでもう少しだけ戦えそうだ」


俺は観客席で心配そうな顔でこちらを見つめる友人に、ポツリと感謝を告げると、再び剣を握りしめてオウルアイに向き直った。


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