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第29話〜風と炎の剣〜


第1試合終了、勝利したのは自らの腕を囮に強烈な一撃を叩き込んだ斧使いのアスターだった。


二人の戦いを見て、俺は率直な感想を漏らす。


「肉を切らせて骨を断つ…か。騎士ってもっとスタイリッシュに戦うのかと思ってたが、結構泥臭いのな」


俺の言葉を聞いていたアルカシアはまた呆れたように答える。


「それはあのお二人のレベルが低いだけですよ。勝った方の斧使いも、騎士見習い一人倒すのにあそこまで傷だらけになる辺り、本当に程度が知れますわ」


つまらないものを見るかのように、勝者であるアスターを見下ろすアルカシア。

どうやら彼女は本心からそう思っているらしい。


俺からして2人ともかなりの強者に見えたが、幼少期からしっかりと戦闘訓練を積んできたであろう貴族からしてみれば、その程度の評価になるわけか。


「はは、俺の対戦相手がお前じゃなくてよかったよ」


「何言ってるんですか、あなたの相手は私よりもさらに格上でしょうに」


「………あ」


そうだった。俺が対戦するのは今回の受験者で最強とか言われている男だった。

アルカシアの言葉で一気に現実に引き戻されたところに、さらに追い打ちをかけるように試験監督が告げる。


「これより第2試合を始める。オウルアイ・ストリクス、ハルキ・イチジョウ、決闘場まで来い!」


「ふふ。噂をすれば、ですね。少しの間でしたが楽しかったですよ」


あまりにもタイミングよく俺の名前が呼ばれたことでクスリと笑いながら、俺に別れを告げるアルカシア。


彼女からすれば、俺がここで負けることは分かりきっているのだろう。


「何言ってるんですか?これから同僚になるんですから、まだたくさん話す機会ならありますよ。ね、ハルキ?」


横からアルカシアの言葉を否定したのはリリーだった。

彼女は俺の敗北など1ミリも考えていないかのような満面の笑顔をこちらに向ける。


「あのなぁ、だから俺とアイツじゃ流石に差がありすぎ…」


「それでも信じてますから、ハルキのこと」


そう言ってまた弾ける笑顔を向けるリリー。

彼女のような美少女に信頼されて送り出される。


並の男ならやる気を出さずにはいられないシチュエーションなのだろう。


だが、俺からしてみれば重荷にしか感じないわけで…


「…」


「なんですか、その嫌そうな顔…」


思わず辟易とした気持ちが顔に出てしまい、リリーに突っ込みを食らった。


「ま、とりあえずやれるだけやってくるよ」


そう言って彼女たちに背を向けて歩き出す。

開始数秒でボロ負けしたら、リリーにドヤされるだろうなぁ。


そんな事を考えて気が重くなりながらも観客席を降り、フィールドに向かう。


見れば既にオウルアイは決闘場にいて、目を伏せながらこちらを待っているようだった。


「すみませんね、貴族を待たせちゃって」


オウルアイと試験監督が待機する場所に辿り着き、申し訳程度に謝罪をするが、彼は何も答えなかった。


やはりさすがは貴族様、ここまで来ても俺と会話はしたくないということか。


「両者、武器を構えろ」


試験監督に言われ、俺は剣を呼び出しオウルアイを見据える。


彼もまた落ち着いた所作で武器を呼び出したのだが…


「双剣…?」


彼が呼び出したのは2振りの短剣だった。

それを交差させるようにこちらに向けて構える。


その瞬間から溢れ出る凄まじい覇気。殺傷行為を禁止されてるとはいえ、それでも殺されるのではないかと恐怖心を覚えるほどだ。


きっと数日前までの俺なら、戦う前に即降参していたところだろう。


だが、奇しくも数日前に本当に俺を殺そうとしていた獣…ホーングリズリーとの戦闘を経たことで、少しだけ殺気に耐性ができており、俺はオウルアイの覇気に当てられても戦う意志を失わずに済んでいた。


「よし、両者ともに準備ができたな。では…始めろ」


「………!?」


試験監督の開始の合図…

それと同時に俺はとてつもない悪寒に襲われ、直感的に後ろに飛び退く。


直後、俺が構えていた場所に向かって巨大な落雷が落ちて地面を抉り取っていた。


開始直後に起こった現象に理解が追いつかず、俺が目を見開きながらさっきまでいた場所を見つめていると、ようやくオウルアイが口を開く。


「ほう、今の攻撃を避けるとは。ただの雑魚ってわけじゃないようだな」


「そりゃどうも…」


評価をもらった手前言出だしづらいところだが、避けられたのだって攻撃が来るとわかっていたわけではなく、直感によるものだ。

それがなければ今頃あの雷に撃たれて地面に伏していただろうと思うと恐ろしい。


だが、そんな事を知る由もないオウルアイはこちらに剣を向けながら絶望的な宣言をする。


「今のを避けた貴様に敬意を払い、少し本気を出してやる」


そう言って奴は手に持った剣に魔力を込める。


すると…


両手の剣それぞれが赤と緑の輝きを帯び、右の剣は燃え盛る炎を、左の剣は逆巻く風を纏った姿に変化したのだった。





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