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第28話〜騎士を目指すもの達〜


決闘場の中心で向かい合う2人の男女。

その2人を一瞥した後に、試験監督者が口を開く。


「それでは第1試合を開始する、フィオナ・ドレイクス、アスター・ハーケン、両者とも準備はいいな?」


試験監督に名前を呼ばれた2人が無言で頷くと、それを確認した試験監督が宣言する。


「それでは試合開始!」


開始の合図とともに、両者は距離を取りお互いの武器を呼び出す。

フィオナと呼ばれた少女は彼女の背丈よりも長い槍を、アスターと呼ばれた少年は大きな斧を呼び出した。


「へぇ、騎士の扱う武器だからてっきりみんな剣を使うのかと思ってたが、使う武器は結構まちまちなんだな」


俺の言葉にアルカシアは驚いたような顔でこちらを見る。


「それはそうでしょう、輝核が具象化する武器はその人が最も戦いやすいものになる性質があるのですから…」


解説しながらも、そんなことも知らないのかとでも言わんばかりにこちらを訝しんだ目で見てくるアルカシア。


輝核、といえばこの世界の人間が魔法を使うために無くてはならない身体の一部だとアイリスさんが教えてくれた。

そして騎士はその輝核が持つ魔力の一部を武器に変換して戦うのだと。


だから武器自体がその人間の個性や得意な戦闘レンジで変わることについては特に違和感もないが、

アルカシアの言い方的にはその武器への変化は、輝核側で最適な武器を選んで供給しているようだ。


まさかそこまで便利な機能を持っているとは…。

知れば知るほどに、輝核という機能が俺に備わっていないことに落胆するばかりである。


「悪いな、その辺の常識に疎いもんでさ」


輝核に対して微妙な妬ましさを覚えながらも、アルカシアの言葉に返事をすると、彼女は呆れたように小さくため息をついた。


「疎い、といっても限度があるような気がしますけれど…二次はともかく、よく一次試験がパスできましたわね…」


「あはは、運がよかったもんでね…」


これは痛いところを突かれた。

確かに一次試験の内容はこの世界の常識や、魔法についての問題が多く、輝核に関しても基礎知識だけでなく応用を知らなければ解けない問題ばかりだったように見える。


だからこそ、俺はヤマカンに頼って試験を通過したのだが、それを正直に話すわけにもいかず、曖昧な態度で誤魔化しを図る。


これ以上追求されたらどうしようかと悩んでいたが、ちょうどよいタイミングで、フィオナとアスターの打ち合いが始まり、俺達の意識は自然にそちらにむいた。


槍と斧がぶつかり合い、金属音が決闘場に反響する。

しかし直接的な押し合いでは、斧を持った男であるアスターに分があるようでフィオナが若干押され気味だった。


「このまま押しつぶしてやるっ!」


アスターは両手に力をこめ、フィオナのもつ槍ごと彼女をその場に叩き伏せようとしているが、フィオナもまだ余裕そうな顔をしている。


「ふふ、そんな単調な動きで私を倒せると思うなんて滑稽ね」


相手に皮肉を飛ばしながら、フィオナは一瞬だけ斧を受け止めている槍に込めた力を緩める。


「なっ…!?」


不意の行動にアスターは一瞬体勢を崩され、重心が前のめりになってしまう。


その一瞬を見逃さずにフィオナは身体を反転させ、アスターの背後に回り込む。


さすがは槍使い。身のこなしが実に素早く、アスターはあっという間に背後を取られる。


「これで終わりっ!」


そのままフィオナはアスターの右腕に向かって槍を突き立てる。

その一撃は正確に彼の腕を貫き、決闘場に血飛沫が待った。


「くっ…!!」


腕に一撃を受けたアスターは後ろに飛び退き、フィオナとの距離を取り、腕を押さえる。

その様子にフィオナは満足そうに笑みを浮かべる。


「筋肉質だったから思ったより浅く入ったけど、その傷じゃもう両手で斧は握れないわよね」


なるほど、彼女の狙いはアスターからパワーを削ぎ落とすことだったらしい。


その目論見通り、アスターは憎々しげな顔をしながら斧を左手一本に持ち替える。


攻撃の挙動をみる限り彼の利き手は右のようだし、利き手を潰されたとあってはかなりのハンデになるだろう。


だがアスターの目からは闘志が消えてはいなかった。


「ふん、たかが腕一本潰したくらいでいい気になるなよ。お前など左腕だけで充分だ」


「ふん、よく言うわね。じゃあこれで決着をつけてあげるわ!」


フィオナは槍を構え直し、超加速で一気にアスターに詰め寄る。


アスターも斧を構えるが、フィオナが接近したのは彼の右半身側。

斧を左手でしか構えられないアスターにとって、そちらは攻撃に大きな隙が生じる明確なウィークポイントだった。


それを見越したように、フィオナは一気に勝負をかける。


「これで終わり!!」


左肩に向けて放つ強烈な一突き…鈍い音とともに鮮血が飛び散る。


さすがに左肩まで潰されたとあってはもう勝負にならないだろう。そう思っていたのだが…


「捕まえたぞ」


「え、嘘でしょ…!?」


勝利を確信していた瞬間に起きた予想外の出来事に、焦りを隠せない様子のフィオナ。


なぜなら彼はフィオナの一撃を防ぎ、まさに今、左腕で斧を振りかざそうとしていたからである。


フィオナの一撃は確かにアスターを貫いた。

だが飛び散った血は、アスターの右腕に槍が突き刺さったことで流れたものだった。


そう、彼は使えなくなった右腕を盾にして槍を受け止めたのである。腕を貫通しながらもがっちりと槍を掴んで離さない彼の右腕。


その様子に彼女は慌てて槍を手放して飛び退こうとするが…


「ふん、もう遅い」


その判断をした時には既に彼女に向かって斧が振りかざされていた。


そして、斧は彼女の肩から腰にかけてバッサリと切り裂き、彼女は血を流してその場に倒れ込む。


その場で動かなくなった彼女の様子を確認し、監督官は告げた。


「勝負あり、勝者アスター・ハーケン。救護班、彼女をすぐに医務室へ!」


救護班によって大慌てで医務室に運ばれていくフィオナ。

そんな衝撃的な光景を前に、第1試合は幕を閉じたのだった。



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